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21.買い食いとおそろい

 


 温泉宿から出てすぐの屋台を覗いてみました。


 売っていたのは飲み物。

 ココナッツミルクにいろんな豆が入ったような感じで美味しいです。


「コレがここの温泉の醍醐味なのよ!」


 ラナさんが、一気に半分ぐらいまで飲んでから、満面の笑顔をしてくれます。


 お風呂上がりにフルーツミルク、の感覚なのかな? 

 それを見てクスッと笑ってしまいました。



「ここから、元の道を越えた辺りに美味しいお菓子が売ってるのよ」


 飲んでコップを返したあと、ラナさんは坂を上り始めました。

 来るときは気がつかなかったけれど、オススメの温泉は、坂の下にあったようです。

 行きは緩く感じたのに、帰りはちゃんと上り坂と感じました。


 前世でもこんなことたまにあったけれど、どういう仕組なんだろう。

 近頃車に乗せてもらいっぱなしだったので、歩きはちょっと心配……いやいや、だからこそこの機会に歩かねば。


 懸命にラナさんを追いかけていたら、今度は振り返った彼女のほうに、クスッと笑われました。


 あうあう……が、がんばってラナさんみたいにスタイリッシュに歩けるようになろう! 



 ここに来るときに使った広めの道を越えて、両側に屋台が並んで狭くなった通りを、ラナさんに手を引かれながら歩きます。

 確かに迷子になりそうな狭さと人通りで、かなり繁盛しているようでした。


『ラナはマーク済みです。迷子にはさせませんよ』


 あう、ソフィア、そうじゃなくて……いや、ハイ。迷子になったときはよろしくお願いします。


「前に来たときより、人が多いなぁ。放しちゃダメだよ、モモカちゃん」

「はいっ! 繋いでてくださいね、ラナさん」


 ススッと進むラナさんの後を、必死で追いかけていると、あるお店……の前の、屋台につきました。


 そこには鉄板があり、串でくるくると回しているように見えます。

 たこ焼き? にしてはソースの香りがないなぁ。かわりに甘い香りが漂ってきます。


 これはもしや。


「ベビーカステラ?」

「お? モモカちゃん、ラクスト知ってるの?」


 ラナさんが列に並びながらお菓子の名前を教えてくれました。


 どうやら、丸く焼いた生地の中にいろんなクリームが入ったようなお菓子みたいです! なにそれ、絶対美味しい! 



 ラナさんが二袋買ってくれて、また元の道に戻ってから、開けた場所に並んでいる椅子に座って袋を開きます。

 その瞬間、ふんわりとした甘い香りが広がりました。


 一つを人差し指と中指でつまんで、口に運びます。


 中から出てきたのは蜂蜜。


 パリッとした皮に、ちょっとパサパサしてるかも? と思った生地とあわせると、不思議な食感です。


「甘くて美味しいです!」

「でしょ! もうちょっとしっとりした生地のところもあるんだけど、私はこっちが好き」


 なぬ? それは食べ比べなくては!? 


 そう思いながらもう一つ手を伸ばすと、そこに入っていたのは、カスタードクリームっぽいもの。

 あれ? これはちょっとミニシュークリームっぽいかも。


 ついつい、次は次は? と手が進んでしまいます。


 ラナさんも、食べ始めると手が止まらなくなるのだと笑っていました。


 中身は5種類あって、どれか1種類だけ、とかは選べないそう。


「いろいろ入ってるのが美味しいのよね」


 中盤ぐらいで、スッキリした飲み物を買ってきてくれたラナさんが言いました。

 うん、食べ続けると喉が渇いてきますね。

 だけど、いろいろ入ってるから、というのは同意です!






 ラナさんが次に連れていってくれたのは、雑貨屋さん。

 髪留めの並んでいる所で、小さなピンクの花飾りのついたものを見つけました。

 留めるピンの部分は薄い緑。よく見ればそこに、うっすらと模様が浮かんでいます。


 シンプルで可愛らしい、普段使いできそうなもので、ついつい見入ってしまいました。


「モモカちゃんはシンプルなのが好きなのね」


 後ろからラナさんが話しかけてくれます。


「そうですね。普段から使えるものが好きです」


 私がそう言うと、ラナさんがひょいと見ていたピンクの髪留めと、隣にあったうす緑の花に青い本体の髪留めを持って、スタスタと行ってしまいます。


 慌てて追いかけると、店員さんの前でにっこりと笑っているラナさんに追いつきました。


「はい、頭出して~」

「ふ、ふえ?」


 抱えられた頭を放されると、そこにはピンクの花がついた髪留めが。


「んでもって、私がコレね!」


 バッチリウインクをしたラナさんの側頭部には、緑の花の髪留めが。


「ふふっ、友達とおそろいとか、やってみたかったの」

「友達、ですか?」


 私は首をかしげました。すると、あせった顔でラナさんが手を振ります。


「あ、その、そりゃあ私とモモカちゃんじゃ年もだいぶ違うし、会ってそんなに日もたってないし、でも」


 わたわたと手を振りながら、赤くなっていくラナさんは可愛らしいです。

 じゃなくて。


「私と友達なんて、いいんでしょうか?」

「ダメ?」

「とっても嬉しいです!」


 私がラナさんの両手を握ると、見惚れるような笑顔が返ってきて、手を握り返されました。


 異世界にきて、初めての友達です!

 自分の顔が綻んでいくのが、しっかりわかりました。

お読みいただき、ありがとうございました。


まだストックがない状態ですので、次の更新日も未定です。申し訳ありません。


また、誤字脱字その他、ご指摘いただければありがたいです。


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