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ファイティングスピリッツには感服するらしい

おひさしぶりでっす。

 


 場違いなほど軽やかにパチパチパチパチと拍手するアトリに、その場に居た全員の視線が釘付けになる。


「良く言ったわデイジー。歯には歯を目には目を。相手が礼を欠いたなら、こちらも礼を欠いた対応をせざるをえないわ」


 アトリに「ねぇ?」と同意を求められたロドラーであったが、身分というものがあるため、この場でアトリへの同意はできなかった。


 しかし娘のデイジーはアトリの発言に我が意を得たりと、大きく頷いていた。



「なっ……なっ……何故そんな身分の低い小娘の味方をなさるのですか?貴女も貴族なのでしょう?」


 デイジーに頬を打たれた男性は、信じられないといった表情で、ワナワナと震えながらアトリへと話し掛ける。


「あら?私は別に貴族では無いわよ?」

「「「ええっ!?」」」


 アトリの貴族じゃない発言に、3人組の男たちが驚きを露にする。

 ロドラーたちは、アトリが貴族では無い事は先ほど本人の口から聴いていたので、平静であった。


 アトリの美貌は魔的な程であるし、着ている漆黒のドレスも超高級そうに見える。

 そして何よりも飛行するマジックアイテムなどという物凄くレアな魔道具を所持しているのに、貴族ではないと言うのだ。

 平民が所有するのに、高価過ぎる物であった。



「で、では貴女は平民なのか。しかしただの平民がその様な貴重なマジックアイテムを所有するなど、宝の持ち腐れだ!それは高貴な身分を持つこの俺が使う方が相応しいだろう!それをこちらへ渡してもらおうか?」


 何というデジャヴ…………。


 アトリは先ほど消したウザい男と、今現在目の前に居るこの青年との間に、間違いなく血が繋がった親子関係があると確信した。

 アトリが貴族では無いと分かると、態度を急変させたウザい所が一緒だったからである。




 アトリはまたしても極上の微笑みを浮かべ、音もなく片手を横柄な態度に変貌した男へと向けると、指をパチンと鳴らそうと…………………。


「まままま待てっ!いえ、ま、待って下さいっ!!」


 ロドラーはアトリの指を高速で握ると、大慌てで両者の間に身体を滑り込ませた。


「あら?何故止めるのかしら?」

「ちょっと!幾ら父さんでもアトリ様の邪魔をするのはどうかと思うの!」


 本気で不思議そうに首を捻るアトリと、アトリの肩を持ち、ロドラーへと息巻くデイジー。


「ポゼッショナー様、流石にそれは不味いですよ」

「そうかしら?新しい方が良いかと思ったのだけど?」

「いえ、大体どの貴族もこんなものです。むしろこのウェダッツ領はまだましな部類です」

「………………これで?」

「は、はい。有り得ない額の税を徴収され、その日暮らすのも大変な領もありますので…………」

「そんな領もあるの?ウフフ…………そんな領主など、消し去ってしまえばよいのに………」


 アトリが背筋も凍るほどの悪辣な微笑みを浮かべながら、囁いた言葉にロドラーは口を滑らしたカモ………と、慄いた。


「………………ゴホンッゴホン!!で、ですので大丈夫です。これは必要無いのです」


 ロドラーはわざとらしく咳払いをすると、しっかりと掴んだアトリの手を上下にブンブンと振ってみせた。


「……………ここで暮らす貴方たち領民がそう言うのならば、私は別に良いけれど…………」


 アトリはチラリと不満そうな表情のデイジーに視線を向けた後、ロドラーへ聞いた。


「でも………デイジーが領主の息子の頬を打ってるけど、それは大丈夫なの?」

「あっ!」


 ロドラーはすっかり忘れていた。平民であるデイジーが貴族の、しかも自分たちの領主の息子の頬を思いっきりぶっ叩いてしまっていた事を。

 しかも悪い事にアトリの極上の微笑みで呆けていた領主の息子たちが、その言葉で正気を取り戻してしまい、またもギャーギャーと騒ぎ始めてしまった。


「そ、そうだった!俺の高貴な頬を、たかが平民の小娘が叩いたのだ!し、死刑だ!縛り首だ!」

「そ、そうですね!確かに間違いなく彼女は罪を犯しました」

「それにその弟も何やら先ほど妙な事を言っておりましたね?」


 どうやらアトリの一言で、余計な事まで思い出させてしまった様で、ロドラーは青い顔をし、デイジーはファイティングポーズをとり、拳を正面に突きだしている。


 アトリ的にはデイジーの、止まることを知らないファイティングスピリッツは、とても素晴らしいと思うのだが、流石にこの状況下では手放しに褒めるのは憚られた。




 数秒、この後どうするか考えたアトリは、良いことを思い付いた!というジェスチャーをすると、虚空からズルズルとパッションピンクの毒々しいハンマーを取り出した。


 そして常人の動体視力では絶対に追えないスピードで、領主の息子を含む3人の頭を思いっきり殴打した。



 バゴンッ★ドゴンッ☆ズガンッ♡



「あぐっ!」「うげっ!」「ぐぎゃっ!」


 小さい悲鳴を上げ、頭頂部から怪しげなパッションピンク色の煙を出しながら3人は地面に倒れ込んだ。


「これで、良しっ!!」


 やれやれと一仕事終えた感を出して振り返ったアトリへの態度は三者三様であった。



「撲殺ですか?素敵です、アトリ様♡」


 アトリを称賛するデイジー。


「もう泣くなよーシュザー。ほらアトリ様が仇を取ってくれてるじゃんかー」

「う、うん。もう泣き止むよ。ホントだよ」


 まだ泣いていたシュザーと、それを慰めているモリー。


「え、ええーーーーーーーーーー???」


 そして叫ぶロドラーであった。




風邪を引いてまして、何十年ぶりかに高熱が出ました。


治るのに時間が掛かり、本気で自分が若くない事を実感しました。

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