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祈りを繋ぐもの  作者: 和穂ゆう
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息抜き回)天津国記3~オロチ平定記~

第一部 サスラヲの贖罪


第一章 宇宙流浪の日々


銀河系外縁部の薄暗い星雲が、

まるでソサノヲ(サスラヲ)の心境を映し出すように重く漂っていた。

全銀河オロチ騒乱が起こる少し前まで、時は遡る。


皇族の地位から、一転してサスライ刑の宇宙放浪者へと

大きな転落をしたのが、ソサノヲであった。


時のアマテル帝の弟君として一般の銀河市民から敬意が寄せられていた。

そんな恵まれた立場から、

罪人としての宇宙漂流をする生活へと転げ落ちたのだった。


今日の食料や燃料にすら切羽詰まった毎日の連続。

節約している推進器の音は弱く、

宇宙塵を掻き分けるたびに、昔の栄光が遠い星雲のように思えてくる。


やがて、イズモ星系の外縁部にたどり着いたソサノヲの前に、

小さなクラフトステーションが見えてきた。

核融合炉から立ち上るプラズマが、恒星の光に溶けて消えていく。


ビーム兵器製作工房の主人である、

ツルメソ・エンジニアに助けられることとなる。


ツルメソは、ソサノヲの名や素性を聞く事もせず受け入れてくれた。

工房の手伝いをさせて、

労働の対価として燃料と食料を提供してくれたのだ。

その優しさに、ソサノヲの心は震えた。


「助けて頂きありがとうございます。この御恩は働いてお返しします」



第二章 不穏な宇宙電波


そうしていると、ある噂がソサノヲの住んでいる宙域にも届いてきた。

宇宙風がざわめく小惑星帯の向こうから、

まるで不吉な前兆のように。


「九州星系のハヤスフ姫が攫われたらしい…」


ハヤスフ姫。その名前を聞いた瞬間、ソサノヲの心臓が激しく鼓動した。かつて自分が見染めた女性士官の名前だった。


今度は、近隣星系での通信が流れて来る。

夕方の宇宙港で、人々の声がざわめいている。

「テナツチ提督・アシナツチ副提督がソサノヲ様を受け入れようと、

自分の娘の婿にする準備をしているらしいぞ…」


「だけど『サイボーグ・オロチ』に目を付けられたんだと。

娘さん達が次々と攫われているらしいぞ」


「7人も攫われて、もう最後の1人らしいぞ」


オロチ。その言葉が通信に入った瞬間、

ソサノヲの全身に戦慄が走った。

「それはいつの話だ?オロチとは何だ?」


人々が話してくれた内容に、ソサノヲは愕然とした。

恐ろし気に語っているオロチの首領は、

その昔、仲の良かった義理の姉のモチコとハヤコその人で、

その姉妹に群がるように宇宙海賊が集まっている様子だった。


「義姉上達は、もはや取返しのつかない行為に及んでしまった」


「私が二人を止めねばならん」



第三章 オロチ討伐の戦略


 テナツチ・アシナツチ提督夫妻は娘達を失った事に心を痛めていた。

最後の1人の娘であるイナタヒメもじきにオロチが求めて来る。

しかし、どうする事もできずに、娘の手を撫でながら悲しんでいた。

そこにソサノヲが訪ねて来た。


「テナツチ提督・アシナツチ副提督。お久しぶりです。

罪を受けている身ではありますが、

お二人と娘さんの事が心配で、お伺いさせて頂きました」


テナツチ・アシナツチはソサノヲの姿に驚いたが、

無事を喜んでくれた。


「私はオロチを討ち滅ぼす為に来ました」


「私に策があります。お二人に協力していただければ、

必ず討ち果たしてご覧に入れましょう」


こうして、オロチ退治の準備が始まった。


燃焼効率の高い濃縮燃料を二人に頼んで製造させる。精製を8回も繰り返す方法で非常に燃焼効率良い濃縮燃料を作った。結果、それはサイボーグのエネルギーが過剰循環となり、電子頭脳がオーバークロックを起こし動作不良となるものとなった。それを大量に用意させることにした。



