第六話 脇と足ならどっちが好き?
状況を整理すると、まー君は史上最高ランクの評価を得ているサキュバスと新人最高評価を得ているサキュバスの二人と永久独占契約を結んでいる。それに付随してオプションとしてマンネリ打破のためにランダムで一人派遣されてサービスを受けられるというものも契約していたのだ。
新人最高評価のうまなちゃんと歴代最高評価を獲得し続けているイザーちゃんの二人に対してマンネリ感を抱くことはないと思うのだが、人間に絶対はないのでその保険としてオプションは位置付けられている。
というのは表向きの理由で、サキュバス娼館側としてはこのオプションにとても重要な意味が隠されているのだ。
その理由の一つは、イザーちゃんのテクニックをオプションでやってきたサキュバスに見せて学ばせることである。聞いただけでもある程度は想像できてしまうかもしれないが、長年培ってきたイザーちゃんのとんでもない技術の数々は実際に目にした方が継承することが出来ると思うからだ。
もう一つの理由としては、まー君が支払う魔力の一割にも満たないサキュバス娼館側の取り分だけでも通常よりも多いのだ。仮に、誰一人として働かなくても今まで通りの収入が発生してしまうところまで来ているのだ。それくらいまー君が支払う魔力量は膨大だという事を証明することにもなる。
働かなくても一定の収入があるというのは一見いい事のようにも思えるのだが、一度楽をすることを覚えてしまったサキュバスは人間と同様で怠惰になり勤労意欲も衰えていく。それが一つのサキュバス娼館だけで済めばいいのだが、サキュバスネットワークによってその状況は一瞬のうちに拡散され周知されてしまうのだ。そうなってしまうと、全てのサキュバス娼館の認可が取り消されてしまう可能性も出てきてしまうのだ。
そんなことは全く関知していないまー君は手を伸ばせば触れることが出来る二人のサキュバスと視線を合わせることが出来なかった。緊張しているという事もあるのだが、サキュバスの瞳を見てしまうと理性を抑えることが出来ないような気がしていたのだ。
実際にサキュバスの視線には催淫効果もあるのだが、まー君のように人の限界をはるかに超え神よりも優れた力を持っているモノにはある条件下以外では効果が全くない。
ただ、その特別な条件にまー君が当てはまっているという事には本人は気付いていない。気付いてはいないのにもかかわらず避けることが出来ているのは、ひとえにまー君の危機察知能力も素晴らしい性能だという事なのだろう。
「ねえ、うまなちゃん。まー君って全然私の事見てくれないよ。もしかして、とっても恥ずかしがり屋さんだったりするのかな?」
「そうかもしれないよ。だって、私のことも全然見てくれないし。でも、私の足をじっと見ているのには気付いているよ。君って、足フェチだったりするのかな?」
確かに足を見るのは好きだが特別足フェチだという自覚はないものの、そういう指摘をされたまー君の顔は真っ赤になっていた。それは自分が足フェチだという事を白状しているようにも思えるのだが、イザーちゃんはまた別のことを指摘してきた。
「確かにまー君ってうまなちゃんに対しての視線の向きって、足の方にピーンとむかってるよね。それはうまなちゃんの足がすごくきれいだから仕方ないと思うんだけど、私が腕を上げた時にちらっと見える脇は絶対に見逃さないんだよね。だから、まー君は脇フェチなんだと思う」
「そう言われたら思い当たるところはあるかも。でも、イザーちゃんの脇ってすごくきれいだもんね。それに、なんだかわからないけどすごく落ち着くいい匂いがしてるんだ。新人研修をしてくれた時から思ってたんだけど、イザーちゃんって体のどの部分を嗅いでも嫌な臭いって全くしないんだよね。それって、特別な体質だったりするのかな?」
「自分ではあんまりわからないけど、食べ物には気を使っていたりするよ。ほら、男性にサービスする時とか失礼がないようにって心がけてるからね」
「ナンバーワンたるゆえんだね。それで、まー君は私の足とイザーちゃんの脇だったら、どっちを先に舐めてみたいって思うのかな?」
突然の質問に言葉を失ってしまったまー君は意識的に指摘された部分を見ないように気を付けることになった。
無意識のうちに行われていたことだったとしても、それを一度指摘されてしまうとソレを避けようと思って違うところを見てしまう。だが、違うところを見ていたとしても次はソコが好きなんだと誤解されてしまうかもしれない。誤解ではないのかもしれないが、実際にまー君が見ていたという事実は消えることがないのだ。
両腕を上げて頭の後ろで手を組んでいるイザーちゃんと何度も足を組み替えているうまなちゃん。二人のアピールに反応することが出来ないまー君ではあったが、体は正直であった。
「あんまり意地悪したらかわいそうだね。好きなものが目の前にあるのにね」
「今のまー君では私たちに自分から触ったりすることは出来ないもんね」
何かを思いついたのか、うまなちゃんとイザーちゃんは同時にお互いの目を見つめると確認するかのように何度か頷いていた。
「まー君から何もできないんだったら」
「私たちが勝手にしちゃえばいい」
「「そう言うことだよね」」
「!!!」
なんだかわからないけれど、新しい道を切り開けたような感覚になったまー君はそっと天井を見上げていた
天井は照明があるだけの簡素なものではあったが、とてもきれいに輝いているようにまー君の目に映っていた。




