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第三文芸部!  作者: kaji
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プロローグ

 俺は2限が終わってお昼を食べに弁当を持って文芸部室に向かった。最近俺は金欠で自炊することにしている。パン屋にて50円で買ったパンの耳と鷹嘴大学で汲んだ天然水だ。文芸部に入ると酒臭い匂いが充満していた。


「酒臭!」


見ると奥のソファーで部長がカーテンを閉めきって一人で昼間から酒を飲んでいた。ああ。あれは部室備え付けの焼酎だったのに。


「部長昼間っから何酒飲んでいるんですか?」

「ああ。うるせえな。眼鏡。いいだろ。いつ飲もうが私の勝手だろうが」

「ああ。はい。はい。そうですね」


また負けたのかなと思い、余り関わりたくなかったので部長から離れた所で昼食を取ることにした。部室備え付けの冷蔵庫からジャムを取ってきてパンの耳を堪能することにした。


「酒臭! 部長酒を飲むのはいいですがカーテンくらいは空けてくださいよ」

「……」

「宮川君。おはよう。今日もパンの耳ですか」


副部長の十文字光一がいつもの十文字スマイルで入って来て素振りを始めた。全く動じないない人だな。この人は。


「酒臭! 何でお酒臭いの? あー。部長。おはようございまーす。何でこんなにお酒臭いんでしょうか? 私も飲みたいな」

「見てわかんねーのかよ。私が飲んでるからだよ」

「あー。本当だ。いいなあ」

「全く。脳みそ腐ってんじゃねえのか」


俺の幼馴染の東杏(ひがしあん)は羨ましそうに部長が飲んでいる酒を見ながら近くの机に座って作りかけのプラモを作り出した。


「酒臭! な。何ですか。これは。窓を空けてくださいよ。誰ですか。昼間っから酒飲んでるのは。……部長ですか……」

「何だ。糞ガキ! 私が何を飲もうが私の勝手だろうが」

「そうですね。ただ人としてどうかと思いますよ」

「ふん。酒どころかコーヒーも飲めないお子様のくせによ」

「……」


 今年唯一の新入部員山本さとこは何か言いたそうだったが今までの経験から何も言い返さない方がいいと悟って黙って自分専用のパソコンのある机に座ってパソコンを起動させた。これで部員全員なのだがみんな酒臭! という言いながら入ってくるのには個人的にかなり受けた。いい昼飯のおかずになった。


「うーし。みんな揃ったなあ。わたしがあー。重大はっぴょうー。してやるからよーく聞いとけよ。特に! そこの眼鏡! お前は逆立ちしながら私の話を聞けよ」

「何で!」

「わたしの趣味だ。文句あるか」


うわー。完全に酔っ払っているし。俺は仕方が無いので壁にそって逆立ちをした。


「でははっぴょーしまーす。じゃーん。執行部に言われたんだがこのままだとこの第三文芸部は廃部になるそーです」

「は! 痛で」

「部長。どういうことですか」

「……」

「廃部って? 博君どういうこと?」

「俺が知るかよ。痛てて」


俺は思わぬ発表だったので体勢が崩れて頭から落ちてしまった。部長は言い終わるとソファーに座ってまた酒を飲みだした。


「活動実績が無いからだってよ。くそ。これだから代が変わると面倒だ。前の斉藤くんはいい子だったのなあ。部費いくらでももらえたのに。卒業しちゃったからなあ」

「活動実績か……」

「それを言われると辛いね」


去年は確か部費で合宿と称して温泉宿に泊まって宴会したかな。後は……。あー。パソコン買ったな。活動と言えばそれくらいだと思うが後は部室に集まって適当に時間潰しているだけだし。だいたいこの部に部費が出ている事自体がおかしいからな。


「部長。しかし、何か条件があったんでしょう」

「あー。なんだったかなあ。あー。そうだ。部誌の発行と部員全員が文学賞への投稿と誰か一人は佳作でもいいから賞を取ることだったかな。ったく面倒臭い。私なんて何年も文字書いてことないっつーのによ」

「うわー。結構辛い条件ですね。宮川さん小説とか書いたことあります?」


山本さんは俺に話を振ってきた。聞くまでも無いだろうがそんなこと。


「俺が書いたことある訳無いだろうが。それどころか小説なんて小学校の読書感想文で課題図書を読んだっきり読んだことねえよ」

「副部長は……」

「私ですか? 私は剣の道に生きていましたからそういった分野は疎いものですみません」

「すみませんって……。ここって何部なんですか?」

「はいー。私詩書けますー」


杏が手を挙げて発言した。はいー。聞いてませんけどもー。しかもお前が書けるのってすげーシュールな詩しか書けないだろうが。


「じゃあまともに書けるのは私と杏先輩だけですか」

「まあ。そうなるな……。HAHAHAHA」


俺は笑って誤魔化したが山本さんからは冷ややかな視線を受けた。だって。俺、小説より漫画の方が好きだからさ。


「まあ。この第三文芸部がどうなるかはそこの眼鏡に任せた! 私は寝る! おやすみ」

「ちょ。何で俺なんですか。部長―」


 部長はソファーに寝っ転がると寝てしまった。何で俺なの? 今書けないって俺言いましたよね。廃部になるのはどうでもいいが部が無くなるということはこの居心地のいい部室には居られなくなるということだろう。それは困る。さてどうしたものか。俺はとりあえずパンの耳を食うことにした。面倒なことは後で考えよう。しかし、いったいこれからどうなるんだろうか。

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