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魔法と力、なんとなく書いたやつ、

作者: fairyhunter

「レン!いい加減そんな低級魔法使えるようにしろ!」

女性がそんな声出せるのか?ぐらい怖い声で俺を怒鳴る。

「ちょっとまってくださいよ先生~、もうちょっとで出そうなんです」

正直出る気は全くしないが、これくらい言っておかないとさらに怒られるのは目に見えている。

「いや・・・。出るとか出ないとか、そういう種類の魔法ではないんだがなぁ?」

「え?そうなのか?」

クラスの全員が笑い出す。

「え?先生、これって火の玉をだす魔法じゃ」

「ちげぇよ、でねぇよ、色を変えるんだよ!この水の!干上がるぞ!」

またもクラスの全員が笑い出した。

「とりあえずレン、居残りな」

クラスメイトは笑っており、真剣な雰囲気ではないのだが、先生の威圧感だけは全く変わるところをみせない。

「えー、勘弁してくださいよ」

「うるさいな、留年したいのか?」

これはいかなかったら本当に留年させるのではないか?と本能的に感じた。

「行きます。絶対行きます」

「よし、なら今日の授業はここまで、レン以外は帰っていいぞ~」

「うぃー」

ぞろぞろとクラスメイトが教室から出ていく。しかし、教室に入ってくる者もいた。俺の友達マルルとセツナである。

「ちーっすレン、頑張ってっか~?」

「おう。頑張って居残るわ」

「また居残りでしゅか」

そう、今マルルが言ったように、最近俺はずっと居残りをしている。居残り仲間というのもいたのだが、本日の居残りは俺一人だった。

「セツナ・クロニクル、マルル・ロータス。お前ら、先に帰っていいぞ?」

パッと見優しそうに言っているが、明らかに邪魔者を追い出すような声色だ。セツナはそれに気づいたようで

「いやいや、俺はレンが頑張ってるとこをみたいだけだぜぇ?」

「うそつけ!」

俺を馬鹿にしているので、思わず声が漏れてしまった。そしてマルルも俺を煽りはじめる。

「レン!頑張るでしゅ!」

「あー、うるせぇ気が散る!」

「二人とも、邪魔するなら帰ってくれないかな?」

威圧感ばりばりの声色で二人に話しかける。

「まぁ静かにしておきますんで、ちゃっちゃと終わらしてくだせぇ」

「へーい、そっこー終わらすから待っとけよ~」

「分かったでしゅ」

ようやく二人が黙ったので、マーガレット先生が話し始める。

「まずレン・オルグライト」

「はい?」

突然名前を言われたので、返事をする場面かどうかわからないが、気づいた時には素っ頓狂な声を上げてしまっていた。

「お前は魔法使いとしての自覚はあるのか?」

「もちろんですとも」

「魔法を習い始めてからもう一年たつんだぞ、いい加減一つくらい使えたらどうだ」

「どうだって言われてもですね・・・。」

「なにのんきなこと言っているんだ」

特にのんきなことを言ったつもりはない。

「お前はこの魔法都市に住んでいるという自覚はあるのか?」

「あ・・・。あるない」

「どっちだ!」

「だって・・・。魔法を使えなくても生きてきたし」

「これからは使えるようにならんといかんのだ!貴様らが使えるように私たち教員が教えているというのに・・・。貴様はいま何歳だ?」

「14歳です」

「12歳までは基礎的な知識を学んできたな?」

「はい」

「だがな、それから魔法学校に入ったろ?」

「いや、入るしかないじゃないですか」

「だからな、んもう!使えるようにならないかんのだ!」

「わ・・・わっかりましたぁ!」

「よし、じゃあ今日の授業の内容は理解できてるな?」

「はい!この水の色を変えればいいんですよね?」

「そうだ、それができるまで帰さないからな?」

「えぇ!?」

その言葉に早く反応したのはセツナだった。そして

「僕たちは今日、帰れないでしゅね」

というマルルのつぶやきが静かに教室に響いた。



時と言うのは残酷で、レンは一度も魔法を使えないまま放課後終了の鐘が鳴り響く。

「最終下校時刻となりました、校内に残っている生徒はただちに下校しなさい」

と言う放送が教室中に響いた。

「そうだな・・・。今日はもう帰っていいぞ」

二時間前ほどの威圧感は全くない。先生もさっさとこの場を去りたいようにも思えた。

「りょ・・・。了解です。」

