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言葉が出ないのが流行っているらしい

バサロッ!

↑何かの呪文でしたっけ?急に気になりました。

 



 アトリとの会話が全く噛み合わないので、ロドラーはアトリが貴族なのか確認するのを早々に諦めた。


「………それで、ポゼッショナー様はこのへーゼル村にどういったご用件でいらっしゃったのでしょうか?」

「用件?特に無いわ。でもあえて言うのならば、クッションが止まったのがここだったという事くらいかしら?」

「クッション………ああ、そのマジックアイテムの事ですね?」

「ええ。ああ、ひとつ窺いたいのだけど、ここから1番近い城がある町は何処かしら?」

「お城がある町ですと、そうですね……王都でしょうか?」

「ふーん。そうね、そこで良いわ。王都の名前と方向だけ教えてくれる?」

「はあ……大丈夫ですが、それだけで宜しいので?」

「ええ」


 ロドラーは名前と方向だけでたどり着けるのかと、不審に思ったが直ぐにアトリが規格外のマジックアイテムを所有しているのを思い出して納得した。


「ここからですと……王都はもっと西の方角になります。名前はアイゼンです」

「アイゼンねぇ………聞いたことが無い名前ねぇ」

「ええっ?き、聞いた事も無いのですか?確認とかでは無くて?このロンダリア大陸でもっとも大きいクラウディア王国の王都ですよ?」


 ロドラーはアトリが確認のために王都の方向と、名前を聞いてきたのだと思っていたのだが、よもや聞いた事すら無いなど思ってもみなかったのであった。

 驚きが取れないロドラーへ、アトリは「あー……まあ、聞いた事が無いのは国の名前もなんだけどねぇ」と軽く呟いていたのだが、幸か不幸かは分からないが、ロドラーには聞こえていなかった。


 ロドラーから聞いた情報をアトリはクッションに指示をした。


「聴いてたわね?ここから西の方角にある、アイゼンという王都へと向かいなさい」


 りょうかーい!!と返事をするように、フワッとクッションは舞い上がり、そのまま大空へと飛んで行こうとした。



「ちょっと待てぇーーーーーいっ!!!」


 と、その時突然すぐ側から制止の声がかかる。


 アトリが声のした方を見ると、下品な大きさの宝石を、これでもかと言うほど大量に身に付けたちょび髭の男が、騒ぎながら近付いて来る。


「おいおいおいっ!そこの者!そのマジックアイテムは、うぬのか?」


 ちょび髭はロドラーへと高圧的に問い質す。


「はっ?違いますが………」

「では持ち主が居らんのか?ではこの私の物……………………」


 ロドラーの肩を掴み、無理矢理自分の後方へと追いやると、ちょび髭は背の高いロドラーによって隠されていたアトリと目が合った……―――――――その瞬間、フリーズした。



 ちょび髭はアトリの魔的な美貌を見たせいで、喋っていたまま口をポカンと開けっぱなしで釘付けになってしまう。


 アトリはそんなちょび髭に、怪訝な表情をするとクッションに乗ったまま話し掛ける。


「何かご用かしら?」


 アトリのその問いで、ちょび髭はフリーズから立ち直ると、若干上擦りながらも話始めた。


「ご、ご機嫌麗しゅう御座います。わたくしめは、このへーゼル村を含むウェダッツ領の領主、ゴヨーク・チャビン・ウェダッツで御座います。大変麗しい御方………それにそのマジックアイテムを所有されていらっしゃるとは、貴女様は一体どちらのご令嬢で御座いましょうか?」


 ゴヨークはアトリの手を取り、挨拶をするため恭しく口付けをしようとしたのだが、アトリは無表情で振りほどいた。

 礼儀作法とかは関係無く、ただ単にゴヨークの事が生理的に受け付けなかったからだ。



 しかしそんな事とは露知らず、高貴なご令嬢では有り得ない不作法な態度に、ゴヨークはアトリの身分がさほど高く無い事を悟った。

 そして先ほどの恭しい態度とは、打って変わって態度が悪くなったのである。


 そしてアトリを見下した様に高圧的にこう言い放つ。


「はっ!所詮は教養も礼儀作法もなっていない下賎な女であったか。全く私とした事が、その外見に騙される所であった。やれやれ下手に出て損したはっ!」

「………………………………………」


 ゴヨークの余りにも速い手のひら返しの態度に、言葉もでないアトリであった。


「ほれ、娘!!そのマジックアイテムを私に寄越せ!お主の様な下賎な身分の者が所有しておって良いものでは無いはっ!空を飛ぶ事が出来るマジックアイテムなどは、私のような高貴な身分の者が所有すべきなのだからな!」


 ゴヨークがアトリを、クッションの上から追い出そうと、手であっちに行けと追い払おうとしたその時、アトリが顔に浮かべていたのは極上の微笑みであった。


 そしてアトリはゴヨークに向かって静かに、だが確実に指をパチンと鳴らした。



 勝手な事ばかりほざいていたゴヨークが、一瞬にして皆の眼前から消え去った。



 後に残されたのは艶然と微笑むアトリと、唖然としたロドラー、未だにタルトを味わってちょびちょび食べているデイジーたちのみであった。



「な、ななな………何をしたんですか?」

「消したわ」


 ロドラーが聞くと、さらっと事も無げに消した発言をするアトリ。


「け、消したとは?」

「あら?伝わらなかった?言葉の通りに、消 し た の よ」


 ロドラーが生まれてこのかた35年、本日初めて目の前で人が消え去るのを目撃した。

 頭では分かっている。これは魔法であると。しかし感情が中々追い付かなかった。



 しばらくして平静を取り戻したロドラーは、アトリへと切実にお願いした。


「大変申し訳御座いません、ポゼッショナー様っ!!お怒りはごもっともで御座いますが、先ほどの我がご領主の言葉をどうかお許し下さいませんでしょうか?」

「あら?何故ロドラーが謝るのかしら?あのような低俗な領主、居なくとも……いえ、居ない方が良いでしょう?」

「…………確かにあのご領主は低俗で浅慮でしたが、何も存在ごと消されてしまうほどの悪人では無いと思いますし………」

「そう………優しいのねロドラーは。でも、残念。1度消したものを戻した事は無いのよね、私」

「…………………………………………」


 アトリの爆弾発言を聞いたロドラーは今度こそ言葉を失ってしまったのであった。



 

領民からも浅慮だと罵られるゴヨーク氏。

彼は戻ってこられるのでしょうか?それともこのまま失踪扱いで処理されるのか!?


乞うご期待…………。


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