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破壊神になってしまった  作者: とむでし
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選択の自由、使えねえ。

とりあえず、ここまでがプロローグです。

 目覚めは快適だった。

 俺は今日からこの世界で、最強魔法を使い、ヒャッハーしていくのだ。

 でもまずは、朝メシを食わなくちゃ。

 何度もオズワルドさんに奢ってもらう訳にはいかない。

 今俺は一文無しだし、飯代が無い。

 だが、俺には絶対安心(モウマンタイ)のアテがある。

 昨日失神する寸前に見えた魔法名。それを使おう。

「クリエイトマネー1万」


 プヒュ


 あれ、何も起こらない。

 俺が覚えている魔法は、失神する前に出たものだから、かなり初級のはずだ。魔法力∞の俺が失敗する訳が無い。

 慌てて俺は、クリエイトマネーの確認をしてみる。

「確認、魔法名、クリエイトマネー、表示。」


 クリエイトマネー:LV1:魔力1・この世界で使えるお金を生み出します。必要な額に合わせて使用魔力は変化します。


 あ、そうか。まだ俺のレベルは低いんだ。いきなり1万は強欲だったか。まずは朝メシに必要な額だけにしよう。

「クリエイトマネー500」

 俺の金銭感覚では、一食にかける金額はワンコイン。牛丼一杯か、○ックモーニングセットが基準なんだよ。


 プヒュ


 また何も起こらない。何故だ?

「選択の自由さん、何故魔法が失敗するのですか?」

「魔法の成立条件を満たしていません。成立条件を満たさない選択は、選択できません。」

 どうやら何かが不足しているらしい。

「俺のレベル表示。」

 LV1:経験値0

 レベルは条件を満たしている。

 だとすると、昨日のステータス表示を思い出すと・・・

 魔力0

 これが原因だ。俺は魔力が上がるまで魔法は使えない。

「選択の自由さん、どうやったら魔力は上がるのでしょうか?」

「経験を積む事により、レベルは上がります。レベルが上がれば、魔素拡張能力に応じて、魔力は上昇します。

 ただし、あなたの生まれた世界には、魔素は存在しません。よって、あなたの魔素拡張能力は0です。

 ですから、あなたはどれだけレベルを上げても魔力を上げる事は出来ません。」

 そんな馬鹿な。俺は全ての魔法を使える知識を持ちながら、実行する事は出来ないのか。

「だったら、魔素拡張能力を上昇させる手段は何ですか?」

「方法は一つしかありません。魔力1000を消費して、魔素拡張能力拡張の魔法を使う事です。この魔法は、魔素拡張能力の上限を1上昇させる事が出来ます。」

 そんなの、最初から魔力1000なきゃ出来ないじゃん。

 でも、俺は閃いた。

「マジックアイテムがあるでしょう。魔力回復出来るような。それを使えば魔力上がるんじゃないですか?」

「この世界の人々は、魔力が0になると、魔素拡張能力に障害が出て、失神します。あなたは魔素拡張能力が無いので、魔力0でも活動に支障がありません。しかし、この世界のMP回復アイテムは、残っている魔力を増加する効果しかないのです。魔力1の状態でも、最高の回復薬エリクサーを使えば最大で1000まで回復します。でも、魔力0の状態でエリクサーを使っても、魔力は0のままです。0にどんな数を掛けても0なのです。」


「では、魔素拡張能力を取得する手段は無いのですか?仙人の元で修業するとか、7つの玉を集めて、竜にお願いするとか、特殊な呼吸法で波紋を作るとか、石の仮面で人間やめるとか、魂を斬る刀の能力を解放するとか、海賊王に俺はなる、とかいった・・・」


「何ですかそれは?後天的に拡張能力を取得する手段はありません。特に最後のは意味があるのですか?」

 すみません、発想が跳躍(ジャンプ)してしまいました。


 あーもういいや。お金も魔法も使えないなら、仲間に頼ろう。


 3番目の希望


「友達100人できる世界に転移したい。」

 お金でも、魔法でも、ヒャッハー出来ないのなら、せめて仲間を作って楽しく暮らしたい。

「その選択には意味がありません。すでにあなたはその希望が叶えられる世界にいます。ちなみに、今まで転移した世界全てが、その条件を満たしています。」

「もしあなたが、友達100人しかできない世界への転移を希望されるなら、現在の状況では、負担が大きすぎます。回復に、200年を必要とします。」


 なんですとっ!この世界なら友達100人できますかっ!今までボッチ続けてきた私がっ!それも前の世界でも出来たって。だったら200年我慢して大金持ちで沢山のお友達と遊ぶ選択もあったかも。


「ちなみに、巻き戻しは出来ないって言ってたけど、前の世界に戻る選択にはどのくらいかかるの?」

「前の世界に戻る選択は存在しません。なぜなら、前の世界はすでに消滅しているからです。」

 ええっ、何で?

「なぜ消滅しちゃったの?もしかして俺が転移した所為?」

「転移行為自体は問題ありません。ただ、転移完了直前に、あなたが世界の消滅を選択されたので、その瞬間に世界は消滅しました。」


 えええええっ!何で?

