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第1回目の試みでは、私は瞬殺された。コカトリスを挑発した距離が近すぎた。コカトリスは鶏と同じで飛ばないけれど、跳躍できるということを計算に入れていなかった。


這いつくばって、ジリジリとコカトリスににじり寄る。


「ワー!」


と、声を上げ、コカトリスの注意がこっちに来た確信を得たので、振り向いて走り出した。と、思ったら、次の瞬間には踏まれていた。


ドン、と来た瞬間に真っ暗になった。


第2回目も似たようなもの。今度はかなり距離をとったのだが、何せこの亀の出来損ないみたいな格好では速さが出ない。にじり寄る段階で、何度かコカトリスに撃たれた光線をはじき返してくれたので、役にはたっているのだが。モモたちの待ち構える地点までたどり着けなかった。


ドン、真っ暗。


生き返る時間も考慮して、1日2回が限度だった。夜、家に戻ると、モーリスさんが、


「本当に死なないんだなあ。」


と、感嘆していた。そうじゃなかったらどうするつもりだったんだ?死んでいる私に、少しは罪悪感を感じてほしいものだ。まあ、即死だから痛みがない分ましだけれど。


モモは、


「死なないから、やっぱり必死さに欠けてるよ。」


と、私の反省を促した。口利いてやらないことにした。


2日目。


第3回目:モモの待つ木まであと数メートルで踏まれた。まだタイミングが早すぎるのだろうか。


第4回目:今までの反省を元に、コカトリスに声をかけたら、反応を待つことなく、すぐに走り出すことにした。追いかけてこなければ、やり直せばいい。


何度か一人で走り出すという恥ずかしい失敗を繰り返したが、最終的に、かなりの距離追いかけさせるのに成功した。おまけに踏まれずに、嘴で叩かれた!やったぞ!


だが、方向がちょっとずれて、モモとモーリスさんの間に誘導できなかった。


その夜の反省会で、二人にいたく褒められた。


3日目。


第5回目:結構上手になってきたような気がするぞ。攻撃地点まで誘導することができた!が、コカトリスに走り抜けられた。攻撃地点を通りすぎて、踏まれた。


嘴攻撃と踏まれる確率は、半々か。


第6回目:いいタイミングで攻撃地点まで、誘導に成功。しかし、モーリスさんの声がした。


「モモ!ダメだ!遠すぎる」


攻撃は起きなかった。


反省会で、モーリスさんに、


「体重をかけて一気に首を落とさねばならん。飛び降りるその真下にコカトリスがいる、ぐらいのタイミングが必要なんだ。もう少し俺寄りに誘導してくれるとありがたい。」


と、お願いされた。言うは易しだよね。


4日目。


第7回目:いやはや、コカトリスも飽きないよね。鶏頭だから仕方ないのか。毎回本当に素直に追いかけてきてくれる。よっぽど自分のテリトリーが大切らしい。場所的にはうまく誘導できたと思うのだが、今回は嘴攻撃ではなかったので、頭を下げてくれなかった。そのまま踏まれた。


第8回目:緊張感が無くなってきた。なんども同じことを繰り返すのはちょっと苦痛、などと考えていたら、攻撃地点を走り抜けたとたん、足を取られて転んだ。


それが幸いしたのだろうか、コカトリスがヌッと首を伸ばして私を啄もうとした。コカトリスの嘴が私に迫ってくる。


瞬間、熱気を感じた。ふり仰ぐと、コカトリスの首の周りに黄色い炎の帯が巻きついている。その帯をめがけて、モーリスさんが枝から飛び降りざま剣を振り下ろす。全てをかけた一振りが、炎とぶつかる。


ギァー!


スタッと着地したモーリスさんの横に、ドウッと音を立ててコカトリスの首が落ちてきた。


ああ、やったぞ。ついに!もう走り回らなくていいんだ!


コカトリスが頭のない首を振り回す。首から出てくる血しぶきを浴びたが、私は盾の下で安堵の息を吐いていた。次の瞬間、


ドッ、ドッ、ドッ!


モーリスさんが、飛びのく。その後ろからコカトリスの胴体がこっちに向かって走って来た。


ドウッ!


ドン、真っ暗。


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