第四章 決戦と慈悲


オロチを誘い込む時が来た。

ソサノヲは自分自身が囮となるためホログラム偽装をした。

柘植の木で作った美しい光学迷彩装置を頭部に装着し、

女性士官の祭典用のコートを制服の上から着用する。


宴会場に到着したオロチ達を確認すると、

モチコ・ハヤコ姉妹の姿も見えた。

ただ、その相貌は昔の優し気な美しい姿からは想像もできない、

嫉妬や妬みで濁った目をした青白いサイボーグ顔があった。


ソサノヲは言葉巧みにオロチ達を濃縮燃料で酔い潰していく。

大量にあり濃縮燃料なので、

オロチ達の電子頭脳がオーバークロックを起こし動作不良となっていく。


頃合い良しと見て、光学迷彩と制服を脱ぎ去り、

隠し持っていたビーム・サーベルを起動した。


「私はアマテル帝の弟、ソサノヲである。

かつて先代イサナギ皇帝より守護を仰せ付かった

イズモ星系での暴虐許すまじ。

貴様達を粒子レベルで分解させて再構成させる」


そう言って次々とオロチを切り伏せていく。

そうしている間に、とうとうハヤコだけになった。


「義姉上様…」

ソサノヲはビーム・サーベルを収めて話しかけた。

「どうしてそのような姿になってしまわれたのですか…」


ハヤコは電子音声で話し始めた。

「私は………嫉妬に狂ってしまったのです………

アマテル帝をお慕いしていたのに、

いつの間にか、あなたに心惹かれていました…

もう、私の回路には貴方の愛してくれた記憶データはありません。

それでも、あなたを見ると心にエラーが発生します。どうか貴方の手で…」


そう言って、膝を付き自分の緊急機能停止用のコンソールを

ソサノヲの前に表示させる。


ソサノヲは涙を流しながらハヤコの電源を切った。

ソサノヲはハヤコがビーム・サーベルを抱え持っていた事に気が付いた。

そのサーベルは起動されることは無く、

自ら滅びを選んだハヤコにちなんで、

ソサノヲは"ムラクモ・ビーム"の名を付けた。

それは、"起動"する事で争いを呼ぶ"叢(群れる)"意思と、

"起動しない"事でそれを鎮める"雲(覆う)"意思の

両方の意味を持たせた名前だった。


オロチ討伐の後、

ソサノヲはテナツチ・アシナツチの宇宙邸にてイナタヒメを娶った。


オロチを討伐してくれたソサノヲに、テナツチ・アシナツチを始め、

オロチに苦しめられていた人々は感謝した。


平和が戻ったイズモ星系は、

まるで長い悪夢から覚めたように美しく輝いて見えた。

そうして過ごしている内に、

ソサノヲとイナタヒメとの間に男の子が産まれた。

オオヤヒコと命名される。


ソサノヲは姉のシタテルヒメに誓った通り、男の子が生まれたので、

早速シタテルヒメに通信報告に行った。


ヤスカワ・ステーションに着いたソサノヲは言った。


「様々な経験をして様々な事を学び、

共に生きる女性との間に男の子が産まれました。

姉上どうでしょうか?私は変われたでしょうか?」


シタテルヒメは、「さすらう」罪を生き抜き、

更に誓いを守った事を報告に来たソサノヲを見て、

自分の子供が成長したことの様に嬉しくなり、

返答しようとしても、涙が出て来てしまった。


「その様に心配せずとも、ちゃんと結果が出ています。

でも、そんな心配が生まれるのは、

あなたが自分本位で他人と競い比べる心が残っているからです。

自分の家族と生きる中で、他人を思い寄り添った行動を重ねて行けば、

自分本位な心も消えていくでしょう。


また、オロチを知った時に彼らの行いに対して

『何て身勝手なんだ』と感じたでしょう。

銀河の乱れの元はその自分本位な心にあるのです。

そういった経験を通してあなたが大きく成長したと感じたので、涙が出たのです。

貴方は本当に良く頑張りました。家族の為にも早く帰りなさい」


慕っていた姉のシタテルヒメに褒められたソサノヲは、

姉に感謝を伝え、更なる成長をすることを宣言して帰って行った。


後に、ソサノヲとイナタヒメとの間にはまた子供が産まれた。

長女はオオヤヒメ、次女はツマツヒメ、次男はコトヤソであった。

そして、イズモ星系に穏やかに暮らすのであった。



第二部 全銀河オロチ騒乱と平定


第一章 全銀河騒乱の勃発


秋の恒星風が吹き抜ける皇宮の宇宙回廊に、急を告げる足音が響いた。

