行商人って、どうよ。
行商中は馬車が家だったんだよね。
ランプータンに帰ってきた。色々仕入れたものはあるが、此処でふと気づく。
「やべえ、売る店が無い。」
勿論今から店の手配をしてもいいが、店を持ったら売り子の手配もしないといけないし、売上に合わせた税金の支払いも必要だ。他にも色々手続きをしないと。
面倒くさい。こんな時は丸投げだ。
「すみません、フェルナンドさん呼んでください。」
とりあえず、唯一知り合いであるこの町のお偉いさんを呼び出してみる。
私達が証を取り戻した事はみんな知っている様で、すぐにフェルナンドさんを呼んで来てくれた。
「おお、ツグ殿、どうなされなったか?」
「フェルナンドさん、実は王都との交易を始めたのです。こちらの商品は王都の商業ギルドで引き取って貰えますが、王都で仕入れた商品を売るツテがありません。どこか紹介していただけませんか?」
「何と、そう仰られても我輩は所詮しがない警備兵。商売にはとんと経験がござらん。誰か紹介するといっても、この町には商人ギルドもござらんし、、、」
フェルナンドさんも絶句する。
「隊長、マイヨネス商会はどうでしょうか?」
副隊長らしい人が発言する。
「あそこは最近町への寄付も多く、商いの規模も大きくなっております。」
「マイヨネスかー、あいつは昔から、なんか信用が置けないんだよなー。」
「でしたら、ネルフーリ商会は如何でしょう。」
別の副隊長さんの意見だ。
「ネルフーリかー。あいつも儲けに煩いしなー。」
「ではせっかくツグ殿が仕入れてきていただいた商品を、どうやって処分致しましょうか?」
「うん?ツグが王都から仕入れて来た商品?それを国民の手に届ける手段?」
「よし、決め申した。ツグ殿の商品は全て政府が買い上げさせて頂くでござる。税金を引いた分の金額は、ギルドカードに振り込ませて頂く。商品は検品後、各商店の自由入札で処分致す。自由入札となれば多少物価は上がるでござろうが、売るものの無いデフレの状態よりずっとよろしい。多少のインフレは、経済に活気をもたらすでござるよ。」
「え〜〜、防衛隊が商売始めちゃうんですか?」
「馬鹿なことを申すな。ちゃんと経済担当職員を紹介させて頂く。会計の取引はそいつとして頂きたいのでござる。」
担当の人は、証を届けた時の人だった。
「改めて、自己紹介致します。商業局長のフレイヤと申します。
ツグ殿には、税金を引いた分の取引金額を振り込むと言われたらしいですが、先日のお約束通り税金は一切頂きません。
お話では、2ヶ月に一度の定期通商との事でしたが、間違いありませんでしょうか?」
「仕入れの具合にもよりますが、今の所はその予定です。」
「では、それまでに、こちらの希望購入品リストを作成しておきます。流石に取引実績の無いツグ殿に、予算は預けられませんが、リストの範囲内で買い上げできたものは、すべて私達が引き受けます。何度か取引が安定してくれば、どうしても必要な分はこちらが予算を用意して購入を依頼する事になります。どうぞ宜しくお願い申し上げます。」
「これはこれはご丁寧に。2ヶ月後に素材の仕入れが済んだら、また伺います。」
役所を出て気付いた。
「やべえ、家がねえ。」
本宅買う前に別宅買っちゃてたんだね。




