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お迎えが来るまで  作者: 大島周防
吸血王子
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22 エピローグ:侍女テレサの独白

落とし戸でおまるを開けていたジョージの姿がいきなり見えなくなった。


「何?」


下を向いて浴槽を洗っていたけれど、気配で顔を上げた。落とし戸からどんどん人が上がってくる。やだわ。ゴキブリみたい。それともネズミかしら。


「寝室付きの浴室だわ。この隣の部屋にあの女はいるはずよ!」


その声でゴキブリ共の狙いがわかった。


そのまま次から次へと浴室になだれ込んでくる汚い奴ら。醜くて、薄汚くて、穢らわしい者達。汚物を被っているくせに奥様に近寄ろうなんて!あの美しい奥様に!


奥様を守らなきゃ!こんな奴らに指一本触れさせない!


立ち上がろうとした。けれど、誰かに押さえつけられてしまった。動きが取れない。


奴らが奥様の寝室に走り込んで行く。手に持っているのは、刀だろうか?いや、何かの道具だ。あんなもので奥様を汚されてたまるものか!


「触るなぁ!」


寝室から奥様の声がした。


男達の声で、


「この化け物め!殺すに時間をかけられないのが忌々しいわ!」


「さっさと地獄に落ちろ!」


「娘の仇だ!思い知れ!」


ああ、奥様!


「・・・あんな者達、私のために死ねるのを光栄に・・・」


奥様の声が途切れた。


しばらくして、男達が寝室から出てきた。男達が引きずっているのは、首のない死体だ。


そんなはずはない。あれは奥様じゃない。奥様は永遠だ!


指揮を取っているらしい男が、入ってきた男に声をかけた。


「先生、領主は?」


先生と呼ばれた人が首を横に振る。


「ダメだ。もう随分前から意識がなかったんじゃないかな。責任能力はないよ。」


「じゃあ、今夜起きた事は・・・」


「大丈夫。何も認識できていないだろう。下男と侍女と奥方を片付ければ、何が起きたか誰にもわからんさ。」


ほっと息をついた男が、


「下男は処理済みだ。じゃあ、あとは片付けだけだな。女将、なんの痕跡も残さず、綺麗に仕上げてくれ。」


そういわれて、恰幅の良い女が、微笑んだ。


「任せておくれ。血の一滴も残しゃあしないよ。」


先生が、年配の男に、


「村長、口入屋はどうする?」


と、尋ねた。


村長が短く


「吊るす。」


と、答える。


私を押さえつけていた男が、私の頭上で返事をした。


「村長、それは俺にやらせてください。俺、俺にはメグを探せないから。どれがメグなのか、俺にはわからないから・・・」


頭上の男がそう言うと、先生が、


「大丈夫。皆、一体、一体、丁寧に運び出して埋葬するからな。すぐには下水には探索の手は回らんだろうから、時間をかけて、娘達は全員連れて帰ろうな。」


と、囁いた。


女将と呼ばれた女が寝室から出てきた。手には、シーツに包まれた荷物を持っている。


「皆の気持ちが少し落ち着いたようだから、これ、下に持っていってちょうだい。」


シーツの隙間から奥様の美しい黒い髪がのぞいていた。


「うわあ!!」


私が叫ぶ。


ドコン!こめかみを殴られて、目から火が出た。


「こいつは?」


頭上で声がする。それに答えて、女将が、


「この首を抱かせてやりゃあいいのよ。愛しい、美しい奥様が日に日に腐っていくのをじっくり見てもらいましょうや。」


と嘲笑った。


また殴られた。


+ + +


起きたら、箱の中だった。立ち上がるだけの高さもないただの箱だ。箱の上にいくつか穴があって、そこから光が漏れている。私は自分が抱えているものをその光でようやく見極めることができた。


バカな奴らだ。奥様が醜くなったりするはずはないんだ。大丈夫。私がお世話いたしますからね。


私の腕の中の奥様は、嬉しそうに微笑んでる。


第3章、終了いたしました。この真っ暗なお話をお読みいただきありがとうございます。また、誤字報告いただけたこと大変感謝しております。速やかに訂正させていただきました。


ようやく、一番書きたかった第4章に立ち向かえることになりました。どこに向かっているんだよ!この話と、お思いの皆様、作者がハッピーエンドを目指していることだけお伝えしたいと思っております。


第4章の構想に、ちょっとお時間をいただくことになるやもしれませんが、大丈夫。こうなったらもう、意地でも終わらせます。作者の毒に辟易されていらっしゃるかもしれませんが、よろしければ感想お聞かせください。よろしくお願いいたします。

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