 そういえば、転移する時、無くなっちゃえばいいのに、と思ったはずだ。でも、世界転移には警告されたのに、世界消滅は一瞬なんてどういう理屈なの?

「なぜ、世界消滅には警告メッセージが無かったの?」

「世界消滅は一択ですから、負担が小さいのです。選択肢が多いほど、負担は大きくなります。世界転移をするには、あなたが生存出来る世界を選択し、更にあなたの希望に合う世界を細かく選択し続けなければなりません。ちなみに、世界転移に必要な負担は、あなたのMAXの40%です。すでに2回世界転移をしていますので、次の世界転移には最低200年を必要とします。」


 なんてっこった。俺は前回転移した時に、その世界と出来るかもしれなかった100人の友達を消滅してしまったのか。

 すまない、と思うが、案外罪悪感は無い。だって知らない世界だし。


 問題は、世界転移に必要な負担だ。200年経たないと次の世界転移が出来ない。

 魔法が存在する世界で、全ての魔法を知っている俺が、全く魔法を使えない状態で、200年生き抜け、という無理ゲーだ。

 でも救いはある。

 俺のステータスが200人力だということだ。これだけステータスが高ければ、おそらく寿命だってなんとかなるだろうし、生き延びるだけならなんとかなるかもしれない。


「選択の自由さん、どうして俺の基本ステータスはこんなに高いの?」

「それは、あなたが魔素拡張能力を持っていないためです。この世界では生命が誕生する時、その特質に合わせてステータスが配分されます。あなたにはこの世界で重要とされる魔素拡張能力が無かったので、その分他のステータスが補強されました。あなたの基本ステータスは、人族の数値としては最大です。割り振り切れなかった分は、全て魔法力に配分されています。ですから、あなたの魔法力無限大は、本当の意味で無限大なのです。あなたが現在許容できる魔法力を越えた量の魔法力を使用しようとすれば、すぐに余剰のステータスから必要分が補充されます。あなたの余剰ステータスを使いきれる、強大な魔法力を必要とする魔法は存在しません。

 だから、あなたの魔法力は無限大なのです。」


 だから、、、魔力ゼロの俺には、その奇跡の魔法力を発揮できるチャンスが無いんだって。


 でも、基本ステータスが高い理由は分かった。

 やはり俺は、基本ステータスの高さで、この世界でヒャッハーするしか無いようだ。


 どっかの国の守護神として、食う寝る住まうを提供して貰い、ピンチの時だけ手伝ってやる事で契約してくれるかもしれない。


 その為には、この世界の相手の強さを知っておかないといけない。

 中には、魔王や四天王的な、トンデモ強者がいるかもしれない。

 そんな奴と出会ったら、逃げる一択で。

「表示、俺よりステータス強い奴、名前」


 失神した。

 頭の中に一気に名前の無い情報がなだれ込んできて、オーバーフローを起こした。

 目が覚めた時、ここが安全なキャンプで良かったと、ホッとした。

 いやいや、俺はこの世界で200人力。そんなに俺より強い奴はいないだろう。

 何か指定のやり方を間違えたかな。

「表示、俺よりステータス強い奴、数」

「202976」

 はあっ?二十万?


 なんでそんなに沢山強い奴いるの?200人力は役に立たないの?

「選択の自由さん、教えてください。なぜこの世界には、そんなに沢山の強い奴がいるの?」

「それは、種族の違いによります。あなたが先ほど指定した、[この世界の人間]というのは、種族として強い存在ではありません。種族の持って生まれた先天的な能力の差で、絶対的なステータスの合計値の差は存在します。」

「ちなみに、どんな種族が強いステータスを持っているの?」

「この世界における絶対の強者は、ドラゴン族です。生まれ持った基本ステータスの強さだけではなく、ステータスを上げられる上限値の高さで、ドラゴン族は抜きん出ています。

 続くのは、魔族と呼ばれる集団です。実は魔族という種族があるのではなく、ステータス上限値の限界を突破する方法を身につけた種族が、総称としてそう呼ばれます。

 ですので、魔族に外見的な共通点はありません。魔族同士でも仲間意識は少なく、意思疎通が不可能な種族もいて、共闘する事があまり無いため、数では勝っていてもドラゴン族の下とされています。

 その次にステータスが強いのは、魔物と呼ばれる生き物です。生まれつきこの世界に適応した高いステータスを持ち、本来ならこの世界の支配者と成っていてもおかしく無い生命体の総称です。

 ただ、理由は不明ですがドラゴン族が存在し、魔族になれた他の種族がいるため、基本ステータス頼みの魔物はこの世界では支配力はありません。一部のダンジョンで、限定的な支配をする者がいるのみです。


 ここからはグッと基本ステータスが下がります。その代わり、存在数は3桁ほど多くなります。

 人族、と呼ばれる集団です。人族同士では、外見や能力の違いから色々な区別をするそうですが、同一の言語を使い、意思疎通が可能である、という意味で、総称して人族とします。

