調査開始
依頼から1週間たった。
結局所長は今日の早朝まで帰ってこなかった。
眠そうにあくびをする所長を眺め疑問をぶつける。
「1周間、何してたんですか?」
所長はへらへら笑って、ちょっとね。っと答えた。
所長はいつもそうだ、いつも誤魔化しているような、真実を言わない。
まあ、大事なことは聞かなくても教えてくれる人だ。
ごまかしているという事は、僕に関係のないことなのだろう。
「ねえ、依頼者は仕事やめちゃったんだよね。」
所長が僕に問いかける。
僕は、用紙を取り出した。
確かに、この件で仕事をやめてしまったらしい。
「そうですね。」
仕事をやめざる負えないほど、辛いのだと思うと早く解決してあげなければと感じていた。
毛頭、解決するのは所長である。
彼女が住んでいると言うマンションに近づくと、人影が見える。
「依頼者はかなり参ってるようだね。」
所長がつぶやいた話の意味が最初理解できなかったが、マンションについた時理解できた。
マンションの入り口で依頼者が出迎えていてくれた。
「今日で解決してあげるから。」
所長はそう言って、彼女の部屋の中へ入っていく。
家の中はあまり広くない。
玄関にキッチン、トイレにお風呂、そしてリビングと寝室を兼ねているような部屋。
所長は部屋を見回して言い放った。
「このマンションは良くない。引っ越しすることを進めるよ。」
そう言って、頭を掻く。
依頼者が絶句している。
仕事をやめた今、引っ越しなど早々出来るはずなどない。
「そうだな、1年かな。」
所長はそう呟いて、数珠を取り出す。
「マンションに霊は憑いているんだ、それを払うのは骨が折れる。」
そう言って所長は、手を合わせる。
「結界を張る。」
今回は早く終わる。
所長は大きい仕事になりそうだねと言っていたが、
外れたなと僕は感じた。
そして、依頼はあっさり終了。
「じゃあ、夜無事に寝れたらこの紙を開いて読んで。」
そう言って、所長は依頼者に紙を渡す。
何が書いてあるかは分からない。僕は、妙に気になった。
所長がなにか企んでいる気がする。
「何を渡したんですか?」
そう聞くと所長は綺麗な笑顔で、
「なーいしょ!」
と言った。
不覚にも可愛いと思ってしまったではないか。