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まあ、うまく行かなくても、私が死ねばいいだけだし。モモが、
「とりあえず、気軽に試してみてよ。」
と言うので、作戦に同意した・・・そして後悔した。
まず、盾を上下逆さまにして背負わされた。モモは、
「こうすれば、走る時に邪魔にならないし、このとんがったところが、コカトリスの光線から頭を守ってくれるからね。」
と、説明してくれた。確かにコカトリスの目から出てくるのは光なので、盾が弾いてくれる。でも重いし、背中をまっすぐにしたままなので、走りやすいとはとても言えない。ため息が出る。
「私たちは、この木と、その反対側のちょっと見通しのいいところの木の上にそれぞれ分かれて隠れているから、ドロレスは、コカトリスがここに現れたら、ここから挑発して・・・」
モモが地面に小枝で図を書きながら説明してくれる。
「コカトリスが追っかけてきたら、こっちに向かって走る、と。で、この辺りで突っつかれたところを、私がまず火炎砲を撃つから、モーリスが剣を振りかざしながら木から飛び降りて、その勢いで首を落とす!そんな感じかな。」
大雑把だ。
モーリスさんが、顔を顰める。
「前代未聞の戦略図だな。こんな杜撰なのは見たことがないぞ。タイミング的にうまくいくとは到底思えんな。」
ですよね。
「うまく行かなくても別にいいよ。ドロレスは死なないし、私もちょっと離れたところから火炎を撃つから大丈夫。モーリスは絶対成功するというタイミングまで、飛び降りなきゃいいんだよ。」
モーリスさんは、モモのことを心配しているらしい。
「かなり離れたところからでも火炎は撃てるのか?」
「撃てるよ。でもあんまり離れすぎて火炎が届くまでにコカトリスに気取られるとまずいから、すごく離れるのも無し。やっぱり挟み撃ちぐらいの感覚でいこう!」
モーリスさんが異議を唱える。
「いや、待て。全くどこから突っ込んだらいいのかわからんぞ。火炎が外れたらどうするつもりだ?もしくはコカトリスがそっちに向かったらどうするんだ?」
「外さないよ。もしこっちに向かってきても、全身火だるまにするぐらいの炎は出せる。コカトリスを殺すことはできないけど、逃げるぐらいはできると思うよ。
コカトリスを攻撃するときは、全身火だるまにはしないよ。飛び込んでくるモーリスも焼けちゃうから、首の部分だけを狙うけれど、剣が当たりやすいように、ある程度の幅は持たせるよ。」
「どれぐらいの大きさの炎を放つつもりだ?」
「2メートル幅ってとこ?」
なぜ疑問形なんだろう。
「うーん。」
モーリスさんが唸る。
「あと、コカトリスも火はあんまり好きじゃないから、炎の壁を作って私の方には向かってこないってこともできるかな。問題はモーリスだよね。飛び降りるとき剣を外したら、急いで逃げないと。少なくとも4、5メートルの高さから飛び降りるんだけど、大丈夫なの?逃げられる?足くじいて走れなかったりしない?」
モーリスさんがニヤッとする。
「外さん。大丈夫だ。逃げなきゃいけないハメには陥らん。」
あああ、了解しちゃってるよ。
モモが締めくくった。
「じゃあ、後はタイミングだね。テスト本番でいこう!」