新たなお仕事
兵士に追い返されてから数日。
シオウは不貞腐れながらもいつものようにゴミ捨て場で食料を探しては、人攫いなどに襲われないように隠れながら新たな住み家を探していた。
だが、やはり貧民区以外で良さそうな住み家は無い。
良さそうだと思った場所も既に先客がいたり、兵士達の巡回ルートだったりして一向に新しい住み家を見つけられない状況であった。
そんな日々を送りながら、シオウは不満を解消するようにスライムをつつく。
何も進展しない日々であり、無駄に時間だけが進んでいく。
暇な時間はスライム達をつついているのでクリッカーのレベルだけは上がっていき、今ではステージ8にまでレベルアップしていた。
レベルが上がるほどに、内包する力が8歳児とは思えないほど上昇しているのだが、
「ぶ~、つん、ぶ~、つん、ぶ~、つん、ぶ~、つんつくつん」
力を試す機会など早々訪れないので、本人が気が付くはずもない。
それにシオウからしたら暇な時間、ひたすらスライムをつついて遊んでいるだけなので、それだけで己の身体能力が強化されているなど夢にも思わないだろう。
「つんつんつんつんつんつくつん」
『ステージクリア! ステージ9に上がります! くわえて貴方の全てが上昇します! 』
「つんつんつんつん・・・・・やめた」
ステージクリアしたおかげでまたスライムが一匹増えたが、シオウはいつものようにはしゃぐことは無く、スライム達をつつくのを止め小穴から這い出る。
「これから・・どうしよう」
ママとパパがいないとダンジョンに入れない。
そのことがわかり落ち込むシオウだが、半分は魔物と戦わなくてすんだことで安堵もしていた。
ただ、ダンジョンに入れないことで美味しいご飯が食べられない事への喪失感も覚えている。
「ママとパパかぁ・・・・・ぐすん」
両親を思い出すと、思わず目から涙がこぼれ落ちそうになり、グシグシと零れそうな涙を腕で拭う。
「いいもん! ママもパパもいないけど! ぼくは強い子だもん! ダンジョン行けなくてもお腹いっぱい食べられるようになってやるもん!」
別にダンジョンで魔物を倒さなくても美味しいご飯を食べる方法はいくらでもあるはずだ。
そう結論付けたシオウはパンパンと景気よく頬を叩く・・・ことはせず、痛くないようにペチペチと頬を優しく叩きながらやる気を出す。
そして、今日のご飯を探すために立ち上がり、ゴミ捨て場へと駆けてだした・・駈け出したのだが、
「うあ?」
途中で貧民区の男達が数人集まっているのを見つけ、慌てて身を隠した。
「おい、これなんて書いてあんだ?」
「俺が読める訳ねぇだろ。だが、ここに50シルバーとか100,000シルバーとか10,000,000シルバーとか書かれているのはわかるぜ。なんかの報奨金か?」
「人探しとかか? まっ、関わらねぇのが一番だな」
「だが、10,000,000シルバーも貰えるなら割のいい話だな。おい誰か読める奴はいねぇのかよ!」
「そんな親切なバカがここにいる訳ねぇだろ。いいから行こうぜ」
男達は立てかけられている立て札の内容がわからず興味が失せ、そのまま離れていった。
そして、男達がいなくなるとシオウは恐る恐ると言った感じで、周りを探りながら立て札に視線を向けた。
「一枚50シルバー・・・・本一冊書き上げれば100,000シルバー・・・・魔導書を書き上げれば1,000,000シルバー・・文字を書けばいいの?」
そこには文字を読み書きする写本のお仕事依頼が書かれていた。
年齢や身分などの指定は無く、文字の読み書きができれば採用と書かれていた。
「・・・お金あればご飯いっぱい食べられる?」
いつもミラさんのお店で食べさせてもらっていたカチカチでぼさぼさのパンは50シルバー。
そして、普通の美味しいパンが一つ200シルバーする。
頑張れば、美味しいパンが買える。
この話が本当であるならば、たった4枚分の文字を書くだけで今まで食べたことない柔らかくて美味しいパンが一つ買える計算になる。
貧民区に住む者にとっては夢のような仕事である。
ただ、うまい話には裏があるもので、シオウは亡き両親から仕事選びは慎重にしなければならないことを教え込まれていた。
「・・・・・・アウルーズ魔法書店」
一応場所は魔法ギルドの隣と表記されているので、なんとなく場所はわかる。
「う~ん・・・ん?・・・!?」
行ってみようかどうしようかと考えていると、また知らない大人達が近づいてくるのに気付き、シオウはその場から逃げ出した。
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