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我ら月夜の白兎団  作者: CROW莉久
第1章 結成「月夜の白兎団」
5/5

第5話 月夜の白兎団

今までで1番長くなりました。

最後まで読んでくれると嬉しいです。

「そんな……ラビ助……」


 夢野が膝から崩れ落ち、手にもっていたバットが床に転がる。


 そのかつてはラビ助であっただろう黒いうさぎは、ゲージを飛び出すと共に徐々に大きくなっていき、最終的には、大型犬と同じくらいのサイズにまでになった。

 そして口には大きな牙、前足には大きく鋭い爪が生えてきた。


「乗っ取られると姿も変わるのかッ……」


 黒いうさぎは、その赤く光る目でこちらを見ると膝から崩れ落ちて放心状態の夢野にその鋭利な爪で切り裂こうと飛びかかる。


「な……危ないッ!」


 急いで、夢野の黒いうさぎの間に入りその爪をバットで防ぐ、バットと爪が接触した瞬間火花が散る。


 もの凄い衝撃が全身を襲う。

 「力」がなければ、いとも簡単に壁まで吹き飛ばされていただろう。


「ぐ、ああぁぁ!!」


 渾身の力で爪を押し返すと黒いうさぎはそのまま1、2メートル跳ね返されたが、すぐさま体勢を立て直す。

 そしてもう一度夢野へと飛びかかり、切り裂こうとする。


 さっきの攻撃で体の使い方に慣れたのか今度の攻撃はさっきよりも速く、鋭くなっていた。

 が、かろうじてその一撃を防ぐ。

 だが、うさぎがすぐさま体を回転させ、後ろ足で僕の体を蹴り飛ばす。


「ガッッ!?」


 そのままロッカーまで吹き飛ばされぶつかる、その衝撃でバットも遠くまで飛んで行ってしまう。

 そして今度こそ夢野を切り裂こうとその爪を振り下ろす。

 急いで壁を蹴り、その攻撃を防ごうと飛びかかるがこのままでは間に合わない。



 ……だが、その振り下ろされた爪は、ほんの一瞬夢野の首元で停止した。


「――ッナイスだ!!ラビ助ッ!!おおぉぉ!!」


 その一瞬の間に左手でさっきの何倍もの力で渾身アッパーをうさぎの腹に叩き込む。

 アッパーをくらったうさぎはケージ近くの壁に叩きつけられた。


 すぐさま夢野が落としたバットを拾い、うさぎに追い打ちをかけようと飛びかかるが、爪でガードされてしまい、鍔迫り合いとなる。


「夢野!!」


 鍔迫り合いの中僕は夢野に叫ぶ。

 その声で夢野はハッと我に返りこちらを見る。


「……ラビ助はまだあの中で影と苦しい戦いをしているんだ!!それなのに!飼い主の君がそんなんで……どうする!!」


 バットが徐々に押され始める。


「ラビ助を本当に大事に思っているなら!!その苦しい戦いから解放して……みせろ!!」


 鍔迫り合いの中うさぎに蹴りをくらわして窓際まで吹き飛ばす。


「……そうですね、はい、確かにそうです」


 と言いながら、夢野は静かに立った。


「私は何をボーッとしていたんでしょう。飼い主ならペットを助けるのが役目です」


 そう言いながら夢野は僕の前まで歩いてきて、僕の目を見ながら言った。


「ここからは、私に任せてください。」


 その目からは強い意志を感じた。


 夢野は制服のスカートを翻しながらうさぎの方を向くと、目を閉じて意識を集中する。

 右手の甲の模様が強く光り、部室が黄緑色の光に包まれる。


 うさぎが夢野に飛びかかる。

 そして「何か」をコピーした夢野はうさぎの爪を避けるとそのまま前足をつかみ、床に叩きつけた。


 間違いない、今夢野は僕の「力」を自身の体にコピーした。どうやら彼女の「能力」はそこまで出来るらしい。


 そして右手を前に突き出して、もう一度目を閉じて意識を集中させた夢野の右手に黄緑色に光る何万、何億もの小さな光が集まり、その光たちが刀へと変化した。


「ラビ助、ごめんね……今までありがとう……」


 と言って彼女は叩きつけられた衝撃で動けないうさぎにその刀を向ける。 

 そしてその目から涙が溢れ地面に落ちたと同時に、刀をうさぎに突き刺した。


 刀が突き刺さったうさぎが段々小さくなっていき、元のラビ助のサイズにまで戻り、黒かった体も血で赤く染っているが、元の色に戻った。


 彼女は刀を抜くと空中へとほおり投げてラビ助の体を抱きしめた。

 刀はそのまま空中で光の粒に戻り、暗闇の中に消えていく。


「ごめんね……ごめんね……ラビ助……君を拾ったときに……絶対に君を守るって言ったのに……」


 亡骸が静かに輝き始め、徐々に透けてきている。

 どうやら影に乗っ取られると死体は残らないらしい。


 亡骸が完全に消えると床に赤色の首輪と何粒もの涙が落ちた。



┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈



 戦いが終わってすぐラビ助のお墓を作った。場所は、部室の窓から出るとすぐの場所にすることにした。

 お墓には「ラビ助ここに眠る」と書いた板を刺し、中にはケージと餌と赤色の首輪を入れることにした。


「もう時間も遅いのでお花は明日買いに行きましょう」


 と夢野は言った。涙はもう止まっている。


「それと、さっき団の名前明日までに考えてきてくださいって言ったんですけど、やっぱり私が今決めても良いですか?」


「うん、良いよ。」


「私「月夜の白兎団」が良いです。」


「どうして?」


「今夜は月が綺麗なので「月夜」、そして「白兎」はラビ助のことです」


「うん、とても良い名前だね」


「ありがとうございます。嬉しいです!」


 すると夢野がこちらを向いて言った。


「ラビ助の名前を出したらなんだか思い出話がしたくなったので、しばらく付き合ってくれますか?」


「ああ、もちろん良いよ」


 と笑顔で返す。


「ありがとうございます!」


 そう言った彼女の笑顔はとても綺麗だった。


「えっとですね、私とラビ助が初めて会ったのが――――」



┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈



 翌日の放課後、僕はまた部室の前にとある紙を持ってきていた。

 担任に出すものだと思っていたが、部長に直接出すらしい。

 ドアをノックして入る。


「失礼しまーす」


「あ、アラタくん!どうぞー……ってその紙ってもしかして!」


「白兎団と現代文化研究同好会のふたつでお世話になりますね、夢野団長」

 と言って入部届けを夢野に渡す。


「よろしくお願いします!アラタくん!あ、けど団長じゃなくて部長の方が良いですよ、一応白兎団は他の人には秘密ですし。」


「ははっ、じゃあよろしくお願いしますね、夢野部長」


 こうして月夜の白兎団が結成され、現代文化研究同好会にも記念すべき2人目が入ることになった。

これにて第1章は終わりです。

僕が1番書きたかった話なので、だいぶ頑張りました。

次回からは第2章が始まります。

ですが、第2章をどういった話にするのか全く決まっていないので、少し遅くなると思います。

最後に、もしこの作品が面白かったら感想、ブックマーク登録などしてくれると嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 綺麗にまとまっていると思います。 [気になる点] 金属バットは時間かかったのに、刀は一瞬?意志の強さブーストでしょうか?そして他人の力までアウトプットできるとは、とんでもない無制限ですね。…
[良い点] 独自の世界観を描けていて、素直に凄いと思わされました。 [気になる点] 地の文の初めは全角で空白を入れるのが小説を書く際のルールみたいなので、そこを修正するとより読みやすくなると思いますよ…
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