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第8話 魔法の練習その1

 今日も今日とて畑仕事だ!

 畝に種をまき、畑に棒をさし網を張る。

 ついでにすでにある畑の青虫をせっせとつまみ出す。ちなみに木の枝を折って箸のように使い、地面に落とし踏みつける。働きに働いているはずなんだが、あまり役に立てている気がしない。いや、役に立って入ると思うんだけど、ミントが魔法で植物を成長させているのを見ると俺のやっていることって些細なことだと感じてしまう。いつも寝てばかりいたお前はどこに行ったのか。

 そして午後からは牛の薬づくりに精を出す。

 牛の薬は俺に任せたようで、ゴコウさんは別の薬草を煎じている。

 牛のエサの時とは違う真剣なまなざしで作業をしている。作業の手際もいい。おそらくそうでなくてはならないのだろう。すべての作業の合間すら集中を途切れさせていない。

 薬品をビンに詰めたところで一息つき。そのビンは棚にしまわれる。今日客が買った薬を補充したようだ。

 しかしまあ、ゴコウさんはかなり腕の良い薬剤師なんだろう。

 ゴコウさんは牛の薬をもって出て行った。おいていかれた俺は時間を持て余す。昨日は作ったものが、どんなものかを見せるために連れて行っただけなのだろう。牛舎は臭いし気を使ったのだろう。

 さて、この自由時間に何をするか。

 ひとまず精霊たちにケーキをご馳走しておく。ワンホールではなく部分的に召喚が可能だということに気づき、精霊たちに必要な分だけの少量だけ出した。ろうそくなんて出しても表立って使えないからな。

「さて、食べてる間に俺は俺で試してみるか」

 試してみるのは魔法だ。食べている間なら精霊たちの邪魔は入らずに試せる。

 ゴコウさんが通信の魔法らしきものを使っているし、精霊たちも魔法を使っている。ならば俺も使える可能性があるはずだ。

 何の魔法を使うべきか?

 水はやめておこう。

 酒は出せるが水を出すことができなかった。魔法で水を出すのと酒を出すのとは勝手が違うと思うが、わざわざできなかったことで試すことはない。

 とりあえずオーソドックスな属性、火属性を試すことにする。

 しっかり周囲に燃え移ることのない広い場所を選び、水を桶に三つ準備した。

 目の前で人差し指を立て集中する。

 魔法には“力”が必要である。

 俺はそう感じ取っていた。ゴコウの通信の魔法も精霊たちの魔法もおそらく魔力と呼ばれるようなものがあふれていた。

「俺自身にもあるはずだ」

 魔力の実物を見て、確信に近いものをすでに持っている。あとそれをどれだけ操れるかという問題だけだ。

 魔力を指先に集中する。

 精霊たちが使っていた魔力と比べればほんの些細な魔力。

「炎よ」

 おお! 一瞬だけだが指先に火が出た。

 ケーキと酒しか出せない残念異世界人の可能性も十分あったのだから、ライター程度の炎でも魔法が使えたのは大きな進歩だ。

 とりあえず、このまま火の魔法を継続することを目標としてみる。

 これがまた難しかった。一定の量の魔力を供給することが難しい。

 なるほど、最初に水を出すことに失敗した理由がよくわかる。使う魔力の量が少なくなれば維持できなくなり、集中力が途切れれば簡単に炎が揺らぐ。

 ケーキを出した時と同じようなお手軽な感覚では出すことなどできないはずだ。

「よし、それじゃあ水も出してみるか」

 リベンジである。桶の上に手をかざし魔力を集中する。

「水よ」

 唱えた。

「……なんかこっちに来てから毎日何でだ? と思ってる気がするよ」

 水は一滴も出てくれなかった。

 俺には水の魔法の才能はないらしい。

 さらに、ほかの魔法も試してみる。

 火、水と来たなら当然次は草だ。当然かは知らないが。ということで植物も試してみるか。畑の薬草に手をかざして、祈る。

 はぁあああ育てー!

「ダメ……、だと……」

 畑の薬草はピクリとも動かなかった。

 ……気合い入れると失敗する法則でもあるのか。

 いい加減、できないことが多すぎて涙が出そうだ。大体火より、草や水タイプのほうが好きだというのに……。

 次は氷。

 んー、ダメか。わかっていたよ。俺氷タイプも好きだからな。どうせ好きなもんはだめなんだろこれ。

 他にも試してみるか雷は、おお? ピリッと来た。気のせいとかただの静電気とかじゃないよな。

 この調子で、土はどうだ! あかん。まじで好きなタイプに嫌われるパターンかこれ。

 次は風だ! これにかける! 俺に風プリーズ! そよ風も発生しないとな。

 ……よし、期待するのはやめよう。

 異世界来たけど魔法使いになるのをあきらめよう。

 だけどいつか魔法使いは卒業したいな。

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