ジョブチェンジ!の予定が女神生誕?
次の探索のお話の予定だったのですが。
翌週の行商は、リリルさんと二人で行ってきた、ネイさんはまだリハビリが必要そうだし、スタンドさん達がいれば危険は無い。新しい家の住み心地も確認したい。
普通に商売をして、仕入れも終え、冒険者ギルドで別れの挨拶をしていた。
「ツグー、やったよ。私ジョブを持てるんだよ。」
リリルさんが大喜びしている。
ギレンさんが笑っている。二枚目が笑うと、嫉妬心も起こらないくらい美しいな。
「この子は、元々充分な基本経験値を持っていた。それがランプータンでの、実践治療の経験で、バードのジョブが解放されたんだ。良かったな。おめでとう。」
「じゃあ、教会で承認して貰えば、バードになれるよ。」
ギクっ、嫌な思い出が浮かんで来る。カード作った時、ここの教会にはいい思い出が無かったんだ。
またあんな目に会ったらどうしよう?
「すみません。私ここの教会に嫌われてるみたいなんですけれど、ギレンさん代わりにこの子の引率お願いできませんか?」
「幾ら何でも冒険者のジョブチェンジを、そこのギルマスが紹介するのはマズイだろう。住み込みの職員でもない限りな。」
「はあ、それもそうですね。」
「でも、今のお前には、貸し一個覚悟すれば、最高の推薦人のアテがあるだろう?」
「ええっ、誰ですか?」
「サリーダだよ。商業ギルドマスターで、連合商業組合長の紹介なら、教会の誰でも文句の言いようが無いぜ。」
そうだった。 サリーダさんキモチワルイけど、凄い人だったんだ。
「でもちゃんと予約を入れろよ。あいつもそこそこ忙しい筈だからな。」
帰宅する予定を変更して、家の賄いを変更して貰い、商人ギルドに向かった。
「サリーダさん!お願いがあるんですけど。」
サリーさんがすっ飛んできた。
「何ですか、ご宿泊なら、前回の5パーセント引きで受け付けますよ!」
カードを渡した後用件を伝える。
「いえ、この子のジョブチェンジの証人の、立会いをお願いしたいのです。私では初めての為、不備があったらいけないので。」
「わかりました。マスターに聞いて参ります。でも、宿泊の際は薔薇の花亭をよろしくお願いします。」
うん、承認に時間がかかるなら、リリルさんだけ泊めてもらっていいね。御褒美リゾートだよ。
「あらまあ、ご用事なのー?」
ドッドッドッという爆音と共に、サリーダさんが現れた。
「うん、そういう慎重さは良いわね。前回の失敗を反省しているのも良いわ。普通なら職員を見届けに出すんだけど、今回は私が行ってあげるわ。」
えー!忙しいんじゃないですか?
「だから、空きが出来るのは、明日の午後からね。それまでこの街を堪能して行きなさい。あなたは家があるから良いけれど、そちらのリリルさんは王都休日体験は初めてでしょう。せっかくですから楽しませてあげなさいね。」
チーン。薔薇の花亭お一人様ご案内だ。お一人様なのでスイートでなくて良い。ファーストでお願いします。
私は自分の家で寝よう。自分の接待は必要ない。
翌日、食後のリラクゼーションタイムの後、リリルさんと一緒に商人ギルドに行った。
リゾートタイムは1日でちょうど良いらしい。リリルさんはちょっとポワンポワンしていたが、受け答えはちゃんと出来た。相変わらず三十倍効果てきめんだ。あっと、今回はスイートじゃ無かったから十倍効果だった。
元の国でドバイとかでファーストルーム頼むと、この3、4倍じゃあ効かないらしいから、この国の物価は安いのかも知れない。
サリーダさんと一緒に、教会へ向かう。流石に、今回はいきなり凄く偉そうな人が出てきた。
法会っていうのかね?普段着ないような重ね着をして、ヒゲだけでなくまつ毛も長いぞ。
「それでは、この娘さんのジョブチェンジをするだけでよろしいのですね。連合商工会長様のお越しとの事なので、どんな騒ぎかと思いましたが。」
「やって貰う事が重要なんじゃ無いのよ。それをされる人間が重要なのよ。私の見届けを必要とするぐらい、この子を大事に思っている人にお願いされちゃったから。」
「成る程、サリーダ様らしいお考えですな。それでは私、法僧長ルフエルフィフトが、リリル様をジョブチェンジし、バードと認定致しましょう。カードの掲示をお願いします。」
リリルがカードを渡すと、白髪の爺さんが持ったカードが光り出し、暫くすると収まった。
「おめでとう。これから君は、バードじゃよ。」
「本当だ、カードのスキルに、バードがついてる。やったよツグ、私バードになれたよ。」
「よかったわね〜、カードに私が裏書してあげるから、ちょっと貸してね。
これで良し。ギルマス以上の権限がなければ、これでスキルをいじられないで済むわよ。」
「ありがとうございます、サリーダさん、そしてツグ。これからは立派なバードとして、頑張っていきます。」
「あれ、ちょっと待って、そのカードもう一度よく見せてくれない?バードのスキルの所に、変な模様があるんじゃないの?」
「うそ、これはハイバードの紋章。」
サリーダさんが驚いている。
「こんなの聞いたことないわ。確かにハイバードはバードの上位クラス。バードで研鑽を極めた者が昇級するクラスで、十年も修行した者なら、なれるクラスではある。でも、初めてクラスアップしたバードが、いきなりハイバードだなんて。空前絶後、前代未聞よ!」
実は、俺だけが理由を知っていた。リリルのカードが承認された瞬間、パーティー全員のスタンドからエネルギーが抜けていくのを感じた。きっとみんなからの、リリルへのおめでとうのプレゼントだったのだろう。
結果、バードとして承認されたリリルは、すでに余りある経験値で、ハイバードに昇格してしまったのだ。
説明も出来ないし、解説も出来ないけど、此処は申し訳ない。サリーダさんにはこんな事もあったんだね、と思っといて頂こう。
暫くサリーダさんとルフエルフィフトさんはアワアワ言っていたけれど、後年この時の事をこう語る。
「我々は、神がいる事を知らされたのだ。」
『ああっ、女神様』と呼ばれるリリル女神の誕生に立ち会った二人は、この事をとても光栄そうに語ったという。
ベルダンディになってしまった。




