クエストと地図
「んで!次はどこに行くとか決まってるの?」
朝食を取りながらミナミはアスカに聞いた。
「そうですねぇ・・・取り敢えず「支部」を移動先として考えると、
次はバルカナの2つ向こうの街「グレナ」に行こうと思っています」
「ふぅぅ〜ん・・・そんなに遠くはないのね?
旅って言うから、結構な距離を行くのかと思ってたわ」
「確かに総距離ではかなり移動するようにはなると思いますが、「次の目的地」は普通の距離になりますよ」
既に朝食を食べ終えたアスカは、メガネをかけながら「無頼のサーカス」に関する資料などを読んでいた。
「アンタってメガネかけるのね」
「調べ物の時とか…読書の時とかだけですけどね」
一つにまとめられている資料を数枚流して読んだアスカは少し感心しつつ言った。
「なるほど・・・報酬はクエストを受注した支部じゃなくても貰えるんですね」
「そうだよ。でもその場合は報酬受け取りまで最長3日くらいはかかるけどね。
・・・ごちそうさまでーす」
アスカは資料をしまって、ミナミの前に置かれた空っぽになった皿を運び、洗い始めた。
「ねぇ?いつ出発するの?」
「今日にでもと思っています」
「ふぅぅ〜ん・・・んんん!?
今日!?!?」
アスカはニコッと笑いつつミナミに振り向いた。
〜〜〜〜〜
「あらぁ〜これから出発なのですねぇ〜」
「はい、アタシもさっき知りました」
支部の談話室へ、
アスカとミナミはルナに挨拶に来ていた。
「では、お二人にお使いがてら、クエストを受注していただけないでしょうかぁ?」
そう言ってルナは、クエストの書かれた1枚の紙をアスカに渡した。
「・・・調査クエスト、ですか」
「はぃ〜。お二人はこれからグレナに向かわれるとお伺い致しましたのでぇ、恐らく「ガードン」経由で行かれるのでしょぉ?」
「はい」
「この調査クエストはそのガードンで最近広まり始めている「黒山羊教団」とゆう宗教団体の調査をしていただくものになりますぅ」
「宗教団体ですか・・・?」
ミナミは少し眉間にシワをよせて言った。
「黒山羊教団・・・って最近出来た教団ですよね?」
と、アスカが呟いた。
「あらぁ、アスカさんはご存知なんですかぁ?」
「いや、たまたまなんですが、
バナデロに来る前にいた「ベルデ」とゆう街で宿が相部屋になってしまいまして。
その相部屋になった方が「ガードン」出身の「黒山羊教団」の信者だったんですよ」
「ならぁ話が早いじゃないですかぁ」
ルナは微笑みを数段明るくして言った。
「受けていただけますね?」
〜〜〜〜〜
バナデロからガードンまでは、舗装された道があり、
商人などの馬車もある程度行き交っていた。
ミナミはアスカに着いてトボトボと歩いており、
アスカの方は、クエストが書かれた紙=クエストシートを眺めながら歩いていた。
「ねぇアスカ・・・あんな安請け合いして良かったのかなあ?
だって宗教団体の調査って、何気にやばくない?」
「・・・ミナミさんはあのルナさんを前にして、断れましたか?」
「いや、無理だ」
「・・・はぁ。
まあ言ってもただの調査任務の様ですし、シートに書かれた「要調査」の部分を重点的に調べればいいんでしょうけど・・・」
そう言うアスカは、シートをミナミに手渡した。
「・・・要調査項目、教団信者総数…教団幹部などの人数または情報…教団の基本活動内容やそのスケジュールなど…って・・・これ完全になんかやろうとしてるよね?」
「うわぁ〜」と、自然にミナミの口から声が出た。
「そういえば、アスカはその相部屋になった人に勧誘とかされなかったの?」
「僕は興味が無いと一蹴してしまったので」
「なるほど・・・」
アスカ達が歩く道は、舗装されているものの、周りの風景はいつの間にか森になっていた。
「ここは…」
「ああ、ここは墨色の森よ。あれってちょうどバナデロを囲む様にある森だからねぇ」
「なるほど・・・バナデロは、隣街とこうして道では繋がっているけども、地図上では外界から隔離されてるように見えるのも納得です」
「隔離・・・?」
いかにも「あぁそうゆうことか!」みたいな顔をしたアスカを見て、ミナミは一瞬、何か不安を覚えた。
「ね、ねぇ・・・アスカって、なんでフルファイア火山に居たの・・・?
