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白髪の旅人  作者: らくしむす
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白髪の旅人

怪しい雲行きの中、少女はフルファイア火山にて、鉱石採取のクエストを行っていた。


「よっし!こんなもんでしょう!アタシにかかればちょろい任務よねぇ〜」


と、少女はそんな一人言を言いながら

採取した怪しく緑色に光る鉱石を専用の袋に詰めていた。


「さて、帰るか。ちょっと多めに採掘したし、報酬は割り増しかなぁ」


鉱石採取用の道具を片付け、少女は時折噴火するこのフルファイア火山を下山しようとしていた。




山の中腹より少し下あたりで、少女は休憩していた。


日はかなり傾き、そろそろ太陽も顔を隠すところであった。

少し時間かかったかな?などと思いつつ、少女は荷物を持ち上げた。


その時である。


ぐぉぉぉおお!

とゆう凄まじい突風が吹き、少女の頭上を大きな影が横切った。


「な!なに!?」


見るとそれはドラゴン・・・いや、前足が翼と一体化しているワイバーンだった。


「うそ!?飛竜が出るなんで聞いてないんだけど!?」


ワイバーンはしばらく少女の頭上を旋回した後、急加速し、

少女の目の前に降り立った。


「ま、まじですかぁぁあ〜…」


少女は荷物を置き、背負っていた両手持ちの剣を構えた。


「あのインチキ鍛冶屋!報酬倍にしてもらうからね!!!」


少女が構えた剣は、刀身の中心部分は構えた時は墨の様に黒かった物が、内側から赤い光と熱気を放ち始めた。

さながら溶岩の様である。


「ぐおおおお!!!」


ワイバーンの咆哮に少女は一歩後ずさったが、逃げることはなく、深呼吸をひとつして、ワイバーンを見据えた。


「こんの・・・「カッター」には討伐できないって?笑わせんな!!やってやるわよ!!


はぁぁぁああああ!!!」


少女は一直線にワイバーンへ走り出し、横一線に剣を振るった。

しかしワイバーンは、ひょいと容易く太刀筋を見切る。


大振りな一閃により体制が崩れていた少女をワイバーンは見下ろし


その大きな口を開いた。


「ぁ・・・!?」


少女が体制を立て直すよりも早く、その整然と並んだ鋭利な牙が生えた口は、少女に向かって来た。



少女は、自らの死と傲慢さを自覚しギュッと目を瞑った。


ズバァァァ!!!


っと、何者かがワイバーンの左翼を切り裂いた。


「グギャァァァァアァアアア!!!!」


たまらずワイバーンは咆哮し、少女に向けていた顔を左に向ける。


少女はドカッと尻餅を付き、まだ生きている事と、今起こっている事に驚いた。



白いマントを羽織り刀を手にした白髪の青年が、そこには立っていた。


「大丈夫ですか?」


青年は、目の前にワイバーンがいる事を気にしていないのか気さくに少女に声をかけた。


「え?あ、はい」


少女もよく分からず返事を返す。


ワイバーンの方は、左翼の翼膜を切り裂かれており、飛行はかなり困難な様であった。


「さてと、今日の収入源は君ですか」


そう言うと、青年は手に持った刀を構えた。


「ぐおおおお!!!」


ワイバーンは咆哮し、青年に向かって嚙みつきにかかった。


「は!!」


ズシャァァ!!!

「グギェッ!!」



青年の刀の一振りは、容易くワイバーンの首を胴体から切り離した。


あまりの早技に、少女はなにが起こったのか理解できていなかったが、

転がるワイバーンの頭と、刀についた血を拭っている青年を見て、だいたいの状況は察した。


「あ、アナタ・・・ワイバーンを一太刀で・・・!?」


「まぁ僕のいた街の周りにも結構いましたから、別にコイツはたいした相手でもなかったですね」


そう言うと、青年は転がるワイバーンの頭だけを持って下山する道を進もうとしだした。


「ちょちょちょちょっと待って!!!」


「え?」


少女に呼び止められ、青年は歩みを止める。


「これこれ!こっちはどうするのよ!」


少女は、いまだ転がっているワイバーンの身体の方を指差して言った。


「え?・・・別にどうもしないですけど?」」


「はぁぁぁああああ?????!!!!」


「な、なんでしょう?」


少女の盛大すぎるため息に、青年はたじろいだ。


「アンタねぇ!!対象を討伐したら審査員を呼ぶ!!討伐任務じゃ当たり前でしょう!!!」


「審査員・・・ですか?」


「そうよ!」


「いや、僕、別に討伐任務とかでこのワイバーンを倒したわけじゃないので。

単純に今日の収入と、君がなんかヤバそうだったからであって」


「あ、アンタ・・・ギルダーじゃない・・・の?」


「僕はアスカ・アレキサンドラ。ギルダーではなく、旅人です」


白い髪の青年は、その空色の瞳を湛えた綺麗な顔立ちの映える笑顔を少女に向けた。

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