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彼女をゲットした話

みんな驚け。


彼 女 が で き ま し た ! ! !


いきなり話が飛びすぎじゃね?と思うかも知れんが大丈夫だ第二話で合ってるぞ。

ままま、僻むな僻むな。

ようやっと俺にも春が来たんだよ。

長い冬だった……イケメンの添え物のように扱われる日々は終わりを告げたんだ。

これからは俺がメインだ。

添え物のパセリじゃない、俺はメインのとんかつだ!


ごほん。


と、まあ嬉しさのあまり意味のわからないことを口走ってしまった気もするが、とにかく俺が伝えたいのは彼女ができたってこと!


俺の恋愛薔薇色ライフがついに始まったのだ。

次回からは『俺の恋愛薔薇色ライフ〜愛の不時着編〜』をお届けするぜ!


「ユウくん? いきなり虚空に向かって何を叫んでるんです?」


バニラのような甘ったるい声で俺は現実に引き戻される。

振り向くと、そこには俺の 彼 女 である白尾姫が立っている。


そう!今の状況を説明しよう!

念願の『彼女と一緒に下校中』なんだよ!


頬に人差し指を当ててこてんと小首を傾げる様子はあざとくも可愛らしい。


「いや、なんでもないよ白尾さん」


キメ顔でハハハと欧米人の如く笑う俺の歯はきらりと輝かない。

側から見れば滑稽だろう。

でも、浮かれている俺はそんなことも気づかない。


すると白尾さんはぷくっと頬を膨らませ俺の唇に人差し指を当ててきた。


「もう、白尾さんも良いですけれど姫ちゃんって呼んでください」


「わ、わかったよ。ひ、ひひ、ひ、姫ひゃん」


くそっ、噛んだ。いきなり名前呼びはハードル高すぎんよ〜。

ドギマギする俺を見て姫ちゃんはくすくす笑う。


「はい、よくできました〜」


そう言って俺は頭を撫でられる。

た、たまらん。

自分より背の低い女の子が背伸びをしてナデナデしてくれるなんてこんな幸福あって良いのか!?


俺の意識はトリップする。

回想シーンどうぞ〜。


***


あれは先月。

そうだ、新任教師が赴任してきた日。

化学教師の真藤織と初対面した日だった。


教師と言うには幼すぎる容貌。

見た感じ中学生にしか見えない少女がダボダボの白衣を引きずって歩く姿は何かの冗談かと思った。


そんな真藤先生の授業は当初考えていたものとは大きくかけ離れていた。

教師が変わっても授業内容は同じだろ、って?

いやー違ったね。


真藤先生は外国の研究機関で薬学の分野にて客員研究員として働いていたのだと。

その際に開発した様々な薬物を実際に実験を交えて披露してくれた。


ゾンビ薬、若返り薬、TS薬、媚薬、ハゲ治療薬、etcetc……。


若返り薬の人体実験の副作用で外見が固定されてしまったとか嘯いてたが流石に冗談だよな……?


とにかく俺らは退屈な授業そっちのけで行われた薬物ショーで真藤先生の授業は面白いと刷り込まれた。


中でも士郎は目を輝かせてすごいすごいと連呼していたな。

授業が終わっても真藤先生に質問しきりだったし。

放課後も真藤先生と話すと言って、先に帰ってくれって言われるくらいだから余程士郎の琴線に触れる何かがあったんだろう。


音楽でも聴きながら帰るかとイヤホンを耳に突っ込んだ。

あーやっぱり『Trans Sexual’s』の新譜すげーいいな。

ところでトランスセクシャルってどう言う意味だ?

まあいいか。


そんなことを考えていると背中をバンと叩かれる。

俺にこんなことをしてくる奴は1人しかいない。


「なんだよ士郎。先に帰ってくれって言ってたじゃ……」


イヤホンを外しながら振り返るとそこには女の子が立っていた。

明るいブラウンのロングヘアー。くりっとした目は少し細まって微笑むようにこちらを見ている。身長は150cmくらいか? 小柄な女の子だ。


「えっ……なん……えっ! うわっ!」


予想外のことに動転し足がもつれてすっ転んで尻餅をついた。

仕方ないだろ。

こちとら家族以外に女子と接することがなかったんだよ。

周囲の女子は誘蛾灯に集まる蛾の如く、尽く士郎に引き寄せられていくんだから。

女子耐性がひっじょーに低いんですよ!


「大丈夫ですか?」


そう言って手を差し伸べてくれるもそれを掴む勇気も出ない俺である。


「あ、あの!?」


「なんでしょうか?」


手を差し伸べたまま小首を傾げる。

ぎゃ、ぎゃんかわ……。


「ひ、人違いじゃありませんかー? 間違って声かけちゃったとかなら俺のこと気にしなくていいんでー、は、はやくその人探しに行った方がいいと思いますよ、はい」


「人違いじゃないですよ?」


「へっ?」


女の子はそう言って尻餅をついた俺の前にしゃがみ込む。


「人違いじゃありません」


琥珀色の目が俺を真っ直ぐに見つめてくる。

どこまでも真っ直ぐなこの視線……俺はどこかで……。


「ずっと貴方のことを見ていました。灰崎佑哉さん。私はあなただけが好きです。付き合ってください」


一瞬、俺は日本語が分からなくなったかと思った。

いやいや、付き合ってくださいってそんなこといきなり言われるわけないじゃない士郎じゃあるまいし。


「付き合う、ってちょっとそこまでー、みたいな?」


「ふふっ、おもしろい。だけど違いますよ。男と女の営みの方です」


「俺と、君、が?」


「そうです。わたしが、あなたに、交際を申し込んでいるのです」


「まじで? 士郎にじゃなく?」


「誰です? その方」


士郎を知らない?

じゃ、まじで俺に話しかけてきて俺と付き合おうってこと?

え、うそうそ。俺死ぬ?


「疑り深くてごめんだけど、俺のことが好き……なんだよね」


「大好きっ、です」


「おぐぅっ……!」


まさか笑顔で即答されるとは。

ダメージが深い。心の臓がもたねえよこりゃ。


「なかなか信じてもらえませんね……そんなところも好き、ですが。じゃあこういうのはいかがでしょう?」


彼女はするりと俺の懐に入り、俺の頬に顔を近づけ何かしたようだった。

ちゅっ、という軽い水音と同時に柔らかい何かが頬に触れた。


「唇は、まだ、お預けです」


そう言って立ち上がった彼女は悪戯っぽく唇に手を当てて微笑んでいた。


俺は呆然と感触のあった頬を撫でる。

今のちゅー、か?

これが……ちゅーか。

世のリア充どもが往来でちゅっちゅちゅっちゅしてたあれはこんな感触なのか……。


俺は勢いよく立ち上がった。

そして両手を天に突き上げる。


「ぜひ! お付き合い! お願いしまーーーーーーーーす‼︎‼︎」


彼女はそんな俺の様子に怯むことなくくすくすと笑っていた。


「そうこなくては。やっぱりかっこいいですよ。これからよろしくお願いしますね、ユウくんっ」


こうして俺は苦節17年念願の初彼女をゲットしたのであった。

あ? なに? 自己紹介もしてねえのによくOKしたな、だと?

そんなもん、誤差だよ誤差。

ぜひ感想評価お願いします。

敬語って、なんかいいよね。

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