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8 謀略 (後)

「ファラン、そなたは昨夜、何処(どこ)に居た」


 鳳潔が口を開いた。その言葉に、ファランは不意を突かれた。


「昨夜、とは…」

「婚儀の後、初夜ではなかったか?」

「はい…」

「見届け役の女官らが、部屋から追い出されたと申しておる。それに…ずっと部屋におったのかえ?」

「…はい」


 嘘をついている、という意識にきりきりと痛む箇所がある。


「しかしのう、その夜遅くに淑妃の部屋から、そなたの声が聞こえていたそうな」

「!」


 それは違う、と言いかけた。ファランは淑陽の部屋には入っていない。しかし、それを言う訳にもいかない。


「誤解です!」


 淑陽が代わりに声を上げた。


「私が、部屋で飼っている猫に話しかけていたのです。それを女官たちが聞き違えたのでございます」

「ほう、淑妃。そなたは猫と話ができるのか?」


 鳳潔は意地悪そうに笑った。全く、夫である皇帝が亡くなったばかりだというのに…。


「しかし、ファランは一度部屋から出たであろう? しばらく戻って来なかったと、美鈴も申しておったぞ。何処におったのじゃ。申せぬのか」


 言える訳がない。しかも、美鈴の証言を取られてしまっていては、反論のしようもない。


「言えぬか。父である陛下が亡くなられた夜に、部屋を出て、淑妃の部屋にいたのではないか。これでは、陛下に対する謀反の疑いありと言われても仕方がないのう」

「? どういうことですか!」


 ファランに続いて淑陽も食い下がった。 「陛下! それだけではファランが疑わしいということは言えないのでは!」


「淑妃、そなた、いやにファランを肩を持つのう。それならば無実と言えるのかえ? 今、そなたにも不貞の疑いがかかっておるのよ。その腹の子の父親は誰かのう」 鳳潔は淑陽を冷たく眺め回した。

「そんな・・・!」

「そなたの方は懐妊の身、取調べはいずれ…」


 淑陽も、これ以上は(かば)いきれないようだ。すまなそうにこちらを見ながら、女官たちに連れられて悲痛な面持ちで退出した。


「さて、陛下は宴会の後、かなり遅くなって私の部屋にも来ずに自室でお休みになられた。その頃、城内に出ていた者は他にいない。よって一番疑わしいのはファラン、そなたじゃ」


 突然後ろから現れた兵士に、ファランは両腕を捕まれた。


「ファラン琥珀三位。只今より謀反、および威龍帝暗殺の疑いにて拘束いたします」


 宰相の声にファランは愕然とした。今まで父に意見をしたことがなかった男だった。賢帝だった父には無害だったが、これからは同じように皇后にも従うのだろう。


「しばらくは自室にて外出をお控え下さい、いずれ審議を行います」

「そんな、僕は何もしていない!」

「お黙りファラン! それはお前が決めることではないわ。連れてゆけ」


 冷たい皇后の声に突き放され、力を失ったファランは兵士に引きずられるように謁見の間から出された。

 部屋には、いつの間にか玄峰(クエンフェン)が付き従っていた。まだ新参で、文官として王宮に支え始めたばかりだ。涼やかな顔と声をしているが、何を考えているのかよくわからない、この男も皇后一派なのだろうか。


「本当に…何もしていないんだ、なのに一体どうして…お父様は、本当に殺されたの?」

「陛下がお部屋にお戻りになって、口にされた水に、毒が入っていたのです」


 玄峰は静かに答えた。


「僕は…これからどうなるの?」

「今はまだ…審議を待たなければ。もしくは、ファラン様がご自分で、部屋を空けた理由を、淑陽様と何をお話になっていたかをお告げになられることができれば」

「…?」

「では明日、お迎えに上がりますので」


 扉が閉められ、錠が取り付けられる音が外から聞こえた。見ると窓にも全て格子が下ろされている。今やファランは囚人となったのだ。白瑛が寄って来た。


「どうしたんだよ、ファラン」

「…っ!」


 今まで抑えてきたものが一気に溢れ出して、ファランは嗚咽した。

 わからないことだらけだった。

 昨日まであんなに元気だった父がなぜ? 誰に? そして、どうして自分が捕まるのか? 玄峰は自分と淑陽の密会について、何か知っているのか?

 白瑛も慰めかねてファランの涙を舐めることしかできない。


「僕は…これからどうなるんだ…」


 喘ぐように呟くファランの胸に、淑陽や美鈴、翔豪の姿が浮かんだ。でも今はその一人として傍にいない。


 ファランは白瑛を強く、抱きしめた。 

すみません、玄峰は以前も見た名前と思われるかもしれませんが、「囚われの花嫁」の章では出さないことになりましたのでご了承ください。改稿した方を載せなかった私のミスです。

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