34.隊商と出発
聞いてください!
昨日の夕食、ホウレン草っぽい野菜で緑色になったカレーと、ライスでした!!
異世界版、カレーライス! 別盛りでしたが!
美味しかったです!!
そんなわけで、今日は他の商人さんたちと、隊商を組んでいく日です。
次の町までは、1日。
だけれど、ドキドキの1日です。
― * ― * ― * ―
隊商の待ち合わせ場所には、すでにたくさんの荷車が来ていました。
今回は、うちの荷車にも沢山の荷物が乗っています。
この街での初日に、ロニーさんが商談していたのは、この荷物の仕入れのためでした。
質のいい香辛料らしいですが……そういうのこそ、収納箱の出番では、というのは飲み込みました。
隊商組むのに、荷物がほとんどないなんて、おかしいですもんね。
「おう、ロニー、こっちだ」
他の隊商の待ち合わせ場所にもなっていたのでしょう。
少し離れた集団から、声がかかりました。
体格のいいおじさんで、ロニーさんとは知り合いのようです。
「デリックさん。今日はよろしくお願いします」
「こちらこそ。頼りにしてるよ」
片手をあげて笑って近づく相手に、同じく笑顔でお辞儀するロニーさん。
このデリックさんが、この隊商のリーダーになると、ラナさんに教えてもらいました。
「グフルンテン商店って知ってる? デリックは、そこの、流通仕入れ担当なの。ロニーもだいぶんお世話になったのよ」
へぇ、と言いながら、ソフィアにグフルンテン商店のことを聞きます。すると、この国で一、二を争う大商会だとのこと。ただし、北には展開していないので、知らないと言っても大丈夫らしい。ほっ。
隊商は、全部で七つの荷車で構成されるとのことです。
大型の荷車が3台、中型が2台、小型が2台。
このうち、大型の2台がデリックさんのところのもので、他に大型1台の商会がひとつ、中型2台を牽く商店がひとつ、うちと同規模の、小さな荷車ひとつのところがひとつの、計5組で向かいます。
小さな荷車ひとつのところが、あまり危険のある道のりに慣れていないので、真ん中に。
それをデリックさんのところの大車で挟み、その前を狙われやすい、高級品も積む商会の大車が。後ろを、ある程度慣れている中型2台の商人さんが行きます。
「あれ? ってことは、先頭ですか?」
「そ。デリックは、冒険者時代からよく護衛してたから、実力を知られてるのよ。戦闘力のない子がいる、って言っても、大丈夫だろうって」
「あぅ」
先頭、ってつまり一番危ないんですよね。大丈夫なんでしょうか……。
平気そうな気がします。お三方の実力は知りませんが、強そうな気がしますしね。
「怪我したら、治しますね」
「あはは、お願いね。でも、できるだけしないようにするから」
ラナさんに撫でられました。
えへへ。撫でられるの、大好きです♪
そうこうしているうちに、出発の時間になりました。
今日、荷車を引っ張るのは、ラブロです。
けれども、その前にタタールのぷりぷりのおしりが見えています。
そう。警戒のための戦闘員として、タタールも召喚中なのです。
その後ろを着いていく冒険者さん2名もビックリの大迫力。
回りの人も、わたわたと大きな荷車分の広さを開けてくれます。
さすがタタール。仕事以上の事もできる猪!
それにしても嬉しい日ですね、今日は。
タタールの張りのあるお尻と、ラブロのふわっふわのしっぽと、ラナさんの凛とした後ろ姿を、一日中眺めるお仕事とか、何の役得ですか。
ああ、ついでにオラヴィさんの銀色の耳が、時々ぴくぴく動くのもね。狼だけど、猫を思い出します。
うつ伏せに体重を預けたクッションから、少しだけ頭を浮かせて、雲の多い空を見上げました。
― * ― * ― * ―
門を出るときに、並ぶのは少し珍しかったけれど、その間に、タタールと荷車の間を行く冒険者さんたちと、少し話せました。
グニューさんと、パトリックさんです。
「ロニーとは何度か、一緒に戦ったこともあるぞ」
とはパトリックさんの談。
グニューさんは、オラヴィさん以上の寡黙さだと思ったら、
「こいつ、めちゃくちゃ人見知りなんだよ」
「なっ……オイっ」
そう言われて、そのつり目を凄ませているグニューさんですが、それを聞いたあとじゃ、かわいく見えてしまいますよ。実際、赤くなってるじゃないですか。
笑い合いながら、待っていると、いつもよりだいぶん長かった筈の、門を出る列が、もう次の番になっていました。
タタールにビックリして、槍を構えそうになる門番さんたちを宥めて、ロニーさんが手続きをします。
今日で、ハイクライクのカレーもおしまいですね。いや、収納箱にたっぷり入れてますけどね。
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