表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者に相応しくないと勇者を解雇されたので、辺境の地まで逃げることにしました  作者: 天空 宮
第六章 「嚮後占う絢爛な花婿争奪戦」
201/352

197.5話 これまでのあらすじ

 魔王が世界に猛威を振るっていた時代、世界のバランスを取り戻すべく九人の勇者が立ち上がった。それぞれ神によってもたらされた【紋章】という力によって魔王を封印することができたが、封印は完全なものではなく消滅させられなかった予防策だった。

 先代の勇者は紋章を次代の勇者に引き継ぎ、魔王が復活した際に戦う準備を整える必要があった。そこで勇者達は幾つかの準備を未来に繋いでいた――。


 時は進み、【勇気】の紋章を宿したのがこの俺バロウ・テラネイア。

 勇者パーティに属し魔王軍幹部の一人を倒したが、無謀な戦い方を続け他の勇者達と軋轢を生じさせた。それだけに留まらず、神にも目を付けられ宿していた紋章を取り上げられてしまう。

 紋章を失った俺は、強さと自信を失くして義妹のメノア・テラネイアと共に辺境ミシネリアの地を踏んだ。

 メノアは生まれた時から俺の妹であり、多くの苦難を共に乗り越えてきた相棒でもある。清楚で可愛げしかない時にお茶目な子だが――俺からすればいつまで経ってもお兄ちゃん子である。

 メノアにはいつも助けられっぱなしで言葉もない。ナイーブになった俺の傷を癒すべく気に掛けてくれながら共に昔懐かしい生活を過していた。


 ――しかし、元勇者という肩書に客人は尽きず、俺を放っておいてはくれなかった。

 まずはこいつ等――ケンタ・オオヤマ、ゾアス・ラートン、ラキウス・エンドマン。神の指令によって俺を倒そうとしていた。

 神の刺客なだけあって能力自体は俺でも舌を巻くほどだったが、不思議な力によってなんとか勝つことができたんだ。


 次に現れたのがゾオラキュールの牙(ファング)。闇組織の一つで、殺しだけでなく身体能力及び魔力をも強化する薬を作り売りさばいているようだ。これまで何度か奴等の商売の邪魔をしたせいか目を付けられていたらしい。わざわざ辺境の地にまで俺を追って来た。

 この時現れたのが狂犬クレイジー・ドック硬像ハード・エレファント。殺しをなんともおもわない冷酷な奴等で、俺も苦しめられた。 


 その時出逢ったのが、ロゼ・ツァイドラー。ブロンド美女で俺自身、恥ずかしながら最初は一目で美しいと思ってしまったほどだ。

 当時はイドラという偽名でギルド職員を装い、俺を殺す機会を窺っていた。策に嵌まった俺は、ロゼが起こした爆発によって燃えていくギルドでロゼとあわや心中という窮地に陥った。

 死をも覚悟の彼女はむしろ死を受け入れるかのような言葉を零し、俺は助けなければならないと奮起した。そして、ロゼの運命を変えるべく彼女を雇う奴隷派遣組織シュクリンゼルの崩壊を約束することになったんだ。



 ロゼとの約束を守る為、辺境の地を出ることに決めた俺は隣町で懐かしい顔と再会する。これが前勇者が次代に残した遺物――人造人間ホムンクルスのポロだ。

 容姿は純真無垢な少女。内面はちょっぴりアレな飛び道具という感じで……つまるところ元気な子供だ。そのおかげでロゼとは馬が合わなく、しょっちゅう口喧嘩している。まとめるこっちはいつも大変な目にあっている。もう少し仲良くしてくれたら俺も疲れないんだけど……。


 四人パーティを発足し、初の依頼で伝説級レジェンドクラスの魔物と戦うことになった。

 ここでミシネリアで再び俺に宿った紋章の真価を発揮し始めた。体に紋章の力を発現させて攻撃する《赤辣せきらつ》や《赤煌せっこう》といった技は、俺のお馴染みの技になっているな。

