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37.痛みと、ラブロ

おはようございます。

令和が始まりましたね!


でも、すみません、今回は痛い日です(涙)

※大怪我の描写あり


「……ッ……あッ」


 したたかに打ち付けた背中の痛みに耐えながら、身体を起こすと、荷車が横倒しになっていました。

 左には、崩れた荷物の向こうにロニーさんとオラヴィさん。右からは、ラナさんの側にいたダイフクちゃんが駆けつけてきてくれています。



 倒れた荷車の向こうから、大丈夫か!? という声が聞こえます。

 3人はすでに起き上がっているので、ロニーさんが返事をして、そちらに回っていきました。


「モモカちゃん! 大丈夫?」


 なかなか起き上がらない私に、ラナさんが近寄ってきてくれました。


「だ……大丈夫です。ビックリしましたけど」


 そう言って起き上がろうとしましたが、あれ?


「いっ……!!」

「ああもう、けっこうな高さを背中から落ちたのよ。頭打ってない? ゆっくり横向いて」


 ラナさんが、眉間にシワを寄せて、私の体をゆっくりと横に向けてくれます。って、いたたたた。


「ぐぅ……『ヒール』」


 あ、楽になった。


「すみません、大丈夫です」

「もう、無理しちゃダメよ。ちょっとここじゃ危ないから、そっちに移動しようね」


 ヒール便利。ありがとう、神様。


 私は、横になった姿勢から起き上がると、倒れた荷車から少し離れて、道の脇に移動しました。






 ら、激しい息づかいに気がついた。



「え……」



 荷車の前。


 この荷車を牽いていた、ラブロ。



 彼の背中が見える。



 その向こうに見える、オラヴィさんの顔が険しい。


 え、何。どうしたの……?




「ラブロ……」


 近くにいたラナさんの声も、呆然としています。


 そして濃い、ラブロの影。



「ラブロ……!」


 思わず駆け寄ろうとしました。


 が


「来るな、モモカ」


 オラヴィさんの重い声が、私をとどめます。


 荒い息づかいの元は、やはりラブロ。


 荷車が横倒しになった原因は、牽いていたラブロが突然、勢いよく倒れたから。


 そして、なぜそんなことが起こったのかと言えば。



「おい! あんたの猪が、罠の場所を見つけたってよ!」



 誰かの、そんな声が聞こえました。




 ……なんで?





 この荷車は先頭だけど、先頭じゃない。

 一番最初に行っていたのは、タタール。ラブロと同じぐらいの大きさの、ラブロと同じ、オラヴィさんの従魔。

 さらにそのあとすぐを、冒険者二人が乗る、馬が2頭、走っていた。

 これは、背中までの高さは、ラブロやタタールのほうが、ほんの少し高い。けれど、馬の頭はそれより高い。人が乗っているので、またほんの少し高くなる。

 横から見たときの大きさは、もしかすれば馬が一番大きく見えたんじゃないだろうか?



 なのに、怪我をしたのは、ラブロ。


 ここまで、一生懸命に荷車を引っ張ってくれた、ラブロだ。

 いつもより、早いペースで、近頃で一番重い荷車を運んでくれた、ラブロだ。



「なんでよ……」



 唖然とした、言葉が漏れた。



「なんで……」


「モモカ、来ちゃダメだ」


 また、鋭く重い、オラヴィさんの視線が来ます。



 でも、でもっ。





『モモカ、駄目です。止まってください』





 ソフィアの、警告が聞こえて、辺りが、薄いグレーに染まった。




『『テキパキ』の効果を利用して、体感時間を極限まで延長させました。この時間を利用して、冷静になってください、モモカ』


 れいせい……?



 私は落ち着いてるよ、ソフィア。

 早く、早くラブロを、ラブロの怪我を治してあげなくちゃ。



『駄目です。冒険者や他の商人が見ている前で、あのクラスの怪我を治すのは、危険です。オラヴィが、応急措置をしていますので、暫く待って目線が減ってからにしましょう』



 ……。


 でも、その間、痛いんだよね? 


 私、背中を打っただけだけど、すごく、痛かったよ。一瞬、息ができないかっていうぐらいの、痛さが走ったよ。


 ラブロは、もっと、痛いんだよね?




 私のヒールなら、すぐに痛みをとってあげられるんだよね?





『冷静になってください、モモカ。すぐに、人払いをしてもらえます。ラナやロニーに頼ってください』



 私はずっと、誰かに頼りっぱなしだよ、ソフィア。


 ラナさんにも、ロニーさんにも、オラヴィさんにも、タタールにも、勿論そして、ラブロにも、頼りっぱなしだ。




 もう、頼りっぱなしは嫌だ……!!





 薄く、グレーになっていた視界に、色が戻った。



 瞬間、


 私は駆け出した。



「モモカちゃん!」



 ラブロの背中にたどり着く。


「何してる、モモカ。お前のヒールじゃ、ラブロを余計に苦しめるぞ。下がってるんだ」


 狼のような怖い顔で、オラヴィさんは警告してくれます。

 傷は……前足。ひどい。


 私は、ラブロの頭側を回って、ラブロの足元に移動しました。


「モモカ、聞いてなかったのか」

「治します。集中しますので、人払いをしてもらえますか?」


 ヒールには、魔力を使う。

 前世にはなかった力。


 不思議な、奇跡の力。


 さっき自分に使ったのは、勿体なかったな。

 でも、ああしないと、こんなにきびきび動けなかったか。


 落ち着いて、自分の中を探る。

 ラブロを、見る。


 うん、たぶん、全部使えばなんとかなる。


 私は、力のすべてをラブロに向けた。




「『ヒール』」




 辺りが、真っ白に染まった。


お読みいただき、ありがとうございました。


この回、泣きながら書きました。

うう~ラブロ~(泣)


次回、「反省」。



誤字脱字その他、ご指摘いただければありがたいです。


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ありますので、ぜひご活用くださいませ! 

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