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閑話らしい

誤字脱字は脳内で変換求む。

 



「若っ!またですっ!」

「な、何!?また、か?」

「はい。そうです!」


 高級な布を使用しているが、動きやすそうな服を纏った少年に、あご髭を蓄えた中年の男性が何やら報告している。


「父上の物見遊山にも困ったものだ。領地の書類仕事がまだ残っているというのに、あっちへフラフラこっちへフラフラと。今日はどちらへ向かうとおっしゃっていたのだ?」

「はい、確かヘーゼル村の方へ向かわれるとおっしゃっておりましたが、ゴヨーク様のご性格から、ずっとその場に留まってはいらっしゃらないかと思われます」

「フム………。ではこれから父上を追うぞ、シグマ!この書類には父上の持っている押印が必要なのだからな」

「御意!!」


 バタバタと足早に室内から出て行く護衛のシグマを見送ると、このウェダッツ領を預かるゴヨーク・チャビン・ウェダッツ辺境伯の後継ぎである、アルトリウス・ハウ・ウェダッツは、ため息を吐きつつ父であるゴヨークを連れ戻すため、愛馬の元へと向かった。



 愛馬が暮らす厩舎へと到着すると、アルトリウスの背後からダダダッと勢い込んで走ってくるアルトリウスの幼馴染みでもある青年がやって来る。


「おお、若。ノクトの準備は万全ですよ!さぁさぁ、ゴヨーク様をお捜しに参りましょうぞ!」

「あ、ああ。そうだな、うん」


 やる気をみなぎせ、暑苦しく話し掛けてくるフラーブに、アルトリウスは半歩後退りながら、適当に相槌を打つとフラーブへの対応とは打って変わって、愛情を込めた声音で愛馬のノクトへと話し掛けた。


「すまないな、ノクト。父上を捜しに行くため、お前の機動力が必要なんだ。宜しくな?」

「ブルルッ…………」


 ノクトは嘶くと、まるでさぁ乗って?と、言うわんばかりにアルトリウスに向かって額を擦り付けた。





 ***




 出奔したゴヨークを捜すため、手がかりであるヘーゼル村にて聞き込みを開始した、アルトリウス一行であったが、村人は農作業などが忙しいらしく、中々ゴヨークの目撃情報は得られなかった。


「はあ…………。アルトリウス様、ゴヨーク様はどちらに行かれて仕舞ったのでしょうか?」

「俺が知るか! おい、シグマ!父上がヘーゼル村に向かうとお前に告げた話は本当なのか?」

「私はそうゴヨーク様ご本人にうかがいましたが。……………………もしやお疑いで?」

「い、いや。シグマでは無く、それをお前に告げた父上を疑っている。シグマにはヘーゼル村と言っておいて、もしかしたら隣のカシュー村やもしれんからな」


 アルトリウスは顎に指を当てながら少し考え込む。

 しばらくして、アルトリウスはこう判断した。かれこれ数時間は捜しているのに、目撃情報すら無いのだから、もうこのヘーゼル村には居ないのであろうと。


「もしかしたら父上は邸に帰っているのかも知れん。我々も一旦邸に戻る事にしよう」

「カシュー村は宜しいので?」


少し意地悪そうに隣村へは行かぬのかと、アルトリウスに聞いてくるシグマ。


「ふん、冗談で言ったんだ。そこは流せ!」

「………………御意」


 そうして3人は邸へと一旦戻るため、馬の腹を軽く蹴ると来た道を戻り始めた。






 数分後、3人はまた畑に村人が数人居るのを視界に捉えた。



「若、あそこに居る村人には、まだゴヨーク様の聞き込みしていないと思いますが」

「ああ、確かにな。まぁ十中八九目撃はしていだろうが、一応聞いておくか」

「そうですね。万が一って事もありますからね」

「じゃあフラーブ聞いとけ」

「ああ。りょーかーい!」


 少々投げやりなアルトリウスの命令に、フラーブはのんびりと返事をした。





 村人たちに、口元にちょび髭がある人物を目撃したかと声を掛けたフラーブであったが、突然背後より「あっ!ああっ!あ、あ、あ………………」と妙な声を上げ始めたアルトリウスの方へ、近付くと妖しい魅力溢れる漆黒の美女に、3人とも心を奪われてしまい、その場で凍り付いた。





 ――――――――――――――――――という所までは記憶にあるのだが、その後の記憶が3人とも曖昧であった。




 気付いたら3人ともウェダッツ家の邸のベッドで寝て居たのであった。


 家令が言うには、アルトリウスたちはヘーゼル村の畑で突然倒れたそうで、その場に居合わせた村人がウェダッツ家へと連絡してくれたらしい。


 何故アルトリウスたちがウェダッツ家の者と分かったのかというと、フラーブとシグマが、ウェダッツ家の家紋が入った剣などを所持していたため、直ぐに身元が判明し連絡ができたそうだ。



 それから数日間は、特にどこが悪いわけでも無いのに、3人ともベッドから起き上がる事が出来ず、ウェダッツ家お抱えの治療師でも不調の原因が解らず首を傾げていたのだが、1週間もすると普通に起き上がる事が出来るようになった。



 アルトリウスたちが休息していたその1週間の間、ウェダッツ家ではてんやわんやの騒ぎが巻き起こっていた。


 何とウェダッツ辺境伯であるゴヨークが、忽然とその姿を消してしまったからだ。

 最初は殺害されたとか、誘拐されたとかがまことしやかに囁かれたのだが、どちらの犯人もついぞ現れず、結局は失踪したのだと結論付けられた。




 このウェダッツ家の当主失踪事件の1年後、ウェダッツ家の当主はゴヨークの息子であるアルトリウスが継承するのであるが、それはまた別の話である。





アルトリウスが継承するのと同時期に、ヘーゼル村に女神アートリー教の最初の教会が爆誕する。


因みに教祖の名はデイジーであったとか、なかったとか。(どっちやねん)

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