 しかし、それだけで勝てるほど甘い相手じゃなかった。ポロも加わり、皆がいてくれたから俺たちは生きて帰ることができた。こうして俺は仲間の大切さを学んで行ったんだ。



 俺たちの次の目的地は、サーナタンになった。

 それも道中で出逢った男の子っぽい少女――ユリン・タナテル・シャーロットによる影響が大きいだろう。彼女は、サーナタン王国の領地に住んでいた隠れエルフだった。

 その頃のサーナタンは厳しい干ばつに遭い、更には王国からの支援もなく多くの死者を出していた。それに我慢ならなかったタナテルが復讐を誓う中、王国の振る舞いに疑問を持った俺も賛同する運びとなった。


 サーナタン王国に潜んでいたのは、ロゼの雇い主であった奴隷派遣組織シュクリンゼルだった。

 奴等は自らが保有する奴隷を使い捨ての殺し屋として教育し、あらゆる方面へと派遣していた。その頃の奴隷紋に侵されたロゼは、奴等に操られて俺へ差し向けてきた。

 ロゼと戦うことができなかった俺は、牢屋に閉じ込められることになるのだが。

 サーナタンの正式な王女によって脱出することができた。彼等は元国の衛兵や民衆と共に王国を取り戻そうとしていた革命軍だった。俺たちも彼等と協力し、ロゼの奪還を勘考していた。

 そんな中で現れたのが、アモーラ・サーベル・インバート――エルフの王女プリンセスだ。妖艶で包容力のある容姿には全員が警戒するも、彼女は俺に魔王軍が関わっていることを示唆しにきていた。


 いざ革命は始めると、敵は民衆を操って苦しい戦いを強いられることになる。

 俺は、ロゼを取り戻すべく城へ向かうが奴等は俺を殺すために巨大な魔法を用意していた。

 皆でそれを退け、なんとかロゼを奪取することができたが、今度はシュクリンゼル幹部と戦わなければならなかった。

 ロゼは敵として旧友と再会し、俺やケンタはゾオラキュールファングの造った薬を摂取した幹部と戦った。紋章の力を十分に発揮することができずに防戦一方な戦いが続いたが、紋章の覚醒やタナテルの助力によって難を切り抜けることができたんだ。


 最後には魔王軍幹部が現れた。アモーラが言っていた強大な敵だった。

 シュクリンゼルとの戦いでそれ以上戦える状態ではなかったが、メノアとタナテルの持つ秘宝が輝きを放ち戦う力を与えてくれた。これが七つの秘宝との出逢いであり自覚する出来事でもあった。


 魔王軍幹部を倒し王国に平和が戻りつつあったが、それを崩すかのように今度はゾオラキュールファングの幹部が俺の目の前に現れた。黒い気を宿す戦闘の申し子――デーバ

 俺たちは、奴一人に敗北した。絶対的な力とスピードを持ち、元勇者の俺が赤子のような扱いだった。しかし、何故か奴は俺を生かした。



 負けたことで悔しさを反芻する毎日。苦悩する道中で俺たちは目的地であるスリット王国へ辿り着いた。ここでは知己である獣人にシュクリンゼルの情報を訊ねに来たのだが、この頃はあまりそのことを意識していなかっただろう。

 入国して間もなく、俺はあいつの従者に強引に連れられた。

 カナリ・メント・デ・パウル・アルティナ・オー・ミンク・ラット・イン・ゼノ。内向的な栗毛の少女で、過去に色々あって謝罪するハメになった……。あれは今でも悪いと思っている。