 人族は基本ステータスが低いため、共闘して戦う事を得意とします。比較的他種族に比べ、知性のステータスの比率が高いらしく、魔物や魔族にも対抗して、圧倒的な数の差で、自種族の影響力を広げています。

 現在、この世界で一番の勢力を持っているのは、人族でしょう。ただ、その理由は、ドラゴン族や魔族が自種族の事にしか興味が無いためだけであり、魔物も数が多いだけの人族に攻められない限りは、あまり関わりたく無いと思っている者が大半だからでしょうが。

 次に続くのは動物。知性はあるものの、理性を持たない集団。基本は本能に従い、自分の生活圏を広げ、安定させる事を目的とする生物です。数は最大ですが、統率はほとんどなく、他の生命体からは種族的な脅威としてはみなされていません。ただ、一部には魔族に迫るステータスを持つ特殊個体もいて、人族には災害扱いされています。」


「他にも沢山の種族が存在しますが、質問に対する回答としては、この範囲で充分だと考えられます。」


 なんてこったい。この世界には200人力の俺より強い奴がドラゴン族、魔族、魔物、人族、動物合わせて20万以上存在するのか。

「選択の自由さん、それじゃあ俺はこの世界で生き残れないのか?そんなに沢山の強い奴がいるのなら、逃げ切れ無いでしょう。」

「いえ、そんなことは無いと考えられます。あなたよりステータスが強い存在は、確かに20万以上存在しますが、それらに関わらないよう生活していくのは、それ程難易度の高い選択ではありません。」

 どういう意味だ?

 俺より強い奴に関わらない?


 その時天啓(イメージ)が舞い降りた。

「本当の護身を極めると、危険な場所にはいけなくなるのだよ」


 なんのことは無い。好きだったマンガのセリフのパクリだ。

「選択の自由さん、それ採用です。俺に敵意を持った俺より高いステータスを持つ存在が、俺の前に現れる事が出来無くなる事を選択します。」

 本来の意味は、自分が危険な場所には行けなくなる、なんだけど、なんか行動を制限されるみたいでイヤだったから、言い換えてみた。


「それは大変難しい選択です。私が言った簡単な選択とは、強者に関わらない事。世界には多くの生き物が存在し、自分より強い存在がいる世界でも、大半の者は普通に生活しています。なので、強者に関わらない生活を送る事は簡単な選択なのです。

 それを、強者に関わるのを前提にして、自分の前には存在出来なくするという選択は、大変難しい選択です。

 しかし、あなたへの負担は、ギリギリで条件成立をクリアしています。

 選択を実行出来ますが、その際のデメリットをお伝えします。

 20年の間、あなたが行使できる選択の自由は、YES or NO で選択出来るものだけとなります。それ以外には、単純な回答があるものしか質問出来ません。

 2段階以上の選択を組み合わせた選択は、実行出来ません。

 この条件を受け入れた上で、選択を実行しますか?

 実質的に選択の自由の完全行使ができる最後のチャンスなので、確認させて頂きます。」


 おう!なんてこったい。これを選択したら次からの選択が大幅に制限されるらしい。

 でも、この世界から別の世界には200年移転出来ない。200年生き延びないと次の可能性も無い。生き延びられればもっといい世界への移転もある。20年生き延びられればまた新たな選択の自由が出来る。

 いのちだいじに。

 今は、強いヤツに殺されないよう、生き残れる事を最優先にするしかない。なにしろ20万も俺より強いヤツがいる世界なのだから。


「選択を実行します。俺に敵意を持った俺よりステータスが高い存在は、俺の前に現れる事が出来無くなる事を選択します。」

「わかりました。選択を実行します。」


 プヒュ


 目の前にあった木が何本か消えた。




「選択の自由さん、何が起こったのですか?」

「あなたの選択は実行されました。あなたよりステータスが高い存在はあなたの前には存在出来なくなりました。今消えた木は、何万年も齢を重ねた木で、総合ステータスではあなたを超えていたのです。あなた方人族に生活圏を侵害され、生命として敵意を持っていました。よって、あなたの前で存在出来なくなったのです。」

「ちょっちょと待ってよ、オニーサン!俺より強い存在は、種族がドラゴン、魔族、魔物、人族、動物だけだったんじゃ無いの?」

  「あなたよりステータスが強い存在のみを説明しました。それ以外にも、あなたよりステータスが高い存在はいくらでもあります。」





 理解した。


 俺は指定する言葉を間違えたのだ。俺よりステータスが強い存在と出会わないようにしたかったのに、俺よりステータスが高い存在と出会えなくなってしまった。

「選択の自由さん、選択の微調整は出来ませんか?指定したフレーズの、高いと強いを入れ替えるとか。」

「先ほどお知らせした通り、後20年間は二択の選択以外実行出来ません。その選択は選択出来ません。」


「では、20年後にまたお話しできることをお待ちしています。」


 選択の自由さんは沈黙してしまった。その後、何度か話しかけたが、頭の中には、YES or NO のボタンしか表示されない。


 200人力の力を持ち、俺より強い奴は俺の前に現れる事が出来ない。でも生活能力は一切無い。


 なんてこったい。俺は


 破壊神になってしまった。





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