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目を覚ました時は、ベッドの上、おなじみの家の中だった。


あれ?モモがモーリスさんの腕の中にいる?


モーリスさんの手は、しっかりモモの背中に回っている。俯いたモーリスさんの顔が仰ぎ見るモモの顔と重なっている。


チュッ


「ン・・・ハァ・・・」


お前たち、私が死んでる間に何してるんだい!


飛び起きた。


気配に気が着いてモモが振り返る。だが、モーリスさんの腕の中から出てくる気は無いようだ。


「起きた?」


モーリスさんときたら、モモの首筋に頭を埋めてる。恥じらいってものを持ってほしいんだが。


「・・・なかなか刺激的な目覚まし、ありがとうございます。あれからどうなったんです?」


顔面いっぱい笑顔を浮かべたモーリスさんが、顔を上げた。


「モモに結婚を申し込んだ。受けてくれたぞ。」


そんなことを聞いているんじゃなーい!


「おめでとうございます。ですが、コカトリスはどうなったんですか?」


ああ、と言う顔で、モーリスさんが返事をする。


「ドロレス殿を踏んだ後、倒れて死んだ。腹を裂いて魔石を取り出して、あとはモモが焼き捨てたぞ。」


テーブルの上には、両手に余る大きさの、限りなく黒に近い紫の魔石がちょこんと乗っていた。


モーリスさんが嬉しそうに報告する。


「この魔石を国王に証拠として提出して、ハイランドの領主の資格があることを証明してくる。まあ、別に領主にならなくてもいいんだ。騎士として独立してもいい。ちゃんと結婚して家を持てればモモも俺もなんでも構わんのだ。とにかく善は急げだ。明日にでも王都に向けて出発するぞ。」


モモが貴族ねぇ。いささか手遅れとはいえ、どうにかしないとまずい。


+ + +


翌日早朝、モーリスさんが何度も後ろを振り返りながら、王都へ旅立った。モモと二人で見送った後、さんざ働かせられて、何度も死んだお返しに、ちょっとモモをからかうことにした。


「一番最初に会った男性に決めちゃうの?もうちょっと色々見たほうがよくない?」


モモが不機嫌になった。可愛い。


「なんでよ。色々見たって、良いものは良い。もう決めちゃった。」


そうかい。


「でもねぇ、相手は辺境伯になろうかって人だよ?釣り合いとれないって、皆に反対されて戻ってこないってこともちゃんと考えないとね。」


モモは全く心配していないようだ。


「大丈夫戻ってくるよ。」


モモは首から下げている指輪を私に見せた。


「魔女先生の指輪。モーリスから預かった。」


ああ、モーリスさんが首から下げてたやつね。まあ、私もモーリスさんが戻ってこないとは本気で思っていないんだけど。


「だとしたら、未来の辺境伯夫人だね。今日から話し方の練習!それと、そのつんつるてんの服もどうにかしようね。」


モモが私を睨む。


「モーリスは、今のままでいいって言ってくれたよ。」


「いつそんな話したの?」


「ドロレスが起き上がるまで時間つぶしにいろんな話した。」


あんたらほんと私が死んでる間、何してたのよ。


「そのまんまってことはないでしょう?現にあんた前髪のピンを外して、髪の毛を丁寧にくしけずってるじゃないか。その調子でがんばろうね?」


嫁入り前の娘には色々やることがある。二人でバタバタしていたら、あっと言うまに時間が経った。


+ + +


モーリスさんは、ちゃんと戻ってきた。それも夜中に。揺さぶられて目を開けると、目の前にモーリスさんがいたのだ。だが最初に発せられた言葉は、


「逃げるぞ。」


だった。


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