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渾身の平手打ちをお見舞いするらしい

まあ、読んで頂ければ幸いです。

 


 言葉を失ったロドラーと、困った表情のアトリが見詰め合うこと数分、ドカドカと音を立てて数頭の馬に跨がった身形の良い男たちが現れた。


「おお~い!そこの者たち!この辺りにこう、口元に少し髭を生やした男性が来なかったかい?」

「えっと……両手や首にじゃらじゃらと宝石を着けた人物なのだが………」

「あっ!ああっ!!あ、あ、あ……………………」


 近づいてきた人たちの中で1番若そうな男性が、アトリの容姿をモロに見てしまい言語中枢にダメージを負ってしまった様で、同じ言葉をただ意味もなく繰り返すばかり。

 そんな仲間のおかしな態度に、残りの2人もアトリの方へと視線を向けると、お約束のようにピッキーンと瞬時に凍り付いた。



「あーモグモグ……しょうがないわねーモグムグ………ゴクン。確かに私もアトリ様を最初に見た時は同じ感じだったしー。うん、分かるわー」


 やっとタルトを味わい終わったデイジーが、目の前の男たちの動揺に、ひとりウンウンと頷いている。


 問題はそこじゃないっ!と、ロドラーは思ったが事実はここでは口走れない。

 この男たちが捜しに来たのは、間違いなくさっきアトリが消してしまった、ちょび髭領主の事を言っているのだと思ったからだ。

 何故ならばこの男たちの剣の鞘の部分に刻印されているのは、柊と杯が交差するウェダッツ家の家紋であったからだった。


 ロドラーはまだ凍り付いている男たちを、後目にアトリへと小さく声を掛けた。


「ポ、ポゼッショナー様………事態は悪い方へと向かっている様でして、この者たちは先ほどのちょび髭……いえ、ウェダッツ領主の関係者の様です」

「あら………そう?」

「で、ですから……その……ポゼッショナー様がやってしまった事がバレますと、とても不味い状況でして………」

「ふふっ……。ロドラーが心配してくれるのは有り難いけど、はっきり言ってバレる心配は限り無くゼロに近いわ」

「へ、へっ?」


 クスリと微笑んだアトリは、魔的な美貌も相まって鋼の意思を持つロドラーでさえ、内心グラリと来るものがあった。破壊力抜群である。


「だってそうでしょ?誰もあの男が消えたなんて思わないもの。謎の失踪程度にしか思われないわ」

「…………………………た、確かにそうですな」


 アトリの言葉に、ロドラーは頷いてしまった。目の前でゴヨークが消えたのを目撃していたロドラーでさえ、咄嗟に何が起こったのか最初は理解できなかったのだから。


 だから目の前で見ていないこの3人が、魔法で領主が消え去ったなど…………ましてやその犯人が、この美貌の女性だとは思い至らないであろう。


 一応領主は戻してもらいたいが、この美しくも怖ろしい女性に何も起きなくて良かったとも思ったロドラーであったが、予想していない所から、とんでもない爆弾発言が出てきてしまう。


 タルトを食べ終わったモリーとシュザーが、チョコチョコとアトリとロドラーの方へと近付いてこう言ったのだ。


「ねぇねぇ……さっきのやつもう1回やって!」

「あー!ずるいぞモリー!僕が最初に頼もうと思ったのにー!!」

「へっ!シュザーは遅いんだよ。あのパッと消すやつやってー!」

「うんうん!僕ももう1回見たい!あれ凄かったし!あのちょび髭おじさん感じ悪かったから僕、スッキリし……………ムグウッ!!」


 ロドラーがまだ幼いシュザーの口を慌てて塞いだのだが、遅かった。


【ちょび髭】というとんでもなく自分たちが捜している人物と重なる特徴に、察しないはずが無い。


「い、いまあの子供……何と言った?」

「ちょび髭……消したとかなんとか」

「ど、どういう事だ?詳しく聴かせろっ!」


 アトリの美貌に凍り付いていた3人が、即座に正気を取り戻した様で、口々にシュザーへと詰めよって行く。


「ふっ……ふぇっ………ふぇぇぇ~ん」


 余りにもその3人の形相が恐ろしかったのか、囲まれたシュザーは泣き出してしまった。


 だがしかしそこで終わるはずもなく、3人は泣いているシュザーへと、お構い無しにグイグイ近寄って詰問して行く。


「この程度で泣くなっ!して、ご領主はどこへ行ったのだ?」

「消えたとは、何かの揶揄なのか?」

「もう1回やってとは何をだ?」


「ひっ………ふぇぇぇん!恐いようっ!!」


 お世辞にも優しそうな外見とは言えない容姿の3人に、容赦なく詰問されて、シュザーは泣き止む気配は無かった。


 流石にロドラーもこれ以上シュザーに威圧するならば、止めに入ろうと考えていたのだが、そのロドラーよりも素早く動いた人物が居た。


「ちょっと!うちの可愛い弟をよってたかって泣かすなんて………最低っ!」


 パチーーーーーーーンッ!!!


 1番シュザーに近寄って居た若い男の頬へと、デイジーの渾身の平手打ちが炸裂した。


「ぐ、ぐあっ!!」


 まだ年若いデイジーであったが、日頃から畑仕事で培われた腕力は結構凄かった。そんなデイジーの渾身の平手打ちで、男は後方へと勢い良くすっ転んだ。


「ああっ!ご、ご子息?」

「わ、若っ!?大丈夫ですか?」


 他の2人が、すっ転んだ男へと慌てて駆け寄り、助け起こす。


「く、くそっ!そこの娘ぇっ!俺が誰か分かっての狼藉かっ!」


 打たれた頬に手を当てながら妙な事を言って来る。

 それに対してデイジーは、至極真っ当な事を言い放った。


「はんっ!知る訳ないわよっ!あんたたちは名乗りもしなかったんだから!!」

「な、何て口の聞き方だっ!俺は……俺はだなっ……………………」


 若い男が何かを言おうとした丁度その時、場違いなほど軽やかに、パチパチパチパチと拍手が送られる。




 その音の出所は、やはりアトリであった。





投稿をスマホで行っているのですが、最近このスマホの寿命が来ているのか、打ち込みが突然オートになってずっと【まままままま】とか勝手に打ち込まれたりする………。

最初は心霊現象かと心底驚きましたが、どうやら寿命くさいです。

買い換え時なのか………もうちょっと頑張ってみますか、このスマホで。

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