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第1村人、接近遭遇らしい

 



 クラウディア王国の東にあるヘーゼル村は平凡な農村である。一番近くの町へは馬車で3日は掛かる辺鄙な場所にあり、これといって特産品も無ければ観光地でも無い。だからこの村に外から人が来ることは滅多に無い。


 1ヶ月に1回だけ、行商人がやってくる程度の村であった。

 その代わり村人たちの結束力は高く、性格は皆一様に純朴な者たちばかりであった。



 そんな村の1人であるデイジーは、父親の畑仕事を手伝っており、新しい種をまく畑の鍬で耕していた。


「ふぅ………疲れた~。そろそろ休憩かしら?」


 額から流れる汗を、首からさげた木綿の布で拭うと、太陽の位置で時間を測るため、空を見上げた。


「うーん………もうそろそろ休憩ね!」


 後少ししたら双子の弟たちが、昼ご飯を詰めたバスケットを持って来てくれる筈だと考えて、後もうひと頑張りしようと思ったデイジーであったが、空に何やら妙な物が飛んでくるのに気付いた。


「あらっ?あれは一体何かしら?鳥……にしては随分と大きいわね?」


 じっと見詰めていると、その物体は段々とデイジーの方へと近付いてきている。

 そしてデイジーが居る場所の丁度真上で停止した。


 デイジーがその後いくら待ってもその物体は下りては来ない。

 どうすれば良いのか分からないデイジーは、一緒に畑で作業をしている父親のロドラーに声を掛ける。


「父さんっ!父さんっ!」

「うん?どうしたデイジー?モリーとシュザーが来るまではもう少しあるぞ?」


 ロドラーは慌てる娘が、昼ご飯を求めて自分を呼んだと勘違いする。


「それは分かってるわよ!私が聞きたいのは、あっちよ!あっち!」

「うん……………?」


 デイジーは空に浮かんでいる物体へと、興奮ぎみに指さした。


「な、何だ……ありゃ?」


 デイジーが指さした上空を仰ぎ見たロドラーは、巨大な大きさの物体が浮かんでいるのを見て驚愕し、万一に備えて避難する様に指示をする。



「デ、デイジー………家に戻っていなさい!帰る途中でモリーとシュザーに会ったら、一緒に連れて帰るんだ!!」

「ええっ?父さん……でも……でも……」

「空に妙な物体が浮かんでいるんだぞ?しかもこんな田舎の農村で。間違いなくこれは魔法が関係している。母さんには村長にこの事を伝えてくれと言うんだ!」

「魔法っ!?そんな……い、嫌よ!父さんを残しては行けないわっ!」

「我が儘を言うんじゃないっ!これは我が村が始まって以来の一大事だぞっ!!」

「でもっ………だって……ううっ………」







 巨大クッションでグースカ寝ていた女性は、下から聞こえてくるギャーギャーと騒ぐ声に目を覚まし、眉をしかめた。


「……うるさっ…………くあぁぁぁ~」


 クッションの上で上体を起こしながら大きく伸びをする。

 身体のあちこちからポキッ……ポキポキッと、音が鳴るのに、もう歳かしらね?などと苦笑する。


「あら?止まっているわね。移動が終了したという事は、町に到着したのかしら?」


 キョロキョロと辺りを見回すが、お城や町並みは全く見当たらない。

 ぽつぽつと質素な木造の掘っ立て小屋が点在するのみだ。


「あら?おかしいわね?町と指定した筈ですが?」


 女性は今まで怠けていたせいで、クッションに不具合が生じたのかと考える。


「…………うーん……あり得なくもないかしら?まぁ……壊れたのならば後で直せば良いわね」


 女性が考え込んでい間にも、下ではデイジー親子の言い合いは続いていた。



「だーかーらー!!父さんを置いてけないって言ってるでしょっ!?」

「理解しない娘だなっ!危ないから逃げろと言ってるんだから、素直に分かりましたと言いなさいっ!」

「嫌よっ!それで父さんに何かあったら、身体の弱ってる母さんに何て言えば良いのよっ!」

「弱ってるといっても……あれは…」


 デイジーとロドラーが収まる気配がない言い合いをしていると、畦道から弟たちが昼ご飯を持って来てしまう。


「おーい!父ちゃーん!姉ちゃーん!」

「お昼ご飯持ってきてやったぞー?」


 なにも知らない弟たちのモリーとシュザーが、のんびりとやって来るのに、少し前までお互いに言い合いをしていたデイジーとロドラーは声を揃えて叫びあう。


「「家に帰ってなさいっ!!」」


 普段から父親のロドラーと思春期まっただ中な姉のデイジーは、口喧嘩をしているのだが、今回のものはいつもより緊迫感があった。

 モリーとシュザーは、お互いに首を傾げあったが、直ぐにその緊迫感の正体に気付いた。


「おい、モリー………あれ、何だ?」

「いや、シュザーが分からないのに俺が知るわけ無いよ…」


 モリーとシュザーは、デイジーとロドラーの居る場所の上空に浮かぶ妙な物体を発見する。


 そしてデイジーとロドラーは、真下に居るので気付いて居ない様なのだが、その物体の上に人らしき人物が座っているのを視認した。


「と、父ちゃん!上に人がっっっ!!」

「ね、姉ちゃん!上に人がっっっ!!」


 双子が声を合わせて叫ぶと、その人物がそのまま物体から、デイジーたちの居る下へと落下した。





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