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まずは、結っていた髪をほどき、手でぐしゃぐしゃにかき回す。そのままの勢いで、ドアを開け放った。腹の底から大声をあげる。


「私の眠りを遮るのは、何者だ!!」


家の中に誰かがいるとは思いもよらなかったのだろう、皆、凍りついたように動かない。


最初に我に返った男性が、モーリスさんの父親に声を掛ける。兵士ではないようだし、王都からの監視役さんかな。


「ハイランド卿、この女性が貴方の・・・前の奥方ですか?」


目を丸くして驚いている父親が、


「・・・いや、あの、違う。」


そうだよねぇ、全然知らない人が出てきちゃったものねぇ。私は、モーリスさんの父親をハッタと睨みながら喚く。


「おや、珍しい客が来たもんだね。ハイランド!何をしに来た!」


いけない、名前聞くの忘れてたよ。


監視役さんが、モーリスさんの父親を問い詰める。


「このご婦人のこと、ご存知なのですか?誰ですか?」


形勢不利と見たのか、父親は、慌てて、


「いや!知らん!」


と、返事をしていた。でも私は、ニッと笑いながら、知っている振りをやめない。


「おや、ツレないねぇ。とんとお見限りかと思ったら、いきなりこんな大勢で押しかけるとはねぇ。今日は一体はどんな用なんだい?」


と、父親に聞くと、彼はなお一層動揺して、私を睨みつけた。


「誰だ、お前は!?お前のことなど知らんぞ!」


私は、再度お腹に力を入れた。


「我が名はモルガーナ!この森を支配する魔女だ!お前の呼び出しに答えてきてやったというのに、 なんのつもりだ!」


ああ、こっぱずかしい。モルガーナって誰だよ。あっ、昔読んだ魔女物語の主人公だよ。やだねぇ。


父親がさらに狼狽えた。


「し、知らんぞ?こんなやつ!皆の者!此奴を成敗しろ!」


今度は監視役さんが声を荒げた。


「ちょっと待て。国王は、厳正なる調査をご希望だ。魔女からコカトリスがなんの目的で、誰が作らせたのか、それを聞き出すまで、手出しすることは、まかりならん!」


そういうと、監視役さんは私に話しかけた。


「モルガーナ!コカトリスを作ったのはお前なのか?なぜコカトリスを作ったんだ?」


「なぜ?そんなことは知らないよ。この森に匿うから作れと言われたのさ。」


「誰に?」


「そこの男さ。」


私は顎をしゃくってモーリスさんの父親の方を示した。


父親は、半狂乱で、


「知らん!」


と叫んだ。私は更にニンマリして、


「私の愛しい子は、森の魔を食い殺し、着実に育っているよ。すぐにあんたの希望通りの大きさになるさ。」


と、宣言した。


ここまで、ずっと黙っていたモーリスさんが、初めて声を上げた。


「コカトリスはもういない。俺が殺した。」


私は声を上げて笑った。


「お前なんぞに、私のコカトリスが殺れるものか!」


モーリスさんが再び口を開く。


「嘘ではない。コカトリスを最近見かけたか?」


余裕無くした振りってどうすればいいんだろう。うーん。冷笑することにした。


「ほう、コカトリスを殺したというのなら、その証拠を見せてみろ!コカトリスの魔石の色は何色だ!?」


モーリスさんが冷静に答える。


「紫。」


途端に私がヒステリックに叫び出す!


「私の!私の愛しい子!」


ちょっと、モモ、ここで事を起こして欲しいんだけど。いつまでこの臭い芝居続けなきゃならないのよ。


内心焦っていたら、父親が


「そうだ!私が息子に命じたのだ!コカトリスは征伐されたぞ!」


と、踏ん反り返った。私はなるべく低い声で、


「なんだと?お前が私の可愛いコカトリスを・・・お前が国の脅威になる力を得たいと望んだからこそ何年もかけて育ててきたというのに・・・愚か者め!」


兵士を含む皆の疑惑の視線がモーリスさんの父親に向かったのを確認すると、私は両手を高く空中に掲げた。


「おのれ!この恨み・・・」


手のひらを上に両手をゆっくり下げる。


ボッ。


両手の上に青白い炎が灯る。


あっち!モモったらもうちょっと火を離してほしいわ。


我慢しながら、その両手を一気に前に出す。


ドン!ドン!ドン!


火柱が上がる。


「「うわっ!」」


兵士たちの間から悲鳴が上がった。


ひときわ高い悲鳴を上げたのはモーリスさんの父親だ。父親の目の前に、格別に大きな火柱が立っている。モモったら、今のはちょっと近すぎるよ!


火柱の間をくぐり抜けて、モーリスさんが私の懐に飛び込んでくる。


ドスッ。


モーリスさんの刀が私の胸を一撃した。


「ありがとう。」


耳もとでモーリスさんの囁き声が聞こえる。崩折れながらも、火柱が消えたのが見えた。


監視人さんの、


「ハイランド卿を捕縛しろ!」


という声とともに、私の意識は無くなった。


フッ、真っ暗。


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