「家で今日の復習をしておくように」

そう言い放つと、先生はすぐに教室を出て行った。

教室に嵐が通り過ぎた後のような静けさが襲う。

「レン、ちょっと行ってみたいとこがあるんだぜぇ」

この一言により、ここに来た理由、俺が頑張っているところを見ていたい、というものが嘘と言うのが判明した。

「どこだ?ゲーセンか?俺たちの歳なら、今から行っても追いされるだけじゃねぇか」

「いいや、違うでしゅよ」

どうやら行ってみたい場所というのはマルルも知っているようだ。

「じゃあどこに?」

「開かずの扉だぜぇ」

「なんでまた。それこそ追い出されるとかじゃなくて、そもそも鍵が開いてないだろ」

「それでもだぜぇ、男ってのはそーゆーロマンを追い続けていく生き物なんだぜぇ?」

「はいはいわかったわかった、今から帰る準備すっからまってろ~」

「おう!」



俺たちが住んでいる魔法都市では十二歳までは基礎的な知識を学び、十三歳から魔法学校に入り、実際に魔法を使えるような授業をする。そして六年魔法学校で学んだ後、生徒は魔法都市の大人と認識されるのだ。

魔法学校では初めの一年はクラス分けがランダムになっているのだが、二年からは自分で進路を決めるようになっている、いや、一部、俺のように決められないものもいるわけだが、マルルは召喚科、セツナは結界科に進んでいる。ただ俺は、魔法が使えない劣等生なので、一番下のクラス、魔法基礎科で学んでいる。先ほどセツナが言った開かずの扉というのは、昔三人で遊んでいた時に、地下にいける秘密通路を発見し、謎の扉を発見したのだが、鍵がかかっておりどうにも開けることができない。それから何度か行ったのだが、鍵が開いているときは一度もなかった、俺とマルルはとうに扉の向こうにいくのをあきらめてたのだが、セツナだけはロマンなどと言って向こうにいくことをあきらめきれないようである。というわけで、俺とマルルは半分呆れながら、いや、全部呆れながら小走りのセツナについて行った。



「いいな?俺が開けるぜェ?」

俺とマルルはどうせあかないと分かっていたのだが、セツナは開く可能性があると信じており、いつでもこのテンションである。俺たちは適当に了承した。

しかし、俺たちはいつもと違う音を耳にすることになる。

扉から吹き抜ける風の音、そう、扉があいたのである。

「・・・。え?なんでだぜぇ」

一番驚いていたのはセツナだった。遅れて俺たち二人も驚いた。そう、開いたのである。

開いたのである!



扉の向こうは暗い道が続いていた。どうやらただの地下通路のようだ。それが分かっていても俺たち三人の期待は収まらない。この道はどこにつながっているのだろうか。

そしてこの考えは俺だけしかもっていなかったと思う。

魔法が使えなくても生きていける世界につながっているのではないのだろうか。

という考えを・・・。



数分歩くと、道はなくなっていた、いや、梯子があった。のぼれという事なのだろう。

先ほどから先頭を歩いていたセツナがいち早く梯子に手をかけ、上に登っていく。続いて俺とマルルも上に登っていった。

「レン!マルル!出れそうだぞ!」

セツナが頂上に到達したらしい、おそらくマンホールなのだろう。セツナがマンホールのふたを持ち上げる。外の世界の光が地下を照らした。



地下から出るとそこは魔法都市とは全く違うところだった、周囲からは様々な人の号令が響く、中には敬礼している人間もいた。

「まるで・・・。軍隊でしゅね」

軍隊?聞きなれない言葉がマルルの口から飛び出す。

「なんだっけ?それ」

どこかで聞いたことはあるのだが、全く思い出せない。

「昔習ったじゃないでしゅか。歴史の授業で」

そうだ思い出した。昔魔法戦争があった話か。俺も詳しくは覚えていないが、世界のどこかで魔法によって戦争があり、その戦争で戦う人々を軍隊と呼ぶのだ。

「ってことは、戦争が起きているってことか?」

「いや・・・。戦争は終わったはずだぜぇ?」

その通り、戦争は当の昔に終わっているのである。だが俺たちは信じられない言葉を後ろから耳にすることになる。

「君たちが、今日から入ってくる新兵かね?」



俺たち三人は一人の中年の威厳のあるおじさんに連れて行かれた。先ほど“新兵”という言葉を耳にした。ということは戦争がまだ起きていることを意味する。ってことはつまり・・・。俺たちが教えられた歴史は全く違うものだったということである。