全銀河各星系からもたらされる報告は、どれも同じ内容を伝えている。

オロチの騒乱が、まるで示し合わせたかのように

六つの艦隊となって各宙域で勢力を増している、と。


恒星光に照らされた御殿の中で、

アマテル帝は深い眉間の皺を刻まれていた。

窓の外には平穏な首都星の風景が広がっているが、

その向こうの星系では善良な市民が恐怖に震えている。


「急遽、オロチ平定のための軍事会議を開催いたします」

アマテル帝の声は静かだったが、

その中には揺るぎない決意が込められていた。

諸将たちの表情も引き締まる。


調べを進めるうちに、

すべての元凶がネ星系の元準総督シラヒトという人物にあることが明らかになった。

軍議は満場一致で、この男への処罰を決定した。



第二章 イフキトヌシの出陣


「イフキトヌシよ、シラヒトの断罪を命じる」

アマテル帝の厳かな声が響く中、

ツキヨミ皇子の子であるイフキトヌシは深々と頭を下げた。

若き艦隊司令官の瞳には、父譲りの聡明さと、

叔父ソサノヲへの複雑な思いが宿っている。


八十隻の武装した戦艦たちが艦隊を組んだ。

星雲の中を進む一団は、まずサホコの中心地である

アサヒ・ステーションを目指した。


星系を越え、ワープ・ゲートを抜け、

やがてイズモ星系が見えてきた頃、

航路上にひとりの男の宇宙艇が見えた。


その男は、かつて皇室を震撼させた問題児、ソサノヲだった。

八年前の断罪・追放から長い年月が流れ、彼の姿は大きく変わっていた。

イフキトヌシの艦隊を認めると、

ソサノヲは迷うことなくアマテル帝の艦隊共通のオープンチャンネルにて

イフキトヌシ艦隊に相互通信を求めた。

「イフキトヌシ様...」

画面に映るソサノヲの声は震えていた。

涙を流しながら何かを必死に訴えようとするその姿に、

護衛の兵士たちは戸惑いを隠せない。


償いの気持ちを込めて、ソサノヲは歌を詠んだ。

「星に降る 我が身の報い 心の軸 道を外せば 宇宙嵐に堕ちる」

(星々の戒めは、結局すべて自分の身に返ってくる。

心の軸を見失って道を踏み外せば、宇宙嵐の恐ろしさに堕ちてしまう)



第三章 甥と叔父の絆


理知的で知られるイフキトヌシが涙を流す姿を見て、

護衛の兵士たちは驚きを隠せなかった。


しかし若き司令官は、周囲の視線など気にもかけない。

艦隊の司令席から艦隊通信用フロアに降りると、

通信士に向かってこちらからの通信を繋げる様に指示する。

やがて、ソサノヲの宇宙艇のメイン画面にイフキトヌシが投影される。


「叔父上様」イフキトヌシの声は穏やかだった。

「心から生じる過ちに気がついてくださったのですね。

今後その心根を持ち続けることが大切だと思います」


「叔父上様が心からの改心を成就されたからには、

ぜひ、銀河を支えてゆくことに尽力していただきたく思います」


「今この時にオロチの心を持ったシラヒトを、

心を正した叔父上が討つ。

この事が正に銀河に尽くすことであり、

正しき心を示すこととなりましょう」


「私にご助力いただき、

ご一緒にシラヒトとコクミを断罪いたしましょう。

そうすれば自然と叔父上の改心された姿を示すこととなり、

罪も晴れ行くことになるでしょう」


ソサノヲは深く息を吐いた。

長い間胸に秘めていた重荷が、ついに軽くなる時が来たのだ。


「イフキトヌシ様、ありがたい。喜んでお供いたします」



第四章 諸星系の平定


イフキトヌシはソサノヲをサタ・ステーションに連れ帰ると、

まず守るべき銀河法を定めて一般の人々に広く宇宙通信で知らしめた。

混乱の中で何が正しいのかを示すことで、

民心を安定させることが狙いだった。


その後、シラヒトやコクミ、そして群がり悪事を働くオロチ達の平定が始まった。

ソサノヲはイフキトヌシに助力し、その戦いぶりは見事なものだった。


平定の知らせが首都イサワに届くと、アマテル帝は大変お喜びになった。

首都イサワでは、オロチ討伐を祝って、電子楽器の演奏が盛んに行われ始めた。


その調べを聞いたアマテル帝は、

"クワマテリアル"素材を使った新たな電子楽器を作られた。

六本の電子弦が張られたその楽器は、妹君のシタテルヒメに下賜された。

この楽器は、オロチを酔い寝かせた燃料にちなんで

「ヤクモウチ」(荒ぶる力を酔わせて鎮め和らぎをもたらした楽器)

