暗影
それからというもの、レンは来たり来なかったり、来たと思えば、昼食も挟まずに早退したり、逆に昼過ぎの授業だけ受けに来たりした。調子がいいときと、悪いときの差があるのは仕方の無いことだ。
どうやら今週は調子が悪いようで、3日連続で欠席を決め込んでいる。
メグもあまり触れないように学校生活を送っているが、その日の帰り道、レンのことが気になったメグは、隣病院へ向かっていた。
とりあえず、母親達がいる階を目指すも、2人とも不在。
行き場を失ったメグは休憩室でぼんやりと外を眺めていた。
先日、リリカの話があってから、レンと距離をおいている。というか、学校で直接話すことは避け、病院で会ったり、電話などを通じて会話をしている。そのおかげか、リリカもメグのもとを離れることなく学校生活を送っている。しかし、息のしずらさはきっとこの制限によって生まれているものだと確信していた。どうにかしたいが、今のメグの力では、どうにも出来ない。
「あれ、光??」
ふと、声が響き渡る。
声のするほうをみると、レンがみえた。
「そこにいたんだ。」
ふわっと笑ってみせるが、すぐに違和感に気がついた。焦点のあってない目。フラフラとした足取り、まるでいまからそこに倒れ込みそうな不安定さだ。
そして明らかに違うことがある。
「ねえ、ヒカルなの?」
メグをメグと認識していないことだ。
メグの方向へ歩きながらブツブツと違う人の名前を呼ぶ。
「ヒカル、ほんとうだ、ほんとうなんだ、ヒカル、ヒカル、会いたかったよ。」
「ち、ちょっとまって!」
慌てて止めようとするが、レンには届いていないようだ。メグの目の前にくるとそのままメグをぎゅっと抱きしめた。
「会いたかった、よかった。」
「レン、私メグだよ。」
そのまま眠ってしまいそうなレンの声。
人違いなことを告げると、レンはハッとしてメグを離した。
「ご、ごめん!」
咄嗟に謝るレン。
メグはやんわりと宥めた。
「いいよ、どうしたの?急に。」
「い、いやなんでもない。人違いだ…。その、、忘れてくれ。」
「……??いいよ。」
慌てっぷりがまるでレンではないようだ、どうしたの?と聞く前に、レンは足早に去って行ってしまった。
「…へんなの。」