「俺の名前はゲルトだ、今から貴様らが配属される兵団の団長である。貴様ら三人の名前はなんだ。」

突然名前を聞かれたので、沈黙してしまう。知らない人に名前はいっちゃだめ!というわけではない。ただ、二人は口を開こうとしないので、俺が口を開いた。

「俺の名前はレン・オルグライトです」

俺の後に続いて二人も口を開く

「俺はセツナ・クロニクル」

「僕はマルル・ロータスでしゅ」

それから数分の沈黙が流れる。その後ある部屋の前まで連れて行かれた。

「とりあえずお前らのお目付け役を呼んでくる。この部屋に入ってろ」

部屋に俺たち三人が入れられた。突然の事態に対応できない俺たちに恐ろしいほどの沈黙が襲った。

しかし、その後さらに凄まじい事態が起きた。部屋の扉が勢いよく開き、女の姿が見えた

「これから貴様らを訓練するマナ・マーガレットだ!って・・・。お前ら!?」

「マーガレット先生!?」

俺たちのお目付け役というのはマーガレット先生というわけだ・・・。え?



「なんでお前らがここにいる?誰か、さっさと説明しろ」

完全に怒っている。おこなの?ねぇ、おこなの?

「いいから早く!」

怒りの中に困惑という感情もあるらしい。どうして俺たちがここに来たのかマーガレット先生は分かっていないようだ。

「えーっとですね、昔、地下に行ける秘密の通路的なものを見つけましてですね、行ったらがありまして、でも開かなかったわけですよ」

「ふむ。でもなぜ今日もあけに行った?」

「いや、時々無限の可能性にかけて開けに行くんですよ。結果として今日開いたわけですよ」

一応本当のことをすべて話した。

「くそっ、なんで鍵かけてなかったんだ馬鹿野郎・・・。まぁいい、お前ら、ここに来てから何を思ったか、何を見たか、正直に話せ」

「いえ、もう話すことはないと思うのですが」

「いいから話せ!」

「ここに来てからですか・・・。えーっとですね・・・その・・・。」

正直に言うと、戦争がまだやっているのでは?という意見で俺たちは落ち着いたわけだが、本当にそのことを言っていいのだろうか?ここでの判断が俺たちの運命を決める気がしてならない。根拠はないが、先生の焦りようを見ると、ここは関係者以外に見られたくないようである。だからここでのベストアンサーは

なにもみてません、出てきた瞬間ゲルト兵団長に連れられ、パニックになり、何も見てませんでした。である。

「もしかして戦争が起きているのでしゅか?」

「おいマルル!馬鹿野郎!」

「ほぉ・・・。そう思った理由は?」

「周りの敬礼の声、兵団長と名乗る者、そして奥から鳴り響いている轟音。すべてを満たすのは、戦争というワードのみでしゅ、もう戦争は終わったと思ってたのでしゅが、僕達に教えられていた歴史は全く違ったのでしゅね」

「やはり分かってしまったか・・・。しょうがない」

先ほどの焦った表情はもうない。だが決して落ち着いたわけではない。どちらかというと落胆したように思えた。

「すべて話そう」

セツナとマルルは少し興奮気味だったが、俺は一人不安に思っていた。すべて話すという事は俺たちが関係者、そう、この戦争に巻き込まれるということを意味するからである。

「率直に話すと今は戦争真っただ中だ、しかし、魔法戦争ではない。」

「なら何のだぜぇ?」

「敵は魔法を使わない」

魔法を使わないと聞いた時この話に興味がわいてきた。敵だと分かっていても、魔法なしで魔法と戦うことができるのは素直にすごいと思った

「なんででしゅか?」

「それは知らん。ただ、以上に運動能力が高い」

「それは魔法じゃ応戦できないレベルででしゅか?」

「応戦できないわけではないが、少なくとも今の戦争では劣勢だ」

「なんで戦争なんかおきたんだぜぇ?」

「そうだな、その前にまず君たちに歴史の授業をしよう。君たちの知っているような間違った歴史ではなく、正しい歴史をな」



「昔、この世界は力が制圧していた。力と言うと分かりにくいが、簡単に言えば腕力がものを言わせてたってわけだ。力がない人間は支配されるだけの存在だったってわけだ。そこで力のない人間は力に対抗するために魔法を作った。そう、魔法が生まれた時から戦争が始まり、それが今まで続いているのだ」

