3話 尾行者?でも捕まえようか
なぜか尾行されていた俺は、モモとの話し合いによって、尾行者を捕まえにいくことになった。
「で、どうやって捕まえるつもりだ? イケメンな俺は、大体のスポーツはやったことあるけど、人間の生け捕りなんて一回もやったことないぞ?」
普通はやらないと思う。人間の生け捕りなんて。
「ふっふっふ! 私を誰だと思ってるの!? 女神様になる女よ! 私にまかせて!」
「じゃあ任せるよ。俺は今日は見学で。」
こいつがどのくらい戦えるのか知っておきたい。
「わかった! では……いきます!」
モモの呼吸のリズムが変わった?
「『猫の力~チーター~』っ!」
と、言って、走った……のか?
【チーターは、呼吸の回数が大きく変化する動物だ。普段は一分間に60回の呼吸が、全力で走るときには一分間で150回も呼吸を行う。呼吸を多く行い、酸素を多く取り入れることで、チーターは、恐ろしいほどの加速を発揮する。チーターは三歩で時速64㎞まで加速する。さらに加速を続けて、全力で走れば時速120㎞にも及ぶという。瞬間的な速さなら地上最速の動物だ。】
「はい、捕まえてきたよー!」
数秒後、帰ってきた時には気絶した人を抱えていた。俺は驚いた。こいつが走ってから尾行者を捕獲し、この場所に帰ってくるまでの動作を少しも目で捉えることが出来なかったからだ。速すぎる。
「今の……何?」
無意識に口が開いた。
「ん? 『猫の力~チーター~』だよ?」
「お前さ、強すぎない?」
「でしょー!」
こいつは相変わらずめっちゃ笑顔だ。
こいつの強さは一旦頭から追い出して、今は、尾行してきた人を調べることに集中しよう。とりあえず、尾行してきた人を眺める。緑の服を着ていてフードを被っている。体格は小柄な方だと思う。武器を隠し持っていないか、服を脱がしていくと……え? 急いで服を着せる。
「こいつ、女?」
「そうじゃないかな? 軽かったし!」
めっちゃ笑顔で返答された!
「先に言えよぉぉ!」
「ドンマイッ! 無抵抗の女の子の服を脱がして楽しんでいたことは黙っててあげるから!」
「う、うるせぇ! 楽しんでねぇよ!」
「楽しんでたくせにぃ!」
「うるせぇ、黙れ!」
「こいつ、女ぁ?」
「うるさい! 真似すんな!」
俺らがくだらないことを言い合っているうちに気絶していた少女がムクリと起き上がった。すると、モモが少女の足元にスライディングしてきて
「起きた! おっはよー! 私があなたを気絶させたんだー! どおどお? 痛かった?」
「わざわざ言わなくていい!」
「おはよ……ちょっと痛かった……かな……」
「あんたも答えなくていいから!」
さっき、モモはこいつを捕まえてきた。役に立った。今度は俺が役に立たないと。
俺は真面目な顔で、
「さてと、で、あんたは何で俺らを尾行なんてしてたんだ?」
少女は真顔で答えた。
「お友達に……なりたくて……」
お友達? 信じるわけねぇだろ。ゲームにしかそんなピュアな少女は存在しない。
「もう一度聞くぞ? なんで俺らを尾行してたんだ?」
「もう一度いうよ……? お友達になりたくて……」
真顔で返してくる。
「喧嘩売ってんのか?」
「喧嘩するほど……仲がいい……」
再び真顔で返してきた。そんな少女の手を、無駄にテンションが高いバカが、握って
「やったー! 友達だぁ! わーい! やったぁー!」
「お前は話に入ってくんな!」
「私はスミレ……よろしく……」
「おーまーえーも! 自己紹介してんじゃねぇよ」
「えっとね! 私はピンクッション! 気軽にモモって呼んでね! で、こっちはイガッシー! 気軽にイガッシーって呼んでね!」
「うん……わかった……。よろしく、モモ、イガッシー……」
「分かってんじゃねぇよ!」
「よろしく! スミレ!」
「よろしく……モモ……」
「よろしくね! スミレ!」
「よろしくね……モモ……」
「よろしくお願いします! スm」
「二人だけ仲良さそうにすんなよ! 俺も友達にしてください! 仲良くしてください!」
モモの働きによって、仲間が一人増えた。
俺はこの世界で、にぎやかに暮らせる気がする。悪い意味で。