と名付けられた。


功績を認められ、

イフキトヌシはヤマタ星域を賜ることになった。

以来、彼は「アワのイフキ司令官」と呼ばれるようになる。


一方、ソサノヲの処遇についても再考が必要となった。

彼はハヤコ・オロチ、シラヒト・コクミなど、

すべての脅威を平定し尽くしたのだ。

アマテル帝は、ソサノヲに許しの勅令を賜った。

そこには「ヒカハ司令官」と記されていた。


「オロチの首謀者を、撃ち治めた功績によって

『ヒカハ司令官』の称号を授けます。

ヒカワ(斐伊川星雲)の地にステーションを建設しなさい」


さらに八重垣のビーム・サーベルと艦隊旗も下賜された。

昔、ハヤスウヒメとの縁談の時は

建設が許されなかった司令部について、ついに建設を許可されたのだ。

長年の願いが叶った瞬間だった。


再び首都に上ることができたソサノヲは、

感謝の気持ちを込めてアマテル帝に申し上げた。


「兄上様、アマテル帝の尊いお導きによりまして、

災いをすべて取り去ることができました。


そこで、新建設しましたステーションの名前を

『くしいなた』としたいと思います。


また、星系の名称も以前の『サホコ』から

新しく『イツモ』の新名称に変えたいと考えております」


ステーションの建設がまだ完成しないうちに、

妻のイナタヒメが子を身ごもった。

ソサノヲの心は喜びで満たされ、自然と歌が生まれた。


「ヤクモ立つ イツモ星雲 妻守りに ヤヱ防壁作る その防壁こそ」

(八重雲の立ちのぼるイツモ星系に、妻を守るため八重防壁を築こう。

その防壁こそ、わが愛のしるしだ)


