表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/26

新居と姫ちゃんがおこな話

姫王子士郎は学校の正門前にいた。

時刻は23:00を回ろうかという深夜帯だ。

辺りは静寂に包まれており、勿論学校もその例に漏れない。


しかし、その学校のひとつの窓が煌々と光を放っている。

誰かいるようだ。

士郎は視線を上げてその明かりを確認すると、ずかずかと正面入り口まで向かいそのまま扉を開いた。

不思議と鍵はかかっておらず、ぎぎぃと金属部分の錆が擦れる音がロビーに響く。

そして土足のまま目的の教室を目指す。


2階。東棟。一番奥の教室。

『化学準備室』に。


ガラリと引き戸を開けると中には中学生ほどに見えるぶかぶかの白衣を着た少女が丸フラスコで何かを飲んでいた。

七色に混濁し淡い光を放つソレは見て士郎はわずかに眉を潜める。


「あなたですね。真藤織先生」


「ん〜? お客様かね? こんな遅い時間に少女の部屋を訪ねるなんて実に非常織だぜ?」


「惚けるないでくださいッ! あなたはユウに、灰崎佑哉に何をしたんだッ!」


「灰崎佑哉……? ああ、試作5号被検体のことか。ふんふん、まあ何かはしたのは確かだが、それを見ず知らずの君にどうして説明しなくちゃいけないのだね?」


強い言葉をぶつけられても態度は変わらず、飄々とした態度で依然何かを飲んでいる真藤。

そんな態度の真藤を見て士郎は僅かにたじろぐ。


「見ず知らずって。まさか……覚えていないんですか僕のことを」


「生憎人の顔を覚えるのは苦手でね。十把一絡げなイケメン顔など雑誌やTVと混じって特に覚えられないよ。我輩の弱点のひとつだね?」


「ッ! ちょっと待っててください!」


そう言って士郎は乱暴に引き戸を開けて出ていくが、きちんと閉めるあたり彼の育ちの良さが伺える。

一人残された真藤は手元の丸フラスコを煽るとうえっと舌を出した。


「成分は申し分ないけどやっぱり味は要改良だよね〜。これを一生飲み続けると考えると鬱になりそうだぜ」


丸フラスコを化学室特有のやけに勢いの良い水道で洗っていると引き戸ががらりと開かれる。

そこに立っていたのは白尾姫であった。


「やあ、試作4号被検体じゃないか。確か、白尾姫ちゃんだったかな?」


姫はため息をつきながら額に手をやってやれやれと頭を振る。


「流石にこちらは覚えていますか……。で、ユウくんを何処にやったんです?」


「ん? ん〜? ああ! さっきのイケメンは君の元になった少年か! いやいや、忘れていてすまないね。人の顔を覚えられないのは我輩の弱点のひとつでね」


「それはさっき聞きました。さっさと私の質問に答えていただけますか」


「刺々しいね。おお、こわいこわい」


姫はつかつかと真藤に近寄ると胸ぐらを捻りあげる。


「いつまでもへらへらとふざけてんじゃねーですよ。こっちは大切な彼氏から会えない宣言くらって頭の中グルグルなんですからね。何するか分かりませんよこの私は」


真藤は首元を締められて若干苦しそうにはしているがにまにまと底意地悪い笑いは依然として絶やしていなかった。


「ヌフフフフ。怒りに狂う少女の眼差しのなんと恐ろしいことか。わかったよ。説明してあげるから、まずは手を離してもらえるかね」


***


俺はサイコロリから渡された地図をもとに新しい自宅へとやってきていた。

まあ、ちょっと高級そうな賃貸アパートって感じだ。

封筒に一緒に入っていた鍵を使ってドアを開ける。

もう、深夜だ。

出来るだけ音を立てないようにして扉を開け中に入る。


暫く手探りで照明のスイッチを探す。

お、これか?

右手側にそれらしきものがあったのでぱちんと押すと玄関の電気がついた。

良かった、これで電気通ってませんでしたじゃ笑えねえよ。


玄関を抜けるとすぐに横に風呂とトイレのドアがあった。

風呂とトイレが別なのは嬉しいな。


そこからすぐに10帖ほどのリビングダイニングキッチンがあり、見る限りソファや冷蔵庫や電子レンジなど生活家電家具一式は揃っているようだ。


その奥はベッドルームだ。

ぱっと見、5帖程度の部屋にベッドやテレビがおかれており、そのどれもが淡い白とピンクのレースに支配されている。


げえ、趣味悪。


よく見るとサイコロリが言っていた通り恐らく俺の私物で入っているであろう段ボールが部屋の隅に積まれている。

後でチェックだな。


ふとベッドの上にこの部屋の雰囲気には似つかわしくない無骨な茶封筒が置かれているのに気がついた。


茶封筒には『諫早有紀へ』とだけ書かれており、恐らくサイコロリからの書き置きであろうことが推測される。


頭の中でサイコロリがヌフフと笑っているのを幻視してしまい頭を振って強引にかき消す。

サイコロリめ……目の前にいなくても俺を苛み続けるのか……。


封筒を開くとどうやらそれは手紙のようだ。

真っ白い便箋にやけに達筆な文字でつらつらと文字が書き連ねられている。

以下内容。



やあ、諫早有紀くん。

新居の具合はどうかね?

なかなかお洒落で気に入ったんじゃないのかな?

さて、君は今混乱の最中にいることであろう。

そりゃあいきなり性別が変わったんだもの、混乱するのも無理はないさ。

これから君には1週間の猶予が与えられる。

その間に女子の生活に慣れることだね。

その後は我輩の指定した学校に転入してもらうよ。

勿論共立校だから男も女も選びたい放題だぜ? 楽しみだろ?

それじゃ、新たな生活に祝福のあらんことを!


ps

なにかあったら気軽に連絡するんだぜ? 恋愛相談とかチョートクイなのだよ。

Tel:090-****-****

Add:tensai.kawaii_shindouchan4649@*****.com



人の心の分からないサイコロリに恋愛相談なんか恐ろしくてできるか。


はぁー、それにしてもおかしなことに巻き込まれちゃったな。

なんで俺なのだ。

折角彼女ができてこれからの生活は色鮮やかに送れると思ってたのに。

神様俺何かしました?


手紙を適当に放り投げて今日はもう寝ようと思う。


「あ、風呂入ってなかったな……シャワーでいいか」


のそのそ風呂場に向かい脱衣所で服を脱ぐ。

その時、俺の背中に電流が走った。


待て待て待て。

そういや、俺今女の子じゃん?

シャワー浴びるってことは裸になるわけじゃん?

体を洗うってことはあちこち触るわけじゃん?


そっ、それいいのか?

泡塗れの女の子の裸を生で見てもいいのか?

と、いうか俺耐えられるのか!?


ごくり、と生唾を飲む。

そして深く深呼吸をひとつ。


いいか、お前ら。

道に迷ってしまった時は先人の知恵を借りることも必要だ。


ある人は言った。

「男は度胸。なんでも試してみるもんさ」と……。


ウッヒョー!

裸のねーちゃん見放題だウッヒョーイ!


俺は勢いよく服を脱ぎ捨て風呂へ向かう。

そして、風呂場の扉はちゃんと閉める。これ大事。


ん、なんだって?

ここからが重要だろって?


何言ってんだ、男のシャワーシーン見ても何もおもしろくないだろー。

精々シャワーの音でも聞いて悶々としてろっ!

んじゃまたあとでな〜!

今日は晴れてて気分がいいですね?

感想評価お願いいたします。

がんばっていきますよー。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