バナデロに来る人で、ハーリケン王国の方向から来るなら「北の商業街道」があるわよね・・・?」
「え?でもこの地図では・・・」
そう言って、アスカは古ぼけた地図を懐から取り出しミナミに差し出した。
それを見たミナミの右眉が、無意識にピクピクと動いてしまった。
「あ・・・アンタこれ、誰から貰ったのよ・・・?」
「村を出るときに村長が餞別としてくれたんです。まぁ少し古いらしいですが…」
「少しどころじゃないわよ!このポンコツ敬語ギルダー!!!!!」
ミナミは怒号と共にその古ぼけた地図を真っ二つに破り捨てた。
「んあぁ!!!何すんだオイ!!!」
「少し古いぃぃ???「ワダツミ」も「ドグラニ」も書かれてない地図なんて何十年前の地図よ!!!そりゃバナデロは隔離されてる様に見えるわ!!つぅか書かれてないわ!!!!」
「そ、そんなに古い物なのか!!!??
・・・いや、どうりで地図を見せた黒山羊教団の信者も変な顔をしたわけですね」
「心当たりあるのかよ!!!なぜその時点で不審に思わなかったのよ!
…てかなんで相部屋になった信者も教えないのよ!」
叫び倒したミナミは肩で大きく息をしながら、鞄からスキットルを取り出した。
「酒ですか?」と聞いたアスカに「お茶よ!!」と猛犬の様に言い放ちながら、スキットルの中身を空にしたミナミは、一度深呼吸をした。
「ハァァ〜・・・全く、知識があるのか頭悪いのか・・・」
アスカはと言うと・・・
「・・・アンタ何してんのよ」
「いや、地図は結局無くては困るので直そうと思いまして」
真っ二つになった地図の千切れた部分を合わせて・・・
「単純修理」
呪文を詠唱した。
するとアスカの人差し指がぼんやりと緑色に光を放ち出し、そのままその指で合わせた地図の接続面をなぞった。
光る指でなぞられた部分から地図の断面は消えていき、元の一枚の地図になった。
アスカはそれをミナミに見せた。
「ほらね」
「ほらねじゃないわよ!!!」
ミナミはすぐさまアスカから地図をひったくると、今度は紙吹雪の様に細かく千切ってばらまいた。
「直したのに!?」
「魔力の無駄遣いよ!
もぅ・・・最新版の世界地図はガードンで買えるわょ。
それにガードンへの道もこの道一本なんだから迷う事もないっての」
「なら大丈夫ですね。行きますか」
ケロッとした顔でアスカは歩き出した。
「村長さんの餞別を破り捨てた事は別にいいのね・・・」とは思ったが、また面倒な事になりたくない為に、ミナミは黙ってアスカに次いで歩き出した。
「まぁたそれ飲んでるんですか!!いい加減お腹壊しますよ?!」
「そう。」
「まぁたそうやって「そう」の2文字で返答して!!それ返答になってませんよ!!」
「そ↑う↓」
「イントネーション変えてもダメですよぉ!!!」
「ソウ。」
「声色変えてもダメなんですってぇ!!!」
「・・・やっぱりバナデロのミルクセーキより薄い。」
「なんの感想ですか?!」
「けど・・・」
「・・・ん?」
「安くて多い」
「そろそろ蹴りますよリリィさん。」
「そしたらキナキナを撃ち抜く。」