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お迎えが来るまで  作者: 大島周防
吸血王子
42/92

6

あれから3ヶ月ばかり。意気込んでた割には、アグネスさんからの連絡はなかった。案外冷たいねぇ、などと考えながら、日々変わらぬ生活を送っている。


ヴァンは、日光アレルギーで、光に当たると全身水ぶくれになるという言い訳を思いついたので、それでなんとか夜行性をごまかしている。


宿の女将さんが、


「道理で色白だと思ったよ。12歳という割には体もちっちゃいしねぇ。病弱だと大変だね。」


と、同情してくれた。確かにヴァンはそこらの(400)12歳より体が一回りもふた回りも小さい。これについては、生まれつき喘息で体が弱かったとヴァンが言っていた。吸血鬼になって喘息の心配はないようだが。


女将さんは、ヴァンの食が細いのも気にしてくれた。子供なんだから、お菓子ぐらいは食べるだろう、と、時々、クッキーやビスケットを持たせてくれた。これは血を増やすために、私がありがたくいただいた。


この人の良い女将さんの周りには、いつも近所の人たちが集まってくる。おまけにこの宿屋は街道筋で、行商人や近隣の村人が気軽に泊まれる値段なので、繁盛している。ヴァンも結構この賑やかさを気に入っているのか、最近は、泊まり客や近所の人たちの間をひらひらと飛び回って、愛想を振りまいている。


ヴァンは、女将さんをはじめとして、皆にいいペット扱いされている。見た目は本当に可愛いし、皆がヴァンとのおしゃべりを楽しんでいるんだから、まあよいか、と、思っていた。


+ + +


ギー、カタン。


小さな音を立てて、ドアが開いた。これで3夜続けて明け方近くにヴァンが外から戻ってきたことになる。私は、ベッドの上で上半身を起こし、ヴァンの動きを見つめる。


足音を忍ばせて部屋に入ってきた積もりだろうが、バッチリ私と目があった。


ヴァンが、


「えへへ・・・」


っと、愛想笑いをしている。


そんなもんじゃあごまかされないよ!


ヴァンは夜目が利く。私のしかめっ面に気がついたのだろう。ベッドの側まで寄ると、端っこに腰掛けて、私の方を上目遣いに見る。そして2、3度目をパチパチした。


私は両手を伸ばして、ヴァンの両頬をそれぞれ掴み、横にビローンと引っ張ってやった。


「私で魅了の練習するんじゃないよ!」


そのままぎゅっと頰を両手で押して、グリグリし、ヴァンをおちょぼ口にしてやった。


「あてて・・・」


ヴァンが呻いている。


「で?何やってたの?日の出も近いんだから、ぐずぐずしてる時間はないよ。正直にお言い!」


ヴァンが時間を気にして、早口になる。


「飲み屋で聞き込み。」


「何の?」


「先輩の。」


「行方を探してたのかい?」


「うん。追われてるんじゃないかと思って。」


「誰に?」


「行方不明の娘たちの親とか。」


「なんで?」


「犯人だって、疑われてるって。」


「誰が言ってたの?」


「宿の行商人さんたち。まだ女の子たちの行方がわからないって。それどころか消息のわからない子が増えてるから、どうしても先輩を捕まえなきゃって。」


ここで、ヴァンが大きなあくびをした。うん、時間切れだ。


「あんたが酒場に行ったって、ろくすっぽ話も聞けないだろう。それどころか追い出されるのが関の山だよ。」


「うん、酒場の中には入れてもらえないから、帰る男の人たちの跡をつけて、話を拾ったりしてる。」


「ったく、まどろっこしいことを。とにかく今はお休み。その辺の噂、聞いといてあげるから。」


私はヴァンを木箱に押し込むと、確実な情報源である女将さんに話を聞きにいくことにした。



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