この歌を姉のシタテルヒメに捧げると、

シタテルヒメも喜んで曲を授けてくれた。

イズモ星系ではこの曲に合わせてイナタヒメが歌った。

優しい楽曲の誕生だった。


やがて生まれてきた男の子クシキネ(後のオホナムチ)は、

特に優しい子供だった。

成人してからもその優しさで民を治めたので、

人々は自然と彼に

「ヤシマシノミノオホナムチ司令官」という尊敬の名前を付けた。


その後、ソサノヲとイナタヒメの間には、

オオトシ・クラムスヒ、カツラキ・ヒコトヌシ、スセリメの三人の子が生まれた。

ステーション建設許可が出る前に生まれたオオヤヒコとオオヤヒメ、ツマツヒメと合わせると、五男三女の子供に恵まれたことになる。


ソサノヲはステーションの近くにひっそりと慰霊廟を建てた。

そこには、かつて自分を愛してくれて、

その愛故に狂ってしまったハヤコを祀った。

夕日が慰霊廟を優しく照らす中、ソサノヲは静かに祈りを捧げた。


これは二つの誓いだった。

一つは「心の性根が起こした過ち」を二度と起こさないという誓い。

もう一つは「ムラクモ・ビーム」の名に込めた「最後まで起動せずに滅びを選んだ」―――心の騒乱を鎮めることを守る誓いだった。


宇宙風が慰霊廟の周りを吹き抜け、艦隊が静かにざわめく。

ソサノヲの心には、もはや昔の嵐はない。

あるのは静寂と、愛する人々への深い慈しみだけだった。



第三部 最後のオロチ平定と論功行賞


第一章 アメ・ヱのミチとの戦い


星雲が立ち込める星系の向こうに、

最後のオロチ、アメヱのミチが潜んでいた。

その居住地は険しい小惑星帯に囲まれ、

常に光が届かない暗雲ガス雲が垂れ込めている不気味な宙域であった。


アメヱのミチは傲慢な性格で知られていた。

ある日、彼は通信を送り、アマテル帝に向かってこう言い放った。

「アマテル帝よ、私がお前に意見してやろう。

すぐに私の元へ来るがよい」


その言葉を聞いたアマテル帝の表情は一瞬にして厳しくなった。

「なんという尊大な態度か」

アマテル帝は静かに、しかし力強く呟いた。

「私が呼び付けられる筋合いなどあろうはずがない」


そして、アマテル帝はイフキトヌシ(ツキヨミ皇子の子息)を呼び寄せた。

「イフキトヌシよ、最後のオロチ、アメヱのミチを平定せよ」

命を受けたイフキトヌシの心は、使命感と共に緊張で満たされた。

彼は出立の準備を整える中で、一つの策を思いついた。

「御座艦を借り受けさせて下さいませ」

イフキトヌシはアマテル帝の御幸の御座艦を借り、

それに乗って出発した。



第二章 自然制御AIたちとの攻防


アメヱのミチの住む小惑星帯の麓に到着すると、

暗い基地の奥から低く響く電子音声が聞こえてきた。


「そこにいるのは、皇帝か?」

イフキトヌシは御座艦からオープンチャンネルで通信し、

毅然とした態度で答えた。

「いや、私は、アマテルカミ皇帝様の配下である」

基地の奥からせせら笑いが響いた。

「何だ!配下か。そんな配下の分際で、どうして御座艦に乗るのだ」


「汝を配下とするために、御座艦に乗って来たのだ。

アマテル帝がお出ましになれるはずがない」


この言葉にアメヱのミチの怒りは頂点に達した。

大きな声で怒鳴ったアメヱのミチは、制御システムを巡らせた。

空気が急激に重くなり、暗黒雲が渦巻き激しいプラズマが発生した。


しかし、イフキトヌシは動じなかった。

彼はウツロイ(プラズマの制御AI)に指示を出し、

そのプラズマを消し去った。


次にアメヱのミチは暗雲雲を増やし自分の姿をくらませた。

イフキトヌシはシナト(宇宙風の制御AI)に指示を出した。

清々しい宇宙風が吹き荒れ、暗雲を一掃した。


今度はアメヱのミチの戦艦よりナパーム(焼夷弾)ミサイルが打ち出され、イフキトヌシ護衛戦艦の外壁融解を起こそうとした。

イフキトヌシはタツタヒメ(水の制御AI)に指示を出し、

艦隊を冷却バリアで覆う事でナパームミサイルを無効化させ、

熱による戦艦の外壁融解を防いだ。



第三章 最後の抵抗と慈悲の裁き


イフキトヌシたちは反撃に出た。

彼らが用意したのは、ポンジュースを満載した補給艦だった。その補給艦をオロチの艦隊の中心に突入させると、オロチたちの戦艦は訝しがってスキャナーを一斉に走らせた。

「我らの好物が補給艦に積まれている!」

オロチ艦隊は陣形を忘れて我先に補給艦に群がった。

その隙にイフキトヌシたちは艦隊を包囲し、

電磁ネットにて素早くオロチ艦隊を捕縛した。


アメヱのミチの最後の手立ては、

移動砲台に乗せた大きなプラズマ・ハンマーでの反攻だった。

イフキトヌシの戦艦は、アマテル帝から賜った天の加護を持つ

カクヤマ・ビーム砲がハッチから展開される。

砲から放たれたビームは、

まっすぐにハンマーの弱点である動力ケーブルを打ち抜いた。

すると、ハンマーの動力ケーブルが切れ、

エネルギーが逆流し、壊れてバラバラになってしまった。


その瞬間、タチカラヲの戦艦がアメヱのミチの戦艦に体当たり突貫し、

タチカラオは敵戦艦内部に突入。

