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プロローグ

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 若い人、あんた、旅の人かね。この地に来るのは初めてのようじゃな。この地はカサ・プリマヴェーラと言って、ある英雄が建てた楽園じゃ。英雄と言ってもな、逞しい大男じゃあないぞ。わしは見たよ、薔薇色の頬に、長い睫毛、まだあどけなさの残る、かわいらしい子じゃった。しかしその心には、誰よりも強く確かな炎があった。あの子はわしらの長い間待ち侘びた希望の光だった。そうでもなければ、あの闇の七日間を生き抜くことはできなかったじゃろうて。

 昔、この大地には数十の辺境小国と四つの大国があり、それぞれ協定を結び傍目には穏やかな日々が続いていた。この頃は、殆どの国を治めていたのが女性で、「賢女の時代」と呼ばれたものだ。

 しかし、その安寧を破ったのは広大な領地を持つミルヴァル帝国じゃ。事の発端は女帝ドロシノーアが皇帝の座に就いたことを快く思わなかった隣国ポリモトスのアウグストス王がミルヴァルの領地に侵入したことじゃった。ドロシノーアはポリモトスの反対に位置する南のニサール公国の妃マルグリートと直ちに手を結び、さらに騎馬民族帝国イムハン朝の長、威龍(ウェイロン)帝とも協力してアウグストス王の包囲に掛かった。そこから始まったのが五ヵ年戦争じゃ。

 戦が泥沼化する中、イムハンの王宮で赤ん坊が生まれた。玉のように光り輝くような美しい子でな、宮中の者は誰もが皆その子を一目見れば虜になるような愛らしさ。それもその筈、その子は異国より囚われ後宮に入った美しい娘が、皇帝の寵愛を受けて生まれた子どもだったからじゃ。母親は異人であることと、皇帝の寵愛を一身に受けていたことから後宮の女たちからは疎まれ、皇帝の姉であり正妻である皇后からも口では言えないようなことをされて、産後は病に臥せっていたが、子どもの可愛らしさには誰も手を出せなかった。この赤子は、腹違いの兄である直系の皇太子をさしおいて、後継者になるかと思われるほど宮中の人気者じゃった。漆黒の髪と翡翠色の瞳をした美しい子は、「光の御子(みこ)」として聡明に健やかに育っていった。

 旅の人、興味があるようじゃな。あの子の物語は、そう、もう少し大きくなったところから始めてもよいかな。闇の七日間を越えてこの大陸から争いを消した、光の子の物語を。




 あの子の名前は華亮、ファランという名前じゃった。それでは、物語はファラン十歳、母の死後から始めるとしよう…。

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