第五話 成人年齢……
三人で笑ったことで少しは気が紛れたのだが、重要なことをもう一つまー君は知ることとなる。
「魔王を倒すって言ったけどさ、その魔王はまだこの世界に誕生してないよ。きっとまー君がいろんな世界を救ってきたおかげでこの世界の魔王誕生が少し遅れてるみたいだね」
「四年後には強くてニューゲームの対象になる魔王がこの世界にやってくる予定になってるよ。その時だと契約不履行にならないからちょうどいいかもね」
「いや、四年後だったらもう俺は二十歳になってるし成人だよね? そこまで我慢出来たならわざわざ強くてニューゲームをする必要もないよね?」
「「え?」」
「え?」
お互いにこいつは何を言っているんだという表情になっているのだが、そうなってしまうのも仕方がない。成人年齢に対する認識がまー君とうまなちゃんたちとは異なっているのだ。
そのことに最初に気付いたのはイザーちゃんであった。
「もしかしてだけど、まー君のいた世界って成人年齢が二十歳だったりする?」
「十八歳で成人年齢になるって話もあったような気がするけど、二十歳で成人式をやっていたと思うよ。色々と冒険をしてた関係で参加したことは一度もなかったけど、そんな様子を何度も見ていたからね」
「ああ、そっちの世界ではそうだったんだね。悲しいけど、こっちの世界では二十一歳が成人年齢でお酒もタバコも合法的なお薬もギャンブルも性風俗店でのプレイも何もかもが二十一歳になるまで解禁されないのよ」
「だから、私たちが直接まー君の相手をしてあげられるのは最短でも五年後ってことになっちゃうかな」
「最短でもって、五年以上かかる可能性があるってこと?」
郷に入っては郷に従えという考えのまー君は成人年齢が想定よりも一年延びたことを受け入れてはいたけれど、何らかの理由で成人年齢が引き上げられたときに自分が対象になるのだとしたらソレは受け入れられないなと思っていた。これだけは譲ってはいけないと強く心に思い描いていまっすぐな視線を二人に向けていたのだ。
「まあ、言いにくいんだけど、五年以上かかる可能性はありえるんじゃないかな。私もイザーちゃんも法律の専門家じゃないので何とも言えないけれど、まー君の場合は肉体年齢と精神年齢が一致していないから変動する可能性は大いにあり得るみたいだよ」
「そうだよな。俺は何年も何年も魔王を倒し続けてきたし、時には魔王なんて目もくれずに他のことに明け暮れていたなんてこともあったしな。そういった意味では、俺はもうすでに成人しているといっても過言ではないんじゃないかな」
「ああ、そうかもしれないけれど、そういう経験は私たちには何も伝わってないし理解することが出来ないから全くのノーカンになると思うよ。どっちかって言うと、今まで十六年間ずっと寝たきりだったまー君が目覚めた時をこの世界での誕生日としてカウントする可能性の方が高かったりするよ。勇者としてこの世界に産み落とされたものは十六歳の誕生日まで目覚めることはなく、何も食べていなくてもすくすくと成長していくって言われているからね。多分、まー君がこの世界に来た時に余計な知識とか人間関係を築かせないためのシステムなんだろうね。そう考えると、まー君がこの世界にやってきてくれてよかったと思うよ」
何度目かの強くてニューゲームをした時に思ったことがあるのだ。まー君は自分がこの体を使う前にこの体を使っていた人の意識はいったいどうなってしまったのだろうと考えたりもした。普通二十六歳まで生きて何らかの活動をしていたとは思っていたのだが、自分が転生するまで全くの寝たきりだとは思ってもみなかった。それならそうと言ってくれればよかったのにと思って見たりもしたのだが、言われたところでどう反応すればいいのかもわからず無言のまま何もしないような自分を思い浮かべるまー君であった。
それを考えると、肉体はこの世界で十六年間成長していたという記録はあるのだが、一切活動した記録が残っていなかったという事の説明もつく。今までも色々と人間関係を構築しなおしたり自分が 再挑戦者だという事を説明しなくてもよかったことに対して気が楽だと感じてはいたのだが、自分の体が置かれていた状況を考えるとそれを良しとしてもいいものか悩んでしまっていた。
だからと言って、ここから成人まで二十一年は長すぎると思いまー君は真剣に抗議しようとしていた。
「さすがにここから二十一年も待つのは辛いって。君たちはそれでもいいかもしれないけれどさ、俺はそうはいかないんだよね。さすがにそこは理解してくれるよね?」
うまなちゃんとイザーちゃんはまー君の言葉に同意することも否定することも出来なかった。
同意をするにしても根拠がないし、否定をするにしても納得させられるだけの材料がなかった。
例え、法律の専門家がやってきたとしてもまー君の置かれている状況があまりにも特殊すぎているために判例は存在せず、様々な解釈をしたところでそれを万人に納得させられるだけの根拠も材料も存在しないのである。
おそらく、多くのものはこの世界にまー君の体が誕生した時からの年齢が実年齢だと思うのだろうが、一部でもそうではないと感じるものがいるとまとめることが出来ない。
そうなってしまうと、四年後に誕生する魔王を倒してもう一度強くてニューゲームを選択してもらうしかないのだ。
ただ、その時ももう一度十六歳から人生をやり直すことになってしまうのだけれど、運が良ければ十六歳は成人だと認められている世界があるのかもしれない。
昔の日本がそうだったように、数多く存在する世界には十六歳が成人年齢である世界が存在する可能性が僅かながらあるはずなのだ。
その世界にもサキュバス娼館が存在するのかは疑問であるが、その可能性に賭けてみる価値はあるんじゃないかとまー君は考えてしまった。