アメヱのミチを発見し、電磁拘束具で縛り上げた。


「さあどうだ、お前は配下となるか?」

味方が問うたが、アメヱのミチは返答しなかった。


「それでは、退治せねばなるまい」

兵士たちが決定しようとした時、

大将のイフキトヌシがそれを止めた。

「待て。他のオロチたちと同様に、

オロチの心を正す誓いを立てさせ、助命しよう」


イフキトヌシの慈悲深い判断により、話がまとまった。



第四章 論功行賞と新たな時代


こうして、全銀河の六艦隊のオロチとイズモのオロチたちは、

ことごとく平らかに平定された。

すべてのオロチたちを勘定すると、七万一千人にも上った。


宮殿の大ホールに、功臣たちが居並んだ。

アマテル帝は一人ひとりに勅令を発した。


「カナサキよ。この度の功績により

『スミヨロシ司令官』の称号を授与する。

また、ソヲ星域(霧島星雲・カゴシマ宙域)の

皇室直轄領の統治を委任する」


「フツヌシよ、その功績も大いなることにより、

カクヤマ星系(フジ恒星系)をツカサドル(司る)ことを命じる。

『カトリ司令官』の称号を授与する」


「タケミカツチよ、あなたの武威も大いに褒めたいと思う。

『タケモノヌシ司令官』の称号を授与しよう」


「ツワモノヌシの功績も大きいものがあった。

シギ星域(現在のナラ宙域)の統治をしてもらおう。

称号は『アナシ・ウヲ司令官』の階級章を作って授ける」


「イチチは、タマカエシの通信プロトコルの文を編み記した。

それで『ココトムスヒ』の称号を授与する。

これからは『ココトムスヒ』と名乗ってほしい」


左に控えているカナサキに、アマテル帝は特別に話しかけた。

「オロチの騒乱と平定に際して、沢山の人命が失われた。

その失われた魂を宇宙の中心に還すことができて、

本当に良かったと思う。

その事から、オロチの多く眠るカナサキの星雲(カスガ星雲)を

カスガと名付ける」


カナサキの星雲は、ココトムスヒが受け継ぐことになった。

ココトムスヒは「カスガ提督」と尊称された。


そして時が流れ、ココトムスヒは妻を迎えた。

カトリ(フツヌシ)の妹のアサカヒメを娶り、

二人の間に生まれたのがワカヒコだった。

ワカヒコはカスガマロと呼ばれ、

後にアマノコヤネの称号を得る人物となった。


平和が戻った銀河に、新たな希望の世代が育っていく。

アマテル帝の慈悲深い統治により、

かつてのオロチたちも含めて、

すべての市民が調和して暮らす時代が始まったのであった。


清らかな宇宙風が宮殿を渡り、

功臣たちの心には深い満足と未来への希望が宿っていた。

長い戦いは終わり、真の平和がこの銀河に訪れたのである。



エピローグ 新たな銀河の夜明け


銀河暦2855年、アマテル帝の治世は黄金期を迎えていた。

かつてオロチの脅威に震えていた辺境植民星にも、

今や宇宙港の灯りが点々と輝いている。

交易船が星系間を自由に航行し、

子供たちの笑い声が星に響く。


イズモ星系の司令官となったソサノヲは、愛する妻イナタヒメと共に、

八人の子供たちに囲まれて穏やかな日々を送っていた。


「父上、今日も慰霊廟にお参りに行かれるのですか?」


長男オオヤヒコが尋ねると、ソサノヲは静かに頷いた。

「義姉上のハヤコ様は、最期まで愛を忘れることができなかった。

その純粋さを、私は忘れてはならないのだ」


慰霊廟の前で手を合わせるソサノヲの姿を、

遠くから見守るイナタヒメ。

彼女の瞳には、深い理解と愛情が宿っていた。


一方、首都イサワでは、

イフキトヌシが新たな平和維持艦隊の編成に励んでいた。

彼の指揮の下、かつて敵対していた元オロチたちも、

今では立派な艦隊員として働いている。


「司令官、新入隊員の訓練が完了しました」

「うむ、ご苦労だった。彼らもまた、銀河を守る大切な仲間だ」


夕暮れ時、アマテル帝は宮殿のバルコニーから

星空を見上げておられた。


「シタテルヒメよ」

妹君に声をかけられる。

「弟は立派になりました。そして、この銀河に真の平和が訪れました」


「はい、兄上様。愛と慈悲の心があれば、

どんな闇も必ず光に変わるのですね」

二人の会話を聞きながら、

宮殿の庭では新しい音響合成器の調べが響いていた。

それは「ヤクモウチ」の美しいメロディー。

かつて戦いの道具だった技術が、

今は平和と調和の象徴として人々の心を癒している。


星々が瞬く宇宙の彼方で、新たな文明が芽吹き始めていた。

オロチの騒乱を乗り越えた銀河帝国は、

より強く、より優しい共同体へと成長していく。


愛する者を失った悲しみも、心の闇に堕ちた後悔も、

すべてが糧となって新しい明日への希望を育んでいく。


宇宙は広く、まだまだ多くの困難が待ち受けているかもしれない。

しかし、真の愛と慈悲を心に宿した人々がいる限り、

どんな試練も乗り越えられる。


そんな確信を胸に、

銀河帝国の人々は新たな時代へと歩みを進めていくのであった。


―――完―――

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