不景気の原因が人口減少であるという誤りと、移民政策について
『不景気の原因は人口減少である』という今の経済情勢に対する誤った認識がある。人口減少によって”需要”が減少した為に景気が悪くなったらしく、人口問題だから景気は回復しないそうだ。ハッキリ言おう、完全に誤りだ。「人が減ったのだから需要が減った」この言説は物事の一面だけを見ており、別の面を見るとすぐに誤りだと気がつく。
まずはじめに、社会を構成する多くは『消費者である前に供給者』である。人口が減れば需要が減ると言うが、同時に供給も減っており、さらに現在の人口ツリーは逆三角形になっている。現実と真逆なのである。
おそらく、供給という言葉を1次・2次産業に限定して考えてしまい、サラリーマンなどは何も産み出していないと考えてしまっているのであろう。しかし『分業』とはアダム・スミスが経済学が産みだした時に最初に論じた事である。今の生産力を維持したまま、生産者が全ての計画を立てて経理まで行うなど事実上不可能である。そのような天才のみが生きられる規範の基では社会はこれほど巨大化も安定化もしなかっただろう。自分の労働が社会に何の恩恵も与えていないと考えるのは浅慮であるし、事実そうであるなら後述する人手不足の解決法は見えたも同然である。
次に、そもそも『需要』という言葉はどういう意味で使われているのだろうか? 我々が認識できる『需要』とは購買意欲だ。だが当然の事であるが「買いたい」と思えば消費できる訳ではない。至極当然の理としてお金が必要である。残念ながら、そんな当たり前の理すら失われているように思えてならないが。お金はありとあらゆる事に必要である。技術開発・インフラ整備、我々が普段当たり前に消費しているありとあらゆる代物は誰かの労働の成果物なのである。しかし、長引くデフレと緊縮思想により給料は削減されている。これでは購買意欲を満たす事など不可能である。
あるいは『需要』について生活必需品だけで認識しているのだろうか? それこそ『貧困』を絵に描いたような思想だ。「人はパンのみにて生きるにあらず」とは聖書の言葉であるが、人はパンのみで生きると唱えるような認識である。パンだけの話に限っても、より良い商品を開発する事で商品価格を上昇させる事によって利益を増大する。資本主義の基本中の基本的考えである。そもそも国家経済を語るときの『需要』とは全ての物品・要求を含んだ需要の事である。需要が無いのに、災害でボロ塀が倒れるなどという事はあり得ないのである。需要が無いとは、全てが満たされ何の問題も不安もないという事だ。我が国の現状がそんな桃源郷のような状態だと何処の誰が思えるのだろうか?
心底不思議なのは、この手の言論が度々発生する事と自称知識人が臆面もなく口にする事である。
それには幾つかの仮説がある。
経済学の抱える病理。
経済学には『均衡』という考えがある。均衡とは需要と供給が完全に合致した状態。不足も過剰も存在しない状態だ。一見すると理想社会に見えるが、そんな状態が継続する事などあり得ない。需要とは既存商品の改良だけでなく『新しいナニカ』を含んだ言葉であるからだ。さらに前提として、万人が全く差異が無い状態で、完全な情報を共有しているなど、実現不可能な前提の基で構築された理屈である。完全に夢想家の戯言の状態である。
故に、現実に対する答えも妄想と現実の区別が付いていないような手法が取られる。
供給に対して「無駄」と放言して縮小する一方、需要に対して「欲しがりません勝つまでは」と言っているのである。その結果、供給ゼロ、需要もゼロになれば均衡が取れて素晴らしい世界だ! という訳である。これでは狂った教条主義そのものだ。
社会・経済に対する無理解。
コンビニに商品が並んでいるのも、水道をひねれば水が出てくるのも、スイッチ一つで電灯が点くのも誰かの労働の産物である。中国人が水が欲しいから蛇口を欲しがるという話があったが、その中国人を日本人に入れ替えたような事が起きているのである。余りにも笑えない話である。
そして、生活必需品のみを見て人口が減ったから需要が無いとか言っている人間は、貧困からそんな事を口走っているのか? それとも貧乏人は貧乏をエンジョイすれば良いという某人材派遣会社会長の有難い思想で言っているのだろうか?
