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22.大猪の毛並みとあの子

 翌日、目を覚ますと、昨日より遅い時間でした。

 昨日はちゃんと眠れず早く起きてしまったからなぁ、なんて思っていたらそうではなく、今は季節で言うと、春から夏に向かう頃なのだそう。


 つまり、朝がどんどん早くなってきているということ。


「早起き苦手なのに~。ソフィア、目覚ましよろしくね」

『わかりました』


 だいたい同じぐらいの時間帯なのに、ラナさんがいないのは、いつもより早めに部屋を出たからだという。

 ……鍛練後の温泉を実践しに行ったのかな? 


 私は、身を整えて厩へ行くことにしました。


 いるかな?




 昨日はいた巨大ガエルはいなくなっていました。牙のすごい馬の子はいましたけれども。

 そして。


「おはようございます、オラヴィさん。それから、ラブロとタタール」


 ふわふわのワンちゃん・ラブロと、大きなイノシシ・タタールが、オラヴィさんにブラッシングしてもらっていました。


 オラヴィさんは軽くお辞儀すると、タタールの背を軽く叩きます。


 私は駆け寄ってタタールの毛皮を撫でさせてもらいました。


 おお、思った通り固い。

 けれども弾力もあって、なんだかツルツルしています。

 何かに感触が似ているような……。


『丸めた簾にも似ていますね』


 あ、似てるかも。

 しかも夏の庭に使う大きいあれを巻いたときの。

 何でだろう。


 タタールの横っ腹に、もふっと、もたれかけてみます。

 大イノシシのタタールは、ビクともしません。

 しかもブラッシング後で藁のいい香りがします。


「はぁ~……おちつく~」


 タタールに抱きつくようにもたれかけると、ラブロのほうから忍び笑いが聞こえました。


 馬鹿にしているようなものでなく、ついつい出てしまった、といった感じです。

 ラブロのくぅん? という鳴き声と共に、首をかしげているのか、オラヴィさんのほうに顔を向けているのか、そういった動きの気配がしました。


「君は、従魔師の資質があるかもしれないね」


 たっぷりとタタールを堪能して、朝食に向かう頃、そんなことを言われました。




 ― * ― * ― * ― 



「じゃあ、明日は次の町に移動するからね」


 本来の予定だと、今日に出発するはずだったのですが、次の町への道の状況を確認しているとかで、一日延びることになりました。


 ここにくるまでにあった罠みたいなものがまたあったら大変ですものね。


「うーん、一日空いちゃったか。もう一回温泉行く?」

「それもいいですね」


 ラナさんの誘いに乗ろうとすると、スッとオラヴィさんが手を上げます。


「ラブロとタタールと一緒に散歩に行かないか?」

「行きます!」


 もふもふと散歩! 

 絶対それ最高です! 

 即答するに決まってるじゃないですか。

 ラナさん、この時期に? なんて言ってますが、今、春なんですよね? 散歩に最適じゃないですか。



 結局、4人全員で散歩することになりました。


 し・か・も! 


 私はラブロの背中に乗せてもらいながらです! やっほぅ♪


「わぁ~! 荷台とはやっぱり違いますね!」


 高さ的にはクッションを重ねた荷台と同じぐらいのはずなのですが、それよりも高く感じてちょっとドキドキします。


 手綱を持つラナさんが、ふふっと含み笑いをしました。オラヴィさんがタタールの手綱を持たなければいけないそうで、ラブロはラナさんとロニーさんが交代で持っています。


 コースは町を抜けて、野菜畑を一回りするものになりました。

 本当にたくさんの種類がたくさん植えられていて、今だと花が咲いているものもあるのだとか。

 野菜の花なので派手さはないですが、趣のある綺麗な花が多いみたいです。


 町の中をゆっくり歩いてもらいながら、そんな話をしていると、広い道に交差するところに出ました。


「あ」


 右側から、のしのしと大きなトカゲが荷車を牽いてきます。

 私はすぐに大ケガをしたトカゲのお腹を思い出しました。


「あのトカゲさん……大丈夫でしょうか?」


 ポツリといった言葉を拾ったのはロニーさんでした。


「ああ、大丈夫みたいだな。しっかり歩いてる」


 って。


「ロニーさん、違いますよ。道で怪我して倒れてたトカゲさんです!」


 今、目の前をノシノシ歩いてきているトカゲさんの話ではないのです!

 そう言えば、ロニーさんは首をかしげて。


「ああ、だから……」

「あっ、あんたたち!」


 ロニーさんの言葉を遮るように、大きなトカゲを引き連れていた人が声をあげ、こちらに向かってきました。


「あんた、道で手伝ってくれた人だろう。やぁ、本当に助かった。礼を言いたかったんだ」

「え?」


 私は、もう一度、トカゲを見ます。

 こちらに来た人を待つようで、少し端に寄るコースをとりはじめました。

 その足に怪我の様子はなく、痛みがあるようにも見えません。


「あんた、すぐに町とギルドに連絡してくれたんだってな。治癒師まで手配してくれて。本当にありがとう。おかげでヤツも処分されずに済んだんだ」


 私の前を横切っていった大きな影は、あの時の微動だにしなかったお腹の子で間違いないようです。


 すると、ロニーさんに頭を下げていたおじさんが、ふと私を見て目を見開きました。


「どうしたね、お嬢ちゃん」


 涙を流す私にびっくりしてしまったようです。

 なにか言わなければと思いますが、うまく言葉が出てきません。


 涙をぬぐっているうちに、ロニーさんがフォローしてくれました。


「この子、荷車を牽く動物が好きなんですよ。町についてからも、ずっと心配してました」


 その言葉に、トカゲを連れていた人はくしゃりと笑って、ありがとう、というと、幾つかロニーさんと話してから、あちらに戻っていきました。



 

お読みいただき、ありがとうございました。

誤字脱字その他、ご指摘いただければありがたいです。


書いてて「犬と猪……今年と来年の干支じゃん!」と気がついたのですが、結局大トカゲで終わってしまいましたね。


今年中にもう一度上げられたらいいのですが……。

頑張ります(>_<)


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