第九話 憲法改正すればいいのでは?
シャワーを浴びてスッキリした感じで出てきた彼の目は少しだけ腫れぼったく見えていた。うまなちゃんもイザーちゃんもそのことには当然気付いていたのだけれど、それに触れることはなかった。彼を追い詰めてもいい事なんて何もないという事を理解していたので、特別何か指摘するという事をしなかった。
少し長めの沈黙が続いてしまったのだが、その空気を破ったのは意外なことにまー君であった。
「シャワーを浴びて色々と考えてみたんだけど、今のこの狂った状況を打破するために必要なことは一つだと思うんだよね」
まー君の言っている狂った状況とはいったい何を指しているのだろうと考えたうまなちゃんとイザーちゃんではあったが、いったいどの状況が狂っているというのかわからず、なんと言って良いのか困ってしまっていた。
まさか、肝心なところに一切触れてもいないのに勝手に発射してしまったという事が狂っている状況と自分で言うはずがない。もしそうだとしたら、こいつは何か飛んでもない考えを持っているんじゃないかと思ってしまうのだ。そんな二人の思いはまさに杞憂に終わるのだが、そっちの方がまだマシなんじゃないかと思うような事を言い出してしまったのだ。
「君たち二人は知っていると思うけど、昔の日本って今の俺の年齢で立派な大人扱いされてたんだ。だから、この世界の法律を変えて俺の年齢で成人だという事にするのはどうだろうか?」
「どうだろうって言われても、私たちにこの世界の法律を変えることなんて出来ないんだけど」
「そんなことをしても意味あるのかな?」
「やる前から諦めちゃダメだよ。俺は今までいろんな世界を渡り歩いてきたし、それなりの経験も実績もあると思っている。普通の人ではどんなに頑張っても出来ないような経験をたくさんしてきたんだ」
「それって、直接触れなくても体が勝手に反応して一人でいっちゃうってことも含まれるの?」
「!!」
「太ももで挟まれることを想像して必要以上に敏感になっちゃうのも普通の人には出来ない経験ってことになるのかな?」
「!!」
「少しくらいなら触ってもいいのかなって思ってたんだけど、あんなふうに凄く出ていたら触れないよね」
「!!!!」
「今まで見たことがないくらい長い時間で続けてたもんね。触れずに一回で出した世界記録だと思うよ」
「!!!!」
まー君は今までにないくらいに目を見開きながら顔を真っ赤にさせていた。あまりにも想定とかけ離れた言葉だったので何も言い返せなかったのだが、あの時のことを思い出すと自然と背中が丸くなってしまっていた。
このままでは話の主導権を完全に失ってしまうと思って焦っているまー君ではあったが、今の状況で何を言い出せばいいのか完全に答えを見失っていた。だが、そんなまー君の姿を見たうまなちゃんとイザーちゃんもこれ以上まー君を追い詰めてはいけないとお互いに目配せをして気遣っていたのだ。
でも、二人はとても素直な女の子なので思ったことを我慢することが出来なくなってしまうのだ。
そうなる前に、まー君は自分の考えを聞いてもらおうと努力した。頭の中で北海道の市町村を一生懸命思い出して冷静になろうと思っていたのだが、市町村名を思い出していると色々なところで“尻”という言葉が浮かんできてダメだった。うまなちゃんとイザーちゃんのプリッとしたお尻を想像して妄想がダメな方へダメな方へと勝手に進んでいってしまった。
だが、魔王を何度も何度も倒してきたまー君はこんなことでは挫けない。
敵が己の中にいる強大な煩悩だったとしても負けるわけにはいかないのだ。
身も心も真の強さを手に入れるには、何よりも冷静な判断力が必要となるのだ。
「そうじゃなくて、この世界に施行されている法律を俺にとって都合のいいものに変えていこうって話だよ」
「ああ、今のまー君の年齢でも成人扱いにするってことだね」
「それだったらこの世界の成人年齢になるのを待つよりも早く大人になれるって言いたいんだよね?」
「そう言うこと。少なくとも、この国の法律を変えちゃえば俺が何しても問題ないってことになると思う。この若く逞しい肉体で思う存分二人と楽しいことをしちゃえるって寸法さ」
「うーん、それはどうだろう。ちょっと難しいんじゃないかな」
「だよね。成人年齢を引き下げることが出来たとしても、まー君に適用されないと思うよ」
「え、なんで?」
「だって、この国で法律を変えようとしたら最低でも十年はかかるみたいだよ」
「国民のうち男性のほとんどが賛成してくれたんだけどね。私たちが所属しているサキュバスの娼館を合法にしようって法律も何だかんだあって十年以上はかかったからね。国民の約半分が何の問題もないって頑張ってはくれたんだけど、やっぱり必要ないっていう人は多かったんだ。何度も何度も廃案になりかけながらも色々と妥協点を探して合法化してもらったんだ」
「その条件の一つに、絶対に未成年を相手にしないってのがあるんだよ。だから、まー君が成人年齢を引き下げようとしても無駄なんじゃないかな。可能だとしても、どんなに早くても十年以上はかかっちゃうと思うよ」
「じゃあ、俺はどうすればいいんだよ!!」
「素直に」
「待とうね」




