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42.収納箱と、ひとつのエピローグ

 お別れの日。


 今日は、門まで3人を見送りに来ました。



 昨日まで、ラブロとタタールをもふもふさせてもらったり、獣魔士としての心得や諸注意を教えてもらったり、ヘルダラタックの中のおすすめのお店や、逆に注意しておくべき場所などを教えてもらったり、


 いろんな事をして、一緒にいたけれど、ついにお別れです。


「ゔ~。やっぱり行きたくないー」


「残るか、ラナ」


「それもダメー」


 ラナさんが、一番駄々をこねています。

 私に抱きついて離れません。



 ラナさん、本当に今まで一度もお友達が出来たことがなかったらしいです!

 こんなに素敵な人が何故!? と驚愕していたら、「高嶺の花に見えるらしく、なかなか話しかける人間が少ない」とか。


「ラナの胸を見て、話しかける下衆はいるのにな」

「変なの思い出させないで。あれは勘定に入らない」


 呆れた様子のロニーさんに、ムッとした顔のラナさん。


「お友達になれそうな人って、なんで来ないのかしら……」


 そう言って私をだっこする、このしょんぼりした表情からは、考えもつかない話。だけれど、初めて会ったときの、クール美女であれば、確かに近寄りがたいかもしれないなぁ。


 私が友達になれたのはたぶん、私のステータスに驚いたことで、クールな仮面が剥がれたからだと思います。


「本当は、ラナさんとお友達になりたい人、たくさんいると思いますよ」


 笑いかけると、複雑な顔をされてしまいました。


 あ、そうか、ラナさん半妖精族っていう、珍しい種族だから、つい警戒して壁を作っちゃうタイプっていうパターンもあるかも。

 そしたら、確かに信用ある神様の祝福持ちじゃないと、難しいのかな……。


「どちらにしても、ラナさんの一番の友達は私ですから」


「モモカちゃん……!」


 にっこり話しかけると、再び抱きつき……

 わああっ!

 いや、今日は金属鎧だから硬い! いた、いたたたたた


「ラナ、モモカちゃんが怪我するぞ」


「はっ! ごめんなさいっ」


「あはは。大丈夫~」


 慌てて離れるラナさんは、本当に可愛いな。この数日間そうだったけど。




 解雇通告された日の翌日は、けっこう警戒されていたと思います。

 だから、そういう趣味はないって、そう伝えて。


 私はただ単に、綺麗なもの、可愛いものが好きで、オラヴィさんは観賞用としてお気に入りで。

 ラナさんのことはお友達として、大好きなだけなのだとわかってから、めちゃめちゃ甘甘になりました。


 人目を憚らずに、手を繋いだり、抱き締めたり。

 あーんもされたし、ナデナデもされたし。


 これからのラナさんが心配です。



 普段のラナさんは、カッコよく美しい女神さまだから、ソッチの気のある女の子だったら、勘違いするんじゃないかな?


 ラナさんにも、そういう趣味はないらしいのに。

 ……無いんだよね?



 そういえば、ラナさんを知ってそうな冒険者さんたちが、よく固まっていたけれど……。

 それってもしかして、普段のラナさんとはあまりにも違うから? なのかな?


 これから旅に出たら、そんな、以前の『ラナさん』に戻っちゃうのかな。


 そう思うと、しばらく好きなようにさせてあげた方がいいかと思ってしまいます。



 そう、思っていると。



「ホラ、いい加減行くぞ」


「あうう……またね、モモカちゃん」


 出発の期限が来てしまったようです。


「はい。皆さん、気をつけて。怪我しないでくださいね」


「ええ、気を付けるわ」

「ありがとな、モモカちゃん」

「……じゃあな」


 さんざん、それまで長引かせていたせいか、最後にはあっさり行ってしまいました。


 すこし遠くなったあたりで鳴いてくれた、ラブロの声が、耳に残ります。





「はぁ……これからは、一人かぁ」


 アンニュイな気分、ってこういう感じなのかな。

 見送ったその場所で浸っていると。


『私もいますが?』

「キュイ?」


 呟いた言葉に、ソフィアとダイフクちゃんが返してきます。

 特に、ダイフクちゃんは、首をかしげて、疑わしげ。


「あはは、そうだった」


『第一明日から、グフルンテン商店のヘルダラタック支部で、倉庫係のお仕事ですよね? また、この世界の知り合いが増えますよ』


 そう。

 紹介されたのは、デリックさんが勤める大商会、グフルンテン商店のヘルダラタック支部でした。


 大容量の収納箱(中)と見るや、支店の倉庫係に任命。嵩張る荷物を、ヘルダラタックの街の端にある倉庫から、支店や配達先に運ぶ係です。

 通貨協会との硬貨の運搬も、会計係さんに付いていく私の仕事になるので、責任重大ですよ!


 いつ、ロニーさんたちが帰ってくるかはわからないので、街からは出ず、街中を駆け回ることになりそうです。


「うふふ、楽しそう」


 もちろん、私はうっかりさんなので、荷物管理はソフィア任せですけれどね。


『はい、お任せください』


 今日も私の最強(チート能力)さんは、頼りになります!



 ひとつ、伸びをして、街の中に駆け込みました。


 門番さんも、なんだかニコニコしています。





 さて、明日はどんなものに、出会えるのでしょうか。


 美しい街の様子を見上げて、雑踏の中に紛れ込みました。

お読みいただき、ありがとうございました。


これで、一旦、モモカのお話は、完結とさせていただきます。


予定としては、第一章ぶんのみ、になりますので、謎はたくさん残ったままになっていますが……。

いちおう、きちんと区切りはできたかと、思っております……え? できてない? すみません(汗)

(ふむ? ロニーたちの依頼? 罠の調査ですよ。言うと心配されるのでモモカにはナイショ。この謎が気になって眠れない! というかたは、メッセをくだされば、ちょこっとだけお教えします♪)


いつか続きが書けたらと思います。


けれども、モモカはずっと元気に過ごしていきますので! ご心配なく!


更新にかなりの間が空いたりしたにも関わらず、たくさんの方に待って読んでいただき、なんという幸運だったのだろうと、感謝しています。

本当にありがとうございました。


また、誤字脱字等々、ご指摘いただいたかたも、ありがとうございました! すごく、助かりました。


また、いつか、この作品でも、別の作品でも、出会えればと思います。



全ての出会いに、感謝を込めて。


   もけふにゃ子

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― 新着の感想 ―
[一言] 大変楽しく読ませていただきました。 この優しい世界が大好きになりました……ところで終わってしまったので、少々物足りなさも感じましたが。 何はともあれ、完結までお疲れ様でした。 そしてありがと…
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