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モーリスさんが険しい目でモモを睨む。


「なぜ、そのことを知っている!」


魔女先生って、モモがこの家の先住人を呼ぶ時の名前だ。


モーリスさんの視線を全く気にすることなく、モモが返事をする。


「私、魔女先生の日記、何度も読み返してるもの。たくさん出てくるよ。モーリス、モーリスって。」


そういえば先住人の日記をモモはよく読んでいる。私は魔法に興味がないので、ざっと目を通したことがあるくらい。日記が結構暗くて気分が落ち込むので、何度も読む気が起きなかったのだ。


息子の名前忘れてた。


モーリスさんは呟くように、


「・・・そうか、そんなものがあるのか。」


と、いうと顔を上げて私たちを見つめた。


「で、この家に住んでいた魔女はどうした?」


モモはちょっと膨れて、


「やあねぇ。お母さんでしょう?」


と返事をする。モモにとっては母親は絶対なのだ。


この質問には、私が答えたほうがよいだろう。


「残念ながら、私がこの家にたどり着いた時には、お母様はすでにお亡くなりになってました。モモが来るずっと前のことです。ご遺体はこの家の裏に埋葬してあります。」


モモが付け加える。


「私のママの隣よ。」


どちらも獣に荒らされないよう、私が苦労して深い穴を掘らせていただいた。まあ、そんなことはどうでもよいが。


その覚悟は有ったようだ。モーリスさんは、私に、


「なぜ死んだんだ?」


とだけ聞いてきた。


「わかりません。でもお亡くなりになったのはベッドの上でしたし、特に苦しんだような様子もありませんでした。」


私も簡単な事実だけを伝える。すでに白骨化していた、なんてことは、知る必要のないことだ。


「そうか。」


モーリスさんは俯いたまま、考え込んでいる。


「私は事情があってこの森に流れ着いたんですが、お母様を埋葬した後、そのままこの家を使わせていただいていました。申し訳ございません。最初は誰か訪ねてくるのかと思っておりましたが、特に何のお問い合わせもなかったので。


その後数年して、モモが母親に連れられてこの家にやってきました。残念ながら、モモの母親は到着と同時に亡くなってしまい、私がモモを預かって育ててきました。」


モーリスさんの顔色は相変わらず冴えない。


「そうか。いや、家を使うのは別に構わない。確かにこの家はハイランド家が建てたものだが、とっくに忘れ去られてる。今更誰も気にしないさ。」


じゃあ、遠慮なく。


「この家に来たことがあるようなこと、おっしゃっていたような気がしますけれど。」


「ああ、幼い時に。魔女がこの家に移って来た時、俺もしばらく一緒に滞在したんだ。すぐに魔女に追い出されたがね。」


モモが苛立つ。


「お・か・あ・さ・ん。何で魔女先生のことお母さんて呼ばないのよ。」


モーリスさんが、残った片目で、モモをギロっと睨んだ。


「アイツはハイランド家の恥だ。アイツのせいで、ハイランド家は何度も辛酸を舐めてきたんだぞ。今回だって・・・」


モモは全くめげていない。モモに階級制度のこと説明するの忘れてたからなぁ。丁寧な言葉遣いは期待できないけれど、せめて怒らせるのはやめてほしいのだが。


「何よ!魔女先生が何やったっていうのよ。あっ。コカトリス?コカトリスをつくっちゃったから?」


すでに白かったモーリスさんの顔が青くなった。


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