「欲しいモノが何もありません」本気で言っているなら、哀れなカルトの犠牲者か、度し難い人間としか思えない。そろそろ、この緊縮万歳思想も一般的に批判の目で見られるべきだろう。
さて、次に移民政策について論じる。
ハッキリ言って無茶苦茶である。言っている事が全て絵空事、空手形、不可能事のオンパレードである。こんな明らかな事を対して的確な質疑応答を出来ないのが今の野党である。舐められて当然だ。誰が求めているかと言えば経団連が求めているのだろう。しかし、世間様の批判を躱す為に言っている事は全て嘘になるだろう。
滞在期間を限定する?
不可能だろう。なるほど、企業の労使関係は自動的に解雇されるとして、誰がその外国人労働者を空港窓口に連れて行くのだろうか? 素直に帰ってくる前提で話を進めているが、どう考えたってそうはならない。ブレードランナーのロボット狩りよろしく不法移民ハンターでも雇用するのだろか? さらに言えば、渡航費用を負担するのだろうか? 本人? 移民の母国? 企業の安い労働力の為に税金で送り届ける事になりそうだ。
そもそも、言葉が通じるかどうかも怪しい外国人を労働力として訓練する事をどう思っているのだろうか? 日本語が通じたって新人なんて役に立たないのが普通だ。新人が即戦力になる会社なんて使い捨て前提のドブラック位のものである。5年ぐらいで仕事を覚えてくれてコレからというタイミングでハイ時間切れ。移民側も雇用側も得をしない制度だ。早晩撤回を要求して来るだろう。そして欧州の流れがまんまこの流れである。
福祉の問題
国民皆保険制度は我が国の強みの一つであるが、移民とは完全に相容れる事が出来ない。継続するなら移民に対しては差別的と表現しても良い位の特別条件を実施し限り、事実上の廃止となるだろう。現状でもこの制度を悪用する外国人が絶えないのである。中国人などは国民皆保険制度を利用した医療旅行サービスまでしている。ペーパーカンパニーか企業の副業か知らないが、旅行期間だけ会社員になって病院に行くだけ行って代金を踏み倒してとんずらする夢のプランだ。
治安問題
我が国は法治国家であるが、実際には多くの事柄について社会の規範だとか道徳に沿って存在している。外国人に明文化されていない日本のルールを守る事を要求するなど不可能だし、法律であると言っても、彼らが納得するかは別問題だ。長期的利益を考えた時に人は良徳に目覚めるわけで、短期しか考えない人間にソレを求めても無理というモノだ。即ち、法律の実行力は非常に強権的なものになる。恐らくシンガポールのような警察国家になるだろう。集会結社の自由は当然制限だ。
徴用工問題
今巷を騒がせているように、出稼ぎ労働を広義の強制連行とする人たちが現実に存在している訳で、彼らが「自己の意思に反して強制的に移民させられた」と喧伝して謝罪と賠償を求めてくる可能性は極めて高い。というかやるだろ。所詮、移民にはこの国になんの義務も無いのだから、自分の利益を最大化するために行動しても何の不思議でも無いし、デフレとはそんな人間が徳をする環境だ。
人手不足?
賃上げ対応して、業務効率化やらなんやらしろ。以上終了。本当にありがとうございました。
だいたい、おかしいと思わないだろうか? これまで労働者に対して過酷な条件を押し付けて、それをクリアできなかったら自己責任で全て処理してきた訳だ。こんなことを続ければ人手不足に陥る事も40代のベテラン層が将来喪失する事も始めからわかりきっていたし、現実にそうなりつつある。人手不足などとほざくのは経営者の怠慢に他ならない、それこそ経営者の自己責任であろう。素直に奴隷が欲しいですと言えばよいものを、被害者面で何か言っているよとしか思えない。
そもそも移民問題で労使関係を解消すると言ったけど、我が国の労働権は解雇に関しては非常に強固で、最低のブラック企業でも解雇するのは簡単ではない。というか、単に法律違反が当たり前のようにまかり通っているだけで裁判すれば負ける可能性が高い。
労働基準法第16条では、「解雇は、客観的に合理的理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には、その権利を濫用したものとして無効とする」と定められており、労働者である以上、外国人も日本人も同じ手続きを行う。つまり簡単にクビにできないのだ。あり得る理屈としては、入管法により復帰の目途が全然ないからという事になるが⋯⋯⋯そんな法律が間違っているのだと言われたらそれまでであろう。