04.自動防御とごはん
連続投稿申し訳ありません。
今日は5話まで投稿します。
『次は、職業紹介所か、オススメの宿に案内しようと思うのですが、いかがなさいますか?』
大教会の階段を降りて、石畳の素敵な教会前広場を半ば過ぎる頃、ソフィアがそう言ってきた。
うーん、それもそうだけど……。
「おなかがすいたから、屋台か安めの食堂で、私の口にも合いそうなものはあるかなぁ?」
食べものは現代日本ほどは発展していないという話だった。
めちゃ美味しいものじゃなくていいけど、不味くて箸が進まないものはちょっと困る。箸はなさそうだけど。
『出来立てであれば、だいたい許容範囲に入ると思われます。宿への道行きに屋台がありますので、歩きながら選ぶのもいいかもしれませんね』
おお! それはいいな♪
私はソフィアのナビゲートに従って、歩きながら辺りを物色した。
海外旅行に行ったことのない私。
画面の向こうにしかなかった景色に目を奪われる。
石のレンガと石膏で塗り固められた壁を、濃い色で塗られた柱や梁が横切っている。屋根は上から見た限りオレンジが多かったけれど、青や灰色、赤や緑もあったはず。二階以上の家が多いので、今はあまりうまく見えない。
窓には花が見えるが、硝子は見えない。やっぱり貴重なのかな。あ、でも大教会にはあったなぁ。
道幅は、時々行き交う馬車が交差してすれ違っても、両側を2~3人ずつ余裕で行き交っているぐらい。露天のお店も並んでいるので、なにもなくなると、きっとそうとう広いのだろう。
と。
『スリにご注意ください』
私の体が勝手に動いて、ぶつかってくる誰かを避けた。舌打ちが聞こえて、気配が去っていく。
「今、体を動かしたのって、ソフィア?」
胸に手をあてて聞く。
『はい。スキル【テキパキ】の効果を応用したものになります。本来モモカが判断して動くべき行動を限定的に代行することができます。代行は、生命や財産に危機を及ぼす場合に限られます』
ええええ! すごい!
怪我しそうになったり、ものを盗まれそうになったら自動で避けてくれるんだ!
ありがたいなぁ! 私だけじゃ、きっと今のも全く気がつかないか、ぶつかられた反動で盛大に転けているかの二択だったはず。
「ありがとうソフィア。もうずっとあなたに頼りっぱなしだね」
『いいえ。モモカ、私はあなたのスキルです。あなたにたくさん頼られ使われることこそ私の喜び。自己研鑽のためならともかく、いえ、そんなときでも私を遠慮なくお使いくださいね』
と、嬉しいけれど申し訳ないことを言ってくれる。
ソフィアさん、ありがとう。きっと、頼りっぱなしになると思います、ごめんなさい。
そこから暫くさらに進んだところで、路地裏からいい匂いが漂い始める。
よく異世界転移ものだと、通路脇にお祭りみたいな屋台が出ていたりするんだけど、この世界では食べ物のお店は、大通りから路地に入ったところに並んでいるのが普通みたい。
その中から適当な路地に入る。
湯気の上がる屋台のいくつかに椅子が併設されていて、そこでいろんなひとがいろんなものを飲み食いしている。
『この国では、家で作って食べるという習慣がありません。屋台に売っているものを買ってきて食べる家庭がほとんどです』
ええっ! じゃあ、料理できない嫁でも大丈夫なんだ? 料理下手だからちょっと安心。
さて、どんな料理が人気なのかな?
「って、丼?! あれ、丼だよね?!」
屋台の椅子に並んで食べている男性の持つ、深めの器に入っているのは、肉などを主体とした具材と、その下から見える色のついたご飯状のものだった。
『この国では米に良く似たものが栽培されています。それ単体では食べず、他の穀物と一緒に具材や調味料と混ぜて炊きあげたり、炒めたり、または挽いて麺にしたりします』
「はぁあ……なるほど。屋台で食べることといい、東南アジアっぽい食文化なのかな。家は北欧っぽいのに不思議」
『小麦や蕎麦の麺もあるんですよ。この国は水が豊かなので』
うわぁ。まぁ、調理法から考えてジャポニカ米ではないんだろうけど、米がなつかしいと嘆くようなことにはならなそう。
醤油懐かしいにはそのうちなりそうな気もするけど。
『無毒性の麹は存在しません』
やっぱり?
とりあえず食べてみよう。
屋台で一杯注文してみる。肉だけでなく野菜も彩り良く添えられた一品。念のため小盛りで。
「あ、美味しい」
何の肉かはわからないが、臭みもなく、辛めの味で炒めてあり食欲が湧く。
米は、十六穀米のイメージが近いだろうか。鶏ガラか何かで炊いてあるような感じがする。
と、いうか、なんか醤油が使ってありそうな味がするんだけど?
『醤油やそれに類する調味料は使われておりません』
何故だ。
とにかく、この分だと、醤油ロスもなさそう。良かった良かった。
おなかいっぱい。平和に平穏に、食事を終わらせた。
あと1話、投稿します。