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やかんサマ

作者: じゅラン椿
掲載日:2026/03/23

台所の隅に古いアルミ製のやかんがある。取っ手のところはゴム、プラスチックが付いている。《まき》真姫はずっと使い続けている。祖母の家から持ってきたものだ。


♢  ♦  ♢  ♦  ♢  ♦  ♢  ♦  ♢  ♦  ♢  ♦


 おばあちゃんが言った。『失くしものをしたときは、このやかんの取っ手に、手ぬぐいか、八巻のどちらかを結び、"やかんさまお願いします"と頼むのよ」

 幼い真姫は、丸い目でやかんを見上げた。

 「やかんさまって、誰?」

 

 「さぁ、おばあちゃんにもわからない、でも、ちゃんといるんよ」

祖母はそう、言って笑った。


初めておまじないを使ったのは幼稚園のお道具箱からクレヨンがなくなったときだった。

黄色橙色だけ消えていた。最後に使ったのはいつなのか、どうしたのか、最後に、なんて記憶がなくて、近くに住んでいたので、祖母の家に、駆けこんだ。


 「そんな、困った顔して、どうしたんだい?」


 「あんね、あんね・・・、クレヨンの、黄色・橙色が、失くなって・・・」


 「じゃ、やかんさまにお願いしてみようね、こうして蝶々結びするんだよ

一緒に、せーの"やかんサマ、お願いします」

と、唱えた。


 数日後クレヨンは上靴入れの奥から、出てきて見つかった。

その後も、消しゴム、時計、ヘアピン、診察券、はさみ・・・・。

失くすたびに、やかんサマのおまじないを使った。


 見つかるたびに、手を合わせてお礼を言って、結び目をほどいた。

高学年になると自分で結ぶことができるので、一緒にはやらなかった。

 「見つかったときは、必ず、ありがとうって言いながらほどくのよ それが、約束事」

祖母の声が今でも耳に、残っている。


♢  ♦  ♢  ♦  ♢  ♦  ♢  ♦  ♢  ♦  ♢  ♦


 祖母が他界したのは、真姫が成人して間もないころだった。毎朝お湯を沸かす度に、祖母の事を思っていた。それでも、おまじないのことは、すっかり忘れていた。

 

忙しい毎日の中で、不意に記憶の奥へ沈んでいった。


転校したとき、お揃いのチャームがどこ探しても見つからない。絶対に再会する、と約束した、願いを込めたチャームだった。どーしよ・・・・


 夜、キッチンでぼんやりしてたら、あっ、おまじない、やかんサマがあるじゃない。


 「あーっ八巻、あったかなぁ、ここか・・・」

真姫は、結べるものを探した。引き出しを開け、

 「あっ・・・・た これこれ、随分、眠っていた手ぬぐい」

やかんの取っ手にそっと結んだ。"やかんサマ、お願いします お揃いのチャームを見つけてください"


翌日、クリーニング店から電話があった。コートのポケットに何か入っていたとの連絡だった。


受け取りに行くと、小さな紙袋に入っていた。開けるとチャームが入っていた。


帰宅しキッチンに戻り、やかんに"無事見つかりましたありがとうございました"と言いながら手ぬぐいの蝶々結びをほどいた。そして、手ぬぐいは畳んで、引き出しに戻した。


♢  ♦  ♢  ♦  ♢  ♦  ♢  ♦  ♢  ♦  ♢  ♦


おまじないは、立ち止まり、焦りを鎮めて、思い出すためのきっかけなのかもしれない。見つかったときは感謝する。祖母はそれをやかんで伝えていたのだろか?もしかして、大切な何かを。


おばあちゃん、やかんさまおまじないありがとう、これは伝承していくよ。



 





まで拝読感謝申し上げます。これは実話をもとにして、創作しました。手ぬぐいか、八巻を、結びおまじないをかける。でも、疑ってしまうともしかして、失くしものは見つからないかもしれません。置いた場所を思い出したり、何かのついでに、探していたら、一緒に、出てきたりしてました。


立ち止まる事、冷静になることをやかんサマは伝えたいのかもしれませんね。

私にとっては、本物で、現在進行形のおまじないです。



♧♧♧♧♧♧♧♧ じゅラン 椿 ♧♧♧♧♧♧♧♧

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