 カナリは、知識の紋章を宿していた。魔法において右に出る者はない智賢。王女代理でもあるらしく、コミュニケーション難以外は完璧だった。


 スリット王国にはサーナタンで別れたケンタ達だけでなく、師匠――ガンマ・トールも訪れていた。

 天との戦いで完敗した記憶新しく、俺はケンタと共に再び師匠の修行を受けることになった。

 修行の日々は辛いと思うことはほとんど無く、それよりも何故ダメなのか悩むことの方が多かった。



 ――そんな日々が他を忘れさせる要因になっていた。



 ロゼが帝国軍に連れされられてしまう悲報が飛んでくる。俺はロゼを止めようとしたけれど、帝国軍や師匠に阻まれてしまった。

 諦めきれなかった俺は、ロゼを取り戻すため魔物召喚によって紋章に関連のありそうな紅狼こうろうを呼び出した。紅狼に乗り、帝国裁判所を目指して突っ切った。


 俺は、帝国裁判所で葛藤を繰り返す少年デニス・アンデルセンと出逢う。彼は不幸な獣人の少女を送迎したらしく、しかしなんの罪もない者であることを憂いていた。

 帝国では他種族、特に獣人には風当たりが強い。強すぎるとも言っていい。獣人というだけで死刑になってしまうのだ。

 俺は、このデニスと共にロゼを救う策を立てた。

 ロゼは何か勘違いをしたらしく処刑場から出ることを渋っていたが、なんとか誤解を解くことに成功した。

 脱出するまでにシュクリンゼルの介入や帝国軍長官の戒め、悪魔の作為が惑わしてきた。

 それもロゼの紋章が覚醒することで事を収めることができた。

 あいつは、俺が生きる限り生き続けることを誓ってくれた。それを改める事件だったが――もう二度とあんなことはさせない。誰にもな。



 次に俺たちを待っていたのは、エルフの里だ。アモーラの依頼により、ゾオラキュールファングの災厄から里を守って欲しいようだった。

 俺は、天と再びまみえることを期待して修行しなおしてきたのだが。

 里に来て早々、俺を待っていたのはフラウ・ラウニー。エルフの里の警備隊を名乗っていた。

 その次はエルゼルダ・ローハウ。ダークエルフの次期王女であり、普段は奇抜だが本質は礼儀正しい淑女だった。

 エルフ間で隔たりがあるらしく、ダンジョン制覇しろとか我儘に突き合わされたっけ。おかげであいつと再会するハメになってしまった――。

 ゲルシュリウム研究所の元研究員のシンジケータ・ゲンと名乗る男。ミシネリアのダンジョンに潜んでいた奴を倒したはずだが、奴はそれ以前に自身の脳を機械に移していた。分身とも言える体で言葉しか介さないが、ポロを超える為に作った人造人間キュラソーとポロを戦わせた。


 不吉な真夜中、アモーラとタナテルが言うようにどんな手を使ったのかゾオラキュールファングがエルフの里に乗り込んできた。

 タナテルの未来視によって敵がどこからいつ来るのか判っていたおかげで戦争を優位に進めるはずだった。最初の作戦はむしろこちらが優勢、楽勝にも思えたほどだった。

 俺は、フラウとエルゼルダが二人でナーガと戦っているところに横槍を入れた。

 ナーガ――俺とメノアの両親を殺した張本人であり、フラウとエルゼルダとも因縁があるらしい。


 ――俺は、奴への復讐を果たすべく拳を赤く染めた。


 俺たちの戦いを他所にポロの方での戦いによってエルフゾンビが溢れかえった。数えきれないほどのエルフゾンビによって戦況が一変する。後退を余儀なくされるも、そんな余裕すらもらえなかったようだ。

 シュクリンゼルも一枚噛んでおり、敵に勢いが増してしまう。それを収めたのがロゼだった。

 覚醒した紋章の力によってエルフゾンビを次々と消滅させ、薬を摂取したシュクリンゼル幹部をも倒した。


 そんな時だった――本命が現れる。ゾオラキュールファング幹部、火神アグニ風神バーユがこちらの懐深く切り込んできた。

 ゾオラキュールファングの幹部は皆、神を冠する名を持っている。その二人が現れたことで、戦況がひっくり返されてしまった。森の中で戦っていたエルフのほとんどは森と共に火あぶりにされてしまった。