「な・・・。ならなんで僕たちは魔法を習っているのでしゅか?戦争するためでしゅか?ならなんで間違った歴史などを教えたのでしゅか?」

「魔法を習っている理由か。もちろん全員戦争するためではない。現に君たちの両親は軍隊か?」

「違うでしゅ」

「違うぜぇ?」

答えることのできない質問が飛んできた。俺は昔の記憶がなぜかない、記憶がある時にはもう魔法都市にいたし、一人暮らしをしていた。

「あぁ、すまんなレン。というわけで君たち両親は魔法戦争を知らないわけだ。ちなみに魔法学校というのは軍隊に入れる人間を判別するための組織だ」

ちょっと待て・・・。ということは魔法都市の人間は俺たちが今聞いたことを誰も知らないってことだ。と、いう事は・・・。

「ならなんで今俺たちに話した?」

「そ・・・。それは」

「分かってるって。先生の言いたいことはよくわかった。わかっちまった。セツナ、マルル、わかっただろ?」

「へ?何がでしゅか?」

「わかんないんだぜぇ・・・。」

「おいレン、お前には何が分かった」

「そもそも、両親が戦争について知らないのに俺たち話すってことは、俺たちを魔法都市にただでは返さないつもりってことだ、それどころか関係者にしようとしてる。簡単に言えばお前ら兵士になれってことだ」

「・・・。そういうことだ」

「なん・・・。でしゅと・・・。」

「俺たちが・・・。戦う?ってことか?・・・ぜぇ・・・。」

「もうちょっと考えてみ、もっとすごいことが分かるぞ」

「もういっぱいいっぱいなんでしゅが・・・。」

「魔法学校の存在意義だよ」

「だから未来の兵士を探すための、ん?あれ?それって変だぜぇ」

「なにがでしゅか?」

「例えば、俺たちが親だとして子どもが兵士に選ばれた時には、絶対に親にそのことを話すんだぜぇ?ってことは親にも伝わるってわけだぜぇ。でもマーガレット先生の話だと、魔法都市にはこのことを知っている人間はいないってことになるぜぇ。つまり、記憶が消された、簡単に言えば息子がいなかったことになるんだぜぇ」

「・・・。へ?」

俺たち三人がちょっとした謎解きをしていると、先生が口を開いた

「そういうことだ、君たち三人は兵士になる、この魔法軍学校に入学することになる。そして君たちの両親の親の記憶を明日消しに行く。異論は認めん。」

「すまん、異論いいか?」

「なんだレン、お前には関係ないことだろうに」

「おいおい、友人の両親については関係ないのか?俺には、まぁいい。魔法軍学校に入学するってことはそれだけ認められたってことだろ?実は認めていたってのはなしだぜ?実際俺は魔法軍学校なんて行けるはずがないからな、魔法を使えないし」

「何が言いたい?」

「俺たちの記憶を消せばいいじゃねぇか。なんでそれができない?」

「君たちにこの魔法をかけることはできない、この魔法は大人以外にかけてはならないのだ。かけると君たちは死んでしまう」

「なんででしゅか?」

「魔法学校を卒業した人間は、記憶を消す魔法を受けても大丈夫なのだ、とある儀式をうけているからな」

「儀式?」

「俗にいう卒業式だ。魔法学校の卒業式は記憶を消す魔法で対象者が死なないようにする儀式なんだよ」

「つまり・・・。」

「言っただろ?異論は認めんと、もう君たちが魔法軍学校に入学することは決まっているのだよ。普通は今日消しに行くのだが、一日だけ猶予を与えてやろう。最後の時を存分に過ごすがいい。ではついてこい。帰るぞ」

マルルとセツナは肩を落とし、下を向いていたが、正直俺には悲しむことができない。両親の記憶など知らん。魔法軍学校にいくのは気乗りしないが、このまま魔法学校にいても魔法を使える気配などみじんもない。

ただ、先生の表情が焦りから落胆に変わってから、最後には悲しそうにしていたのがやけに頭に残った。


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