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クリッカーの転職物語  作者: タヌキ汁
第三章 強者へと至るその代価
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船を作りたい


 船を作るのに必要な材料。

 それは大量の木と蔦だ。

 大きな大木を一列に並べ、それがばらけないように太い蔦でぐるぐる巻きにする。

 それで船ができあがるのだ。


「むん! 藻屑丸の完成だ!」


 できあがったのは木の長さや太さも気にせずに蔦で無理やり縛りあげたイカダ船。

 今にもバラバラになりそうな船(笑)ができあがった。

 名前からして結果が見えている。


「むふ~!」


 出来栄えは最悪としか言えないが、初めて作った船。

 シオウだけの、シオウ専用の船だ。

 それだけでそのボロ船はシオウにとってとても輝いて見えていた。


「よし! 出発出航―!」


 そして意気揚々と藻屑丸を海に運びその船に飛び乗った。


「ふぎゃーーっ!? がぼがぼがぼがぼっ!?」


 そして少し進んだ後、藻屑丸は波の衝撃に耐えかねてバラバラになるとシオウは藻屑丸と共に海へと沈むのだった。






「へぇ、へぇ、へぇ・・・あ、あぶなかった」

『・・・・はぁ』


 息も絶え絶えになりながら海から上がるシオウ。

 ちゃんと泳ぎの練習をしていてよかったと思う今日この頃である。


「ちょっと失敗しちゃった・・・けど次こそ大丈夫だもんね! 多分木の数と蔦の数が足りなかっただけだもんね! もっとグルグル巻きで! もっと大きなお船にすれば沈まないもんね!」


 そして大きければ大丈夫と言う意味のわからない結論に行きついたシオウは、先程の倍以上の材料を集め出した。

 その結果、巨大なボロ船ができあがり


「そりゃ!・・・・・・・おぉう」


 海にその巨大なボロ船を放り投げると、乗る前にバラバラにばらけてしまうのだった。


「ま、まだまだ!」


 それでもシオウは諦めず、何隻も何隻作り続けた。

 ああ勿論海に放り投げた丸太を回収して再利用もしています。






『満足した?』

「ず~~~~ん」


 頃合いを見て問いかけるお姉さん。

 どうやらシオウが納得するまでやらせなければこちらの話を聞かないと思って放置していたようだ。


『ねぇシオウ。お船って作るの大変でしょ?』

「うん・・・お船って作るの難しいだね。もっと簡単だと思ってた」

『そうね。ただ木を繋ぎ合わせてできるモノじゃないわ。だから船作りは諦めて街に行きましょ? そこでお金稼いでちゃんとした船に乗りましょ?』

「・・・・・・・・・・・・・・」


 そう優しく諭すように説得するお姉さんだが、シオウは返事をしない。

 ただ口をへの字にするだけである。


 確かに船を作るのはとても難しいことは理解した。

 理解したが、それでも自分だけの船が欲しい。

 だって船があれば今目の前に広がる広大な海を自由に進むことができるのだ。

 なんかそれってとってもカッコイイじゃん。

 そう思ってしまっているのだ。


「・・・・・・・・・・・・・」

『シオウ? ほら、街に行きましょうよ。海沿いを歩いていけばそのうち街は見つかるだろうから』

「・・・・・・・・・・・ぷい」


 決して船を作っている時に変な映像が流れて、流れた映像を見てそれに憧れを抱いたとかそう言うのではない。

 手とか足とか伸びるびっくり人間が仲間と共に大冒険しているのを羨ましいとか思ってない。

 思ってないけど、お金を稼ぐなら財宝を見つければいいじゃんと考えているだけだ。

 そのために自分だけの船が欲しいだけだ・・・うん、それだけだ。


『もう~、シ~オ~ウ~』

「・・・・・・・・・・」

『・・・・・・・・・・はぁ』


 絶対ヤダと言わんばかりに首を明後日の方へと向けながら、無言を貫く。

 その態度にお姉さんは呆れたようにため息を吐き


『・・・・・・・わかったわ。ちょっと危ないけど海を渡る手段を教えてあげる』

「う!? ホントッ!?」


 結局シオウのやりたいことを止められず、手を貸すこととなった。


『ただし条件があります! この条件をちゃんと飲まない限り教えませんし、約束を守らなかった今後一切お話しませんからね!』

「うぃ! 約束は守るの得意! 飲み込むのも得意! じょうけんてのもちゃんと飲むよ! お薬みたいに苦くてもちゃんと飲めるよ!!」

『・・・・・・まあいいわ』


 絶対こちらの言葉が正確に伝わっていないと思いつつも、無駄話をしていても仕方がないと思い、お姉さんは一人でも作れるとっても大変な船の作り方と、条件を伝えるのだった。




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