 シュクリンゼル幹部とは一線を画す実力はケンタ、カナリ、アモーラと紋章所持者でさえ歯が立たなかった。何度も勝ち時を創り出すものの、敵は【血解けっかい】というパワーアップをして更なる猛威を振るった。


 俺は天と再会を果たし約束の勝負をしていた。師匠との修行を思い出し、飛躍した紋章の力、技を駆使し天との戦いを心の中で楽しんでいた。

 しかし、思わぬ邪魔が入った。狂犬グレイジードック――犬野郎が俺を殺そうと画策していたようだ。毒矢を放ってきたが、メノアに庇う形で助けられた。

 メノアの憔悴によって絶望した俺は我を忘れてなんらかの力を暴走させてしまう。気が付いた時には狂犬も天も重症であり、メノアは息を薄くしていた。


 元聖女を名乗る者がメノアの意識を乗っ取ることでメノアは回復することができた。彼女によって俺の身元が発覚したり、前勇者のことも少し知ることができた。それと同時にナーガの復活に気付くことになる。

 天は、負けを受け入れた。俺の意識がないうちに勝ってしまったらしく、自分への戒めかなんなのか俺と共にナーガと戦うことになった。


 エルフや皆と協力するも、多くの空蛇りゅうを相手に苦戦を強いられたけど――犠牲を出しながらもナーガに勝つことができたんだ。

 この戦いは犠牲が多すぎた。エルフの戦士達はもちろんのこと、ポロの行方不明に始まりアモーラの紋章転生、天の死亡。特にアモーラとは悲しい別れとなるだけに涙を滲ませてしまった……。

 戦うことはそれだけリスクを背負うことでもある。それをわかっていたはずなのに、改めて思い知らされる戦いだったと思う。


 戦いを終えて一番変わることになったのは、タナテルだろう。アモーラが消えてしまったことにより、ウィンドウエルフの王女となることになった。それだけでなく、全てのエルフの責任者となることが予定されているらしい。タナテルともエルフの里(ここ)で別れることになった。

 俺たちは里を出て次の街を目指すことになる。それまでに色々とあるのだが――それは運命の導きのままに、ということなんだろう。



 ポロを見つけなくちゃいけない。魔王や師匠のことも気になるし、他の紋章所持者――シンセリード達がどこにいるのかも把握しないといけない。やることが一杯だな。


「大丈夫だよお兄ちゃん! わたしもフォローするし、ポロちゃんだってきっと無事だから!」

「おいメノア、人の深層心理を読み解くんじゃねえよ」

「だって暗いんだもん……こういう時こそ明るくしないと! ね、ロゼ?」

「そ、そうね・……。あんなことがあった後だから気持ちもわかるけど、わたし達のリーダーとしてしっかりしてもらわなくちゃ困るわよ!」

「ヘボ勇者だからしかたないんじゃね? 相変わらずの朴念仁も直してもらわないとロゼも困りもんだよな!」

「ば……ヴィスカ、アンタねえ……!!」

「あは、ロゼが怒った!」

「あいつ等、仲良くなったよな……」

「出逢ったばかりの頃はお兄ちゃんも散々な目にあっていたからこれはこれで良かったんじゃない? で~も~、妹のことも蔑ろにしちゃダメだよ?」

「…………お、おう……」

「え、なにその空気!? まさかアンタ達、わたしの知らないところで何かあったんじゃないでしょうね……!?」

「…………さ、さあ! そろそろ俺たちも先に進もう! ケンタ達が待ち焦がれているはずだしな!!」

「あ! いま誤魔化した! どういうことなの!? ねえバロウ、メノア!」

「そんじゃタナテル達と別れを済ませて、スリット王国に戻るぞ!」

「う、うんそうだね!」

「ちょっとアンタ達!! まちなさ――」


 ――第六章開幕――


「待ちなさいよ゛っ!!」


 よろしくな!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