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アンケートに答えた話

クロロホルムってあるじゃん?

よくコ◯ンとかで犯人がハンカチとかに染み込ませて被害者の意識を奪うやつ。

あるいは全身麻酔とか経験したことある?

俺は経験したことないんだけど、多分そういうのって眠気とか意識を失わないように抗うのって不可能だと思うんだよね。

それは人体の構造上仕方ないことだと思うんだよね。


だから、こうやって椅子に全身縛りつけられてても、なんで抵抗しなかったの? とか、雑魚乙とか、そーいう酷いことはどーか言わないでほしいわけよ。


はい、そうです。

今、僕は椅子にロープでぐるぐるに縛りつけられております。

場所?

知らんよ。なんか真っ暗なんだよココ。

なんかコポコポ沸騰してるような音だけ聞こえて、そんでもって妙に薬臭い。

病院の廊下みたいな冷たい粉っぽい匂い。


幸い猿轡とかアイマスクはされてない。

五感奪われてる訳じゃないのはせめてもの救いか。


ん? なんだって?

じゃあ大声出して助けを呼べばいいじゃないかって?


お ま え は ば か か !


そんなことしたら俺をさらったやつにバレて怒られるでしょうが!


じゃあどうする?

んー、取り敢えず待つさ。

待って、奴さんが現れたら靴でも舐める勢いで命乞いするさ。


はい、今ダサいとか思ったね?

甘い。甘いよ。

ダサかろうが生き残りゃあこっちの勝ちなんだよォ!

フゥーハハハ……。


ガタン!


「ハァッ!?」


突然の音に心の笑い声が漏れてしまった。

続いてガララとスライド式の戸を開ける音が聞こえてきた。


おやおや、ついに犯人さんとご対面ですねえ。

……ちびっちゃいそうだよ。


「あれ〜? もしかしてもう起きてんの〜?」


すると緊張感のないどこか間の抜けた声が耳に飛び込んできた。

ってあれ、この声……。


「真藤先生?」


「ちっちっち。甘く見るなよ少年。誰と勘違いしてるかは知らないが〜、我輩はそう簡単に正体は明かさないぜ〜、ホイ!」


ぱちん、という音とともに蛍光灯が光る。

眩さにしばし目を瞬かせていると、突然目の前にグロテスクな男の顔が現れる。


「ひっ、ぬぅあああああ!?」


その男の顔面半分には皮膚がなく歯や筋組織が露出しておりまぶたに覆われていない眼球が不気味にギョロリとあらぬ方向を向いていた。

そう、まるで人体模型のような……って。


「人体模型じゃねーか! 驚かすなあ!」


「そう邪険にするもんじゃないのさ少年。彼は我輩のBFFのケンジくんだ。君が今行ったのは人間に対して人間だーって当たり前のことを言っているようなものだぜ? ちゃ〜んと個を尊重してくれたまえ〜」


そう言いながら人体模型の頭を胸元に抱え忍び笑いをしているのはやはり化学教師の真藤織先生であった。


「いや、顔とか隠す努力はしねーのかよ! 簡単に正体明かさねーんじゃなかったのか!?」


「さっきの我輩はそう言ったが、今の我輩は隠す必要がないと考えているからね。ま〜、これから少年が辿る道を思えば、むしろ正体明かされてて良かったと思うぜ?これまじで」


ツッコミに夢中になっていた俺は現在の状況を一時的に忘れていた。

そうだよ、俺捕まっちゃってるんだよ。

思いの外、知ってる人が来ちゃったから緊張感抜けちゃってましたよ。


「な、なにをするつもりだ。事と次第によっちゃあ地べたに這いつくばってアンタの靴を舐める事も辞さないんだぞ、こっちは! あぁ!?」


「やめてよ気持ち悪い」


……辛辣な言葉はやめてくれよ。

なまじ中学生みたいな見た目をしているせいで年下に罵倒されてる気分で情けなくなる。

ご褒美? いや中学生は俺のタイプじゃあない。


「それじゃあ少年。君にはこれからいくつかアンケートに答えてもらうよ」


「へ? アンケート? それだけ?」


「そうそう。我輩新任だから〜? 大切な生徒への意識調査なのだよ」


「なあんだ、それならそうと……」


いや、ならなんで縛りつける必要があるんですかねえ。

ツッコミたい気持ちをぐっと抑え、ここは素直に従うことにする。

アンケートが終わって解放されるならよし、何かされそうになったら俺の究極の命乞いをかましてやる。


「それじゃあQ1。異性の好きな髪色と髪型は?」


「……(ツッコミてえ)」


「答えて〜」


「えっと、好きな髪型はボブっていうのかな肩までいかないくらいのショートカットで色は明るくない茶色」


「なるほど」


そう言って真藤先生はいつの間に持っていたのか手元のバインダーに挟んだ紙にメモを取っていく。


「はいQ2。異性は可愛い系が好き? それとも綺麗系?」


「……可愛い系かな」


「ふむ。Q3。おっぱいはおっきい方がいい?」


「おっ、おっぱ!?」


「言い方が悪かったかな? バストサイズはどれぐらいが理想かな?」


「ええー……大きすぎず小さすぎずちょうどいいくらいで……ご想像にお任せシマス……」


「ふんふん。お任せね」


そんな感じで延々とアンケートは続いた。

一貫して俺から見た異性のイメージを質問され続け、もう最後の方は、はい、いいえ、違います、そうです、などと半ば作業的に処理していった。

そしてようやっと最後の質問まで辿り着いたのだった。


「ふぅ〜、これが最後のクエスチョンだ。Q100。覚悟はいいね」


「はい」


俺はこの時油断していたのだ。

最後の質問を答えるための覚悟ができたかを問われたのだと思った。

まさか『覚悟はいいね』が最後の質問の内容とは思わないじゃんか。


俺が、はい、と答えるや否や真藤先生は懐から慣れた仕草で何かを取り出しそのまま僕の首筋に突き刺した。


「いったァ!?」


反射的に身動ぎをした俺は縛られた椅子ごと床にがたん!と倒れた。

真藤先生は身軽に回避しており俺の頭上からニマニマ意地の悪い笑みを浮かべている。

その手にはきらりと光る注射器が握られていた。


「ち、くしょう……不意打ちとは卑怯なぁ〜……」


「ふんふん。心外だな。君が覚悟完了してるって言うから一思いにやってあげたというのに。ほら、注射って見ると怖いんだぜ〜? 現に痛みは一瞬だったろ? 君は我輩の思いやり精神を賛美しても良いのではないかと思うのだがね?」


「なにをっ……俺、に……なにをし、たんだ」


「ふふーん。なあに、刺激的な人生のお手伝いだよ。……ちょうど君みたいな中心人物が欲しかったんだあ」


急激に眠気が襲ってくる。

まぶたが落ち抗えない。


「今は眠りなさい……無理に耐えるのは体に毒だぜ」


体に毒……って毒入れたのお前じゃねーか……。

つーかまさかコ◯ンのアポト◯シン4869ってオチじゃねえだろうな……。

そんなセルフ伏線回収……まっぴら……ご……めん…………だ……。

一応毎日1-2話更新考えてます。

ジャンル別日間ランキング入ってたみたいで嬉しい。

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