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コカトリスは人の手によって作ることのできる魔物だ。蛇と鶏から生まれる魔物。卵を産んだばかりの母親である蛇からその卵を奪い、代わりに鶏の卵を抱かせ、見事孵化すればできる魔物なのだ。


しかし蛇は、時に自ら産んだ卵や、死産の自分の子でさえ食べてしまうほど卵に対する食欲が旺盛だ。その蛇の欲求を魔力で押さえつけて、ご馳走であるはずの鶏の卵を抱卵させる、それに成功したら生まれるという化け物だ。そして、抱卵の期間が長ければ長いほど強力なコカトリスが生まれる。


だけどその間、ずっと気を抜くことも眠ることもせず魔力で蛇の食欲と殺戮の本能を抑え込むのは並大抵のことじゃない。


と、私がこんなことを解説できるのは、魔女の日記を見たことがあるからだ。モモのように魔女先生に心酔していたわけではないが、コカトリスの部分は私も何度が目を通している。コカトリスを避けるためにどうしたらよいか、そのヒントが欲しかったからだ。


日記にはコカトリス製造までの苦労や失敗談もいくつか記されていた。


「お前たちは、コカトリスを生み出したのがここに住んでいた魔女だと知っているのか?」


モーリスさんが漸く押し出すように尋ねた問いに、私が答えた。


「それも日記にありました。ご覧になりますか?」


素早くモーリスさんが


「いや、良い!」


と答える。


モモが、


「とうして?」


と、勢い込んで聞いてきた。


モーリスさんはうんざりしたように、言い募った。


「あのように忌まわしいものを作った話など、読みたくもない!魔術を悪用してあんな化け物を産んだ魔女など、俺の母ではない!長い間、あの女はハイランドの汚点であり続けた。


だからこそ、息子である俺に責任を取って、コカトリスを退治せよ、という命が降ったのだ。」


モモがビックリする。


「一人で行けって、王様に言われたの?その人、コカトリスがどんなに凶暴か知ってるの? 」


モーリスさんが答えた。


「いや、父だ。父に、息子として、母親の罪の尻拭いをするのに、他人を巻き込んではいけないと言われたんだ。その通りだろう。彼奴は俺の手で葬り去らなければならない。」


いやあ、一人の手じゃ無理だと思うけど。


私は小さな声で抗議した。


「お家の名誉を回復するためなら、お家の方に手伝っていただいてもいいんじゃないですかね。」


「ハイランド家の罪ではない!母の罪なのだ!民の脅威にしかならない、あの忌まわしい魔物をなぜ創ったと思う!?

自らの魔力を誇示するためだぞ!まさに魔女の名に相応しい女だ!」


テーブルを叩く力があったら、そうしてたろうって勢いで怒るモーリスさんを見てふと、思った。


あれ?日記をざっと読んだだけの私でも、その話は変だと思うよ?


首を傾げる私より先に、モモが爆弾を落とした。


「でも、コカトリスを作れって命じたの、モーリスのお父さんだよね。」


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