第十一話 世界規模の反応
ある程度の熱量がないとブーイングは起こらないと思うのだが、まー君がうまなちゃんとイザーちゃんの絡みを誰にも見せないという事に対して世界各地でブーイングが起こっていた。
会場にいるものはもちろん、テレビなどで視聴していた多くの成人男性は無意識のうちにまー君に対してブーイングをしていたし、成人女性の半数近くもテレビに向かってブーイングをしていた。その声は世界各地で地鳴りのように聞こえていたようなのだが、まー君がそんな事を気にすることもなく、不許可という決断が覆ることはなかった。
「私もうまなちゃんもみんなに見てもらうことに対していやだって気持ちはないんだけど、まー君が見せたくないって言うんだったら仕方ないよね。私もうまなちゃんも、見てもらうくらいなら問題ないんだけど、絶対に嫌だって言うんだったら仕方ないかな」
「お二人の絡みは私も興味あるんですけど、私だけ見せてもらうってことは出来ないですかね?」
司会の立場を利用して抜け駆けをしようとした愛華に対してのブーイングはまー君に向けられたものよりも大きく、壁にひびが入ってしまうのではないかと思うくらいに世界が震えていた。
おそらく、愛華の発言は本心からくるものだったと思うのだが、あまりの状況に恐れおののきすぐに発言を撤回する羽目になったのだ。
「ごめんなさい、皆さんの気持ちを代弁しようとして言葉を間違えてしまいました。一人だけ抜け駆けをしようなんて気持ちはなく、まー君が許可を出しやすくなるような空気感を出したかっただけなんです。本当なんです。嘘じゃないです」
どう考えても嘘だとしか思えないのだが、愛華の表情と言葉には申し訳ないという気持ちがこもっていた。いつの間にか女児服に着替えていて見た目の説得力は皆無なのだが、子供なら理性よりも先に感情が優先して言葉になってしまっても仕方ないのではないかという思いも皆の中に芽生えつつあった。
その様子を一人気まずそうに見ていた零楼館乳首郎は愛華と同じようなことを叫びそうになっていたことを自分の中へ隠しこんだ。もしかしたら、愛華は零楼館乳首郎を守るために言っただけで、本当に間違えただけなのかもしれないのだが、そう感じたのは零楼館乳首郎だけだし、そういうつもりなど本当にないのかもしれない。真実は、誰も知ることが出来なかった。
会場のブーイングがいったん静まり、すべての視線がまー君に対して向けられていた。うまなちゃんもイザーちゃんも愛華も観衆も全員まー君のことを見ているのだが、その視線と見えないプレッシャーにも負けないまー君は何事もなかったかのように明日のスケジュールを確認していた。
明日もまー君に挑戦する者は多くいるのだが、今日の戦闘の結果を考慮した結果、ソロの挑戦者よりもチームを組んでいる挑戦者たちが多く戦闘を行うことに決まったようだ。ソロ挑戦者の多くが辞退してチームを組みなおしているという事もあるのだが、一人でも戦えると思っている自信のある者が減っているという悲しい状況なのかもしれない。
「じゃあ、ここでまー君に今の気持ちを聞いてみましょう。どうですか、世界中を敵に回した今の気持ちは?」
「別に何とも思わないかな。今更憎まれたところで何も変わらないし。まあ、直接うまなちゃんとイザーちゃんの相手をしてもらえないってのに納得はしてる人が多かったってのはわかってるよ。でも、そんな人たちって二人に合う事を諦めている場合が多かったと思うんだよね。ところが、うまなちゃんとイザーちゃんの絡みを見るチャンスが巡ってきたと思った瞬間、この星の気温が上昇したのを感じたよ。それだけの熱気が今この映像を見ている人たちから出てたってことなんだろうな。そんなに見たいって思ってるのかな?」
まー君の問いかけが突然すぎたこともあって多くの者は戸惑っていたのだが、見たいという気持ちが前面に出ていった結果、会場にいる者たちからは少しずつ拍手が起こり、最終的には会場全体を包み込むような拍手の音が四方八方から降り注いでいた。
それを見守るまー君の顔は心なしか優しくなっているように見えていたし、うまなちゃんとイザーちゃんもみんなと一緒に拍手をしていた。
そして、しばらく続いていた拍手を鎮めるかのように愛華が両手を広げてから何度もゆっくりと下に下げるジェスチャーをしていた。
それに気付いた観衆が一人また一人と拍手をやめてまー君を見守る。最後の一人が拍手をやめた時、愛華はまー君に正対し、ゆっくりと確認するように質問をした。
「この皆さんの思いを受けた今。まー君の気持ちに変化はありましたか?」
愛華の頬を一筋の汗が伝っている。そのことからわかるように、この質問をした愛華は物凄く緊張していた。
先ほどのように世界中を敵に回すようなことを言うわけにはいかない。軽い気持ちでまー君に質問をして、皆の期待を裏切るわけにはいかないと思っていた。
それを見守っているうまなちゃんとイザーちゃんもいつもとは違い緊張していたし、会場で見ている観衆はもちろん、テレビの前にいる視聴者たちも静かにまっすぐ二人のやり取りを見守っていた。
もちろん、零楼館乳首郎も愛華の質問に対するまー君の答えを待っていたのだ。
成人男性はもちろんのこと、成人女性も思春期の子供たちも、みんな事の成り行きを見守っていたのだ。




