依頼内容
依頼者の方はあまり寝ていないのか、目の下のくまが酷い。
細いを通り越してガリガリである。
今にも倒れてしまいそうな、そんな女性である。
「この用紙を記入してください。」
そう言って、僕は依頼者にいつも渡している用紙を差し出す。
所長はと言うと、ソファーでふんぞり返っている。
「なにか見えますか?」
僕は所長に小声で問いかける。
所長はいわゆる霊感というものがある。
「うーん、憑いてるのはこの人じゃなく家だと思う。」
そう呟いて考え始めた。
「終わりました。」
依頼者がそう言って、紙を差し出す。
僕は、それを受け取ってお決まりの質問をする。
「具体的に依頼内容を教えてください。」
僕はそう言ってボイスレコーダーをつける。
記録を残さないと、何かあった時に困る。
それにメモより効率がいいと僕は考えている。
「実は、寝ているときに金縛りが起きるんです。」
そう言ってポツポツと喋り始めた。
何でも、寝ているときに足を引っ張られてしまうんだそうだ。
そのため夜は眠れない。
家にいると四六時中見張られている気がして落ち着かない。
そんな状況のためご飯もあまり食べれなくなってしまったそうだ。
僕は、聞き終わり所長に顔を向ける。
所長は用紙に目を通している真っ最中である。
「家族は母親と父親。一緒に暮らしているの?」
所長は用紙から目を離さず問いかける。
「いえ、ひとり暮らしです。」
所長は、頷きまた口をつぐむ。
僕は、特に話すこともないので黙って所長の様子を眺める。
「都合のいい日はいつですか?」
所長はまたもや用紙から目を離さず問いかける。
「いつでも大丈夫です。」
依頼者は答える。
「では、一週間後に伺います。」
所長はソファーから降り、外に向かう。
「準備のため。2、3日事務所を開ける。」
所長はそう言って、依頼者と僕を残し出て行った。
俺は依頼者に帰っていいことを伝え、事務所の扉にCloseの看板をかける。