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41. 旅とこれから

「お話があるんだ。モモカちゃん」


 一通り堪能したあと、改まってロニーさんが言います。

 真剣な表情。

 フォークを置いて聞く姿勢になりました。


「ここまで、一緒に回ってもらって、仕事ぶりや、立ち回りに何の問題もないことはわかった」


 ……。



 あ。



 そうか、このヘルダラタックから旅をはじめて、一緒に回って。

 戻ってきた。


 一仕事終わった。


 総括……と、継続するかしないかのお話、だよね。



 会社の面接を思い出す。

 お仕事が続けられるかどうかの瀬戸際だ。



「問題ない、どころか、恩ができた。ラブロはポーションじゃ間に合わないほどの傷だった。あのままじゃ片足を失うところだったんだ」


「えっ」


 ラブロの怪我、そんなにひどかったの!?


「それがあの通り、毒の影響も残ってない。本当にありがたい。感謝してもし足りないよ」



 そう言って頭を下げてくれるロニーさん。

 オラヴィさんは、この話が始まってすぐから、頭が下がっている。


 ワタワタしながら、頭を上げてくれるように頼んだけれど、次のロニーさんの言葉で止まってしまう。



「けれど、ごめん。俺たちとの旅はここまでだ」



「……え?」



 え? ここまで?


 ここまで……って、どういうこと?



「どうして……ですか?」


 涙が、頬を伝う。


「子供だからですか」


「モモカちゃん、15歳だって聞いたよ」


「体、小さいですし」


「収納箱としては、小さいのは有利だよ」


「やっぱり、こんな治癒持ちじゃ、目立つからですか」


「いや、関係ない」


「お役にたちませんでしたか」


「立ちすぎるほどだよ。これからの旅がちょっと憂鬱になりそうなぐらい」


「じゃあ、どうして」


 どうして?

 この旅は、すごく楽しかった。美味しいもの食べて、きれいな景色を見て。危険がなかった訳じゃないけど、一緒に笑いあって、仲良くなれたと思っていた。


 それなのに、なぜ?



 ダイフクちゃんが、おちつけ、というように、手を柔らかく叩いてくる。


 ぽろぽろと落ちる涙をそのままに、ロニーさんの言葉を待つ。




「俺たちに、冒険者協会からの、指名依頼が入った。しばらく、『商人』を休業しなきゃならない」



 ……。


 あ、そういうこと……!




「俺たちとしても、このまま一緒に旅をしたいところなんだが……」


「いえ、ごめんなさい。それじゃあ、仕方ないですね」


 顔が熱い。

 そういうことか!

『商人』についていく仕事なのに、そのお仕事がしばらく休業しなきゃならないのなら、解雇せざるを得ない。

 うん、仕方ないね。


「調査依頼だけど、冒険者協会に登録していない人の同行が不可だったの」


 というラナさんに対して、「そうでなくても、危険がないとは言えないから、連れていけないよ……」とロニーさんがため息をつく。



「冒険者での依頼が終わって、また仲買を開始したら、できればまた雇いたい。それまでの仕事の斡旋もするよ。それで……許してもらえないだろうか」


「はい、いいですよ」


 私は二つ返事で承けた。

 仕方のない事情があって、その上でまた雇いたいと言ってもらえて、さらに中継ぎの仕事の斡旋もしてもらえるというなら、受けないわけがない。


「え、いいの?」


「はい、この町で、みなさんの仕事が終わるのを、待っていればいいんですよね?」


 言うなれば、従業員資格を持ったままの、一時転職! なんて贅沢な。


 そう思って、口に出したら、横から衝撃が。


「ふえ!? ラナさん!?」


「うん、うん! すぐ終わらせて、帰ってくるからねぇ~!」


 その顔はグシャグシャで、最初に会ったときの、クールな美女のイメージは全く残っていなかった。


 しかも、ぎゅうぎゅうに締め付けてくる。


「苦しいですよ、ラナさん……ちゃんと待ってますから」


 すごく苦しいけれど、離れたくなかったので、こちらからも抱き締め返した。

 すると、声を出して泣き出した。


 ラナさんが、声を出して泣くなんて、初めてだし、すごく戸惑った。


 オロオロしていたら、ホッとした笑顔のロニーさんと目があった。


 えーと、大丈夫なのかな?


 その隣の、オラヴィさんに目をやった。



 ……びびった。


 オラヴィさんも、泣いていた。

 いつからか顔をあげていたらしい、オラヴィさんは、俯いて無表情のまま、涙を流していた。


 その様子がなんというか……


 絵画か。


 って感じで、あまりにも綺麗で、スッゴいびびった。



 そんな感じで固まっていたら、腕の中から恨みがましい声が響いた。


「ゔゔ……いくらオラヴィのことが好きだからって、こっちは泣いてるのに~」


「ふえ!?」


 頬をふくらます、ラナさんの言葉にもビビる。


 へ? 聞き間違い?


「モモカちゃん、オラヴィのこと好きでしょ」


「いいえ?」


 首を振る。あ、いや、師匠としては素晴らしいですけど。


「あ、綺麗な人は好きですけど」


『モモカ、声に出すべき台詞と逆になってます』


 首をかしげる。


 きょとんとしたラナさん。

 ええと、ええと。


「どっちかと言えば、ラナさんの方が好きです」


「え、モモカちゃんって、ソッチなの?」


「恋愛の意味じゃないですよ」


「ああ、うん……」


 首をかしげる。

 ラナさんの涙は止まっていて、辺りはなんとも言えない空気になっていた。


お久しぶりです。

お読みいただき、ありがとうございました。


恋愛タグは、ガッツリ折っていきます!

ただし、本人に自覚がないだけの可能性も?

いやいやいや……。



それにしても、書けなかった理由が判明しました。どうやらお別れさせたくなかったようです。

でも、うん今までさんざん打ってた伏線の回収のためなのでご容赦ください。



誤字脱字その他、勘違いなどもご指摘いただければありがたいです。


▼誤字報告 機能がページの一番下に▼

ありますので、ぜひご活用くださいませ! 

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