やはりどこかずれているらしい
誤字脱字はいずれ…………………うん、いずれ。
アトリの乗ったクッションは、みるみる内に目的地である城を有する大きな都にたどり着いた。
「ここがデイジーの言っていた、クラウディア王国の王都、アイゼンという場所なのかしら?」
確かに王都とよんでも良いほど広大である。
城を中心に放射状に市街地が広がり、淡い色の建物が外に向かって段々と色濃く建ち並んでいる。
アトリのクッションは、その外側の濃い色の建物が建ち並ぶ場所の上空で停止している。
「中々の広さね。 ここならばあの子たちの行方の手掛かりが、少しは掴めそうな気がするわ」
アトリはふふっ……と小さく微笑むと、指をパチンと鳴らし、クッションを異空間に収納すると、そのまま完成の法則によって落下した。
スタッ。
高い場所から落下したにも関わらず、アトリの着地は静かであった。しかし静かでなくなったのは、アトリの周りであった。
「おわっ!?」
「な、何だぁ?」
「び、美女が上から落ちてきたぞ?」
「ほ、ほぉぉぉ………。こんな下町には不釣り合いなほどの美女だな!」
アトリは直ぐに大勢の下町の男たちに囲まれてしまったのだが、これしきの事では怯まないし気負わない。
優雅にゆったりと歩き始めた。
すると、周囲の男たちがアトリの進法方向へと左右に割れていく。
その群衆の中に、クマワルという猿顔の男が居り、アトリをジッと見詰めながら悪巧みをしていた。
クマワルは下町よりも治安が悪い貧民窟の住人であり、その貧民窟を牛耳るドンテファミリーの一員でもあった。
クマワルもそろそろファミリー内での地位が欲しくなっており、ボスへ媚びを売るために色々と画策している真っ最中であった。
ドンテファミリーのボスである、シバレーは大の女好きで有名であった。
クマワルはアトリをボスへの貢ぎ物とするため、人目のつかなくなった瞬間に拐ってしまうことにした。
アトリほどの美女は、生まれてこのかたお目にかかった事など無い。この女をボスへ献上すれば、下っぱから一気に幹部も夢では無いのでは?と、自らの妄想で大興奮していた。
迷いの無い足取りで歩くアトリの後を、クマワルは付かず離れずの距離でこっそりと追ったのであった。
「あら。何かしらこの匂い………とっても食欲をそそられる匂いですね」
足を踏み入れたのは、路の両端からところ狭しと軒を連ねる屋台の数々であった。
「………見たところ私の虚空内に、収納されていない料理が多数ありますね。どれ、端から購入して行きましょうかしら」
アトリは虚空から数十枚の金貨を取り出すと、美味しそうな匂いを漂わせる串肉の屋台の店主に声を掛けた。
「この美味しそうな串肉を…………そうね、今直ぐ用意出来るだけ頂けるかしら?」
「うん?………っおわっ! とんでもねぇ位のべっぴんさんだな、あんた!」
「ああ、それとその内の10本は、直ぐに食べるからそのままくださいな」
容姿の事については、余りにも大勢の者から称賛され過ぎているので、安定なスルー対応のアトリであった。
「お、おうよ!ちっと計算するから待っててくれや」
アトリと初対面の人間は、まずその魔的な美貌に驚き固まるのだが、この串肉屋の店主は直ぐに持ち直した。中々気骨のある男らしい。
「………………………待たせたな。10本は直ぐに焼けるが、後の用意出来るだけって………150本はあるが大丈夫か? それと金額もそこそこ行くぜ?」
「本数に関しては問題無いわ。 それで? 全部でおいくらなの?」
「1本銅貨2枚だから……………金貨が3枚と銀貨2枚だが………かなりの額だぜ? 払えんのか?」
「これで良いかしら?」
アトリが店主に向かって、用意していた金貨をぞんざいに投げ渡した。
「おっとと……………とぉぉぉぉおおおお???」
アトリから受け取った金貨を見た瞬間、店主は目玉を見開き叫び上がった。
「うるさいわね。 それじゃあ足りなかったのかしら? じゃあほらもう数枚渡せば良いかしら?」
そう言って更に店主へと、金貨を投げるアトリ。しかしそんなアトリへと待ったが掛かる。
「ちょっ、ちょっと待てぇいっ!! こ、こんな高価な代物をぞんざいに投げて寄越すな!」
「あら? そんなに高価かしら?ただの金貨よ?それ」
「あ、ああん? 嘘だろっ? この金貨の価値を知らないのか? これは今から約数百年前のアドミラリ金貨だぞ? 今の価値で言うならばこの金貨1枚で宝貨1枚分の価値はあるんだぞ!?」
店主のその台詞に周囲からは驚きの声が上がる。
「なっ………何だと?アドミラリ金貨、だと?」
「確か貴族の間でも多くの貨幣コレクターが居り、アドミラリ金貨がオークションに出されると、血眼になって競り落とされると言う幻の?」
「いや、ちょっと待てよ。流石に幻とされるアドミラリ金貨を、物凄く美しいつってもただの女が、あんなに大量に所持してるんだ?」
「偽造じゃないか?アドミラリ金貨は価値がありすぎるため、よく偽造されているからな!」
「そ、そうだよな。じゃなきゃあんなにぞんざいに投げたりしないだろ、普通」
「何だ………偽造か………」
周囲のギャラリーたちは、勝手に騒いで勝手に終息した。
しかし何故そんなに皆が驚いているのか、全くわかっていないアトリがこんな言葉を吐いた。
「…………? アドミラリ金貨に偽造とかあるの? それに、数百年前ってどういう事なのかしら?」
10進法採用です。めんどいので。
石貨1枚⇒10円
銅貨1枚⇒100円
銀貨1枚⇒1000円
金貨1枚⇒10000万円
ここから大幅な差が出ます。貴族や豪商しか、殆ど使用しません。
晶貨1枚⇒100万円
宝貨1枚⇒1000万円
であるからして、アトリの持っていたアドミラリ金貨1枚は約1000万円相当となります。
そんなのジャラジャラ持ってる何て正直羨ましい。妬ましい。