突然目覚めるらしい
性懲りもなく……連載を開始。
昼間であるのに全く光の入らない室内のソファの上で、だらしなく寝転んでいた女性がゆっくりと立ち上がる。
「ふわぁ~!良く寝ましたね………」
両腕を上にあげて、大きく伸びをすると指をパチンと鳴らした。
すると、勢い良く室内の遮光カーテンが開き、真っ暗だった部屋へと昼の明るい日射しが入り込む。
そして光りに照らされた室内の汚なさに、女性は怠そうに室外へと声を掛けた。
「フレーン?ミーシャ?」
しかし誰からの返事も無い。普段ならば女性が声を掛けると、子供達がブツブツ文句を言いつつも部屋へと入って来て世話をしてくれるのだが……。
「あら?反抗期かしら?まぁ……どうでも良いのだけど……」
少しおかしいとは思ったのだが、女性はどうでも良いかと考えて、再び指をパチンと鳴らした。
女性が指を鳴らすと、グチャグチャだった室内は嘘のように一瞬で綺麗に片付いた。
ポリポリとお腹を掻きながら、部屋から出ようと扉へ向かうと手も触れずに扉が自動で開く。
のそのそとそのまま廊下を歩いていると、足下に生い茂っている草で転びそうになるが、空中でピタリと静止するとそのまま何事も無かった様に、元の位置へと戻りまたのそのそと歩き始めた。
部屋の外は荒れ果てていた。
足下には草が生い茂り、壁には蔦が幾重にも絡まっていた。そして邸の外壁には大小の穴が所々開いていた。まるで何年……いや、何十年も年月が過ぎ去ってしまったかの様だ。
女性はのそのそと歩いていたのだが、素足で彷徨いていたので、足の裏が痛くなってしまった。女性はチッと煩わしそうに舌打ちをすると、指をパチンと鳴らした。
直ぐに足の傷は消え去り、草や蔦なども一瞬で消え去った。
「はぁ………これは一体なんなのでしょうか?少し寝ていただけなのですが………もしやあの子達のイタズラかしら?」
女性はしょうがないわね?と、言いながら自分の子供達を捜して邸の中を歩くが、どの部屋を覗いてもどちらの姿も見付けられなかった。
流石にのんびり屋の女性も、妙な違和感に気付いた。しかしどうにもずれていた。
「フレン………ミーシャ………どこへ行ってしまったのかしら………。はっ!こ、これがもしや、俗にいう家出というものなの?」
自分の思い至った考えに、間違いは無いと考えた女性は、子供達を捜し出して連れ戻すことにした。
女性が空中に手を翳すと、虚空からずるりと巨大なクッションが現れた。
そのクッションにデレーンと怠そうに寝転ぶと、指をパチンと鳴らした。
クッションは瞬く間に空中に浮かび上がると、邸の穴の開いた壁から外へと飛び出したのであった。
「ふわぁぁぁ……一番近くの町まで……」
女性が指示をすると、まるで意思があるかのように巨大クッションは空を快適な速度で移動し始めた。
「まだ……少し眠いわね……」
そう呟くと、女性はクッションに全身を埋めて寝始めてしまったのであった。
考